ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第27話 焼け石に水

 

f:id:mirai_kyoushi:20190617224016p:plainf:id:mirai_kyoushi:20190617225548p:plain

 コート内を駆けるナポレオン。それを追いかける鬼はズガイドス。鬼ごっこはまだ始まったばかり。2匹ともこのまま走り続けたら体力をムダにしちゃう。

f:id:mirai_kyoushi:20190617225131g:plain
「言っておくけどコートを出たら反則負けだからね」
「さっきズガイドスは壁に頭突きしたじゃないですか!」
 コートの右側とヒョウタさんがいる正面は岩の壁で覆われている。左側は壁がないからコートから出たら下へ真っ逆さまに落ちちゃう。わたしのうしろは入り口だしコートから出るなんて考えられない。
「ああ。あれは足が着いていないからセーフ」
「ええっ!?」
 そうゆうもんなの!?
「ポチャ~~!」
 ナポレオンは走り続けている。あんなに手をバタバタさせて、今のナポレオンなら空を飛べるかもしれない。…………ってなに考えてるの!?とにかくこの状況を突破しなきゃ。ナポレオンはズガイドスの『頭突き』の威力にビビッちゃったしセニョールと入れ替えようかしら。あの子なら赤ちゃんだし恐怖心がなくて真面目だから普通に戦えるかもしれない。『すいとる』で遠距離攻撃できるように特訓したし……。
「とにかく逃がさないよ。ズガイドス、『ステルスロック』!」
「クェッ!」
 ズガイドスヒョウタさんに返事すると壁から落ちた岩のカケラをいくつか蹴り上げた。岩のカケラは次々と私のまえへ並べられていく。まさかこれって……。
「さっきみたいにポケモンをコロコロ替えられるといけないからね。対策を打たせてもらったよ」
 目のまえに並べられた無数の岩のカケラ。大きさもそれなりにあるから別のポケモンを出したとたんダメージを受けちゃう……!
「……替えません!『鳴き声』!」」
「ポチャア♪」
 『鳴き声』ってかわいくする必要あるのかしら。と・に・か・く!さっき一瞬セニョールと入れ替えることを考えたけどやめた。セニョールはあまり防御力高くないし。それに……。
「ナポレオンはわたしの切り札ですから!」
「ポチャー!ポチャ、ポチャーッ!」
 ナポレオンも「ほら見ろ!そうだ、そうだ!」と言っている。この初めてのジム戦、最初に仲間になってくれたナポレオンで制してみせる!
「ボクにとってもズガイドスは切り札だよ。気が合うね!」
「そうかもしれません!」
 トレーナー同士で語り合っている間もナポレオンはズガイドスの攻撃をよけている。こうして防戦に回っていられるのも今のうちだけ。こうなったら…………こうなったら‟アレ”を使う!
「ナポレオン!右によけて!」
―ズガン!
 ズガイドスの頭がコート内に置かれた岩に当たった。岩は割れて3分割に崩れた。
「今度は左に走って!」
「ポチャッ!」
 ナポレオンは指示通りに動いた。ズガイドスはさっき頭を岩にぶつけたばかりなのに平気でナポレオンを追った。
「防戦一方じゃないか。逃がすな、ズガイドス!」
「そこにある岩に隠れて!」
 ナポレオンはスライディングをして岩陰に身を寄せた。
「ムダだよ!『岩砕き』!」
「クェェェェェッ!」
 ズガイドスは叫びながら岩をパンチした。岩もろともコートの左側に吹き飛ばされるナポレオン。そんなっ!落ちる……!?コートから出る勢いで転がっていたけどギリギリのところで回転が止まった。
「ナポレオン!しっかり!」
「……ポチャ~」
 ナポレオンは辛そうに起き上がった。
「わたしの近くに来て!」
「ポ……ポチャー!」
 ナポレオンはわたしの元へダッシュした。
「おやおや。焼け石に水じゃないか?なにを考えているか知らないけど『頭突き』!」
「クエーッ!」
「ボチャッ!」
 ズガイドスはナポレオンより大きな音を立てながら『頭突き』をした。背中に攻撃を喰らい岩のカケラのまえまで追い詰められるナポレオン。
ズガイドス、岩を投げるんだ!」
「クェッ!」
 岩が次々にナポレオンの周りに落ちてきた。やがて岩はステルスロックに使われた岩と繋がり、ナポレオンを囲む岩の壁となった。
「うっ……」
「さっきみたいにちょこまかと逃げられないように囲ませてもらったよ。チェックメイトだね」
 唯一の隙間からズガイドスが勝ち誇った顔で入ってきた。わたしは鳴っている図鑑に目をやった。『岩砕き』と『頭突き』のダメージが溜まってナポレオンのHPはレッドゾーンに入っていた。対する相手のズガイドスのHPはほぼ満タン。あんなに硬い岩に何回も頭をぶつけたのに……。
「そろそろ終わらせてもらうよ」
「クォーッ……」
 ズガイドスが身を低くした。また『頭突き』をするつもりね。私は下を向いた。
「追い詰められたのは……」
「ん?」
 わたしは顔を上げた。余裕の表情で。
「……あなたのほうです!ナポレオン!」
「ポッチャ~!」
「『波乗り』!」
「なにっ!」

 

***

f:id:mirai_kyoushi:20190621133114j:plain

「ねえ、アキラ。秘伝マシン持ってる?」
 時は4時間前まえまでさかのぼる。わたしはアキラに稽古をつけてもらっている最中だった。
「そりゃあ、もちろん持ってるけど……」
 旅に欠かせない秘伝マシン。技マシンと違って何度でも使える便利なマシン。秘伝技は他の技と違って通れない道を切り開くために編み出された特別な技。バトルにも使えるけどその真価は自然の障害を乗り越えることにある。教科書に載っていたのは……。
「たしか『フラッシュ』、『居合い切り』、『岩砕き』、『怪力』、『波乗り』、『滝登り』、『渦潮』だっけ?」
「地方によって若干違うけどな。この地方では『フラッシュ』はあまり使わないのか技マシンとして出ている。シンオウの水辺には渦は発生しないから『渦潮』の秘伝マシンは必要とされてない。この地方では『ロッククライム』と『霧払い』いう秘伝マシンがあるぞ」
 色々説明してくれたけどわたしが知りたいのはそっちじゃない。
「『波乗り』の秘伝マシンも持ってる?」
「当たり前じゃないか…………ってまさか!」
 アキラはうろたえた。ふっふっふっふっふ……そのまさかよ!
「使わせて♪」
「だ、駄目だ!それに移動用に使うにはバッジが必要だぞ!」
 アキラは私に背を向けた。あ~~~。ケチーーー!
「水上を移動したくて『波乗り』を覚えさせたいわけじゃないわ」
「今のポッチャマじゃ『波乗り』のような大技は1日に1回しか使えないぞ!」
「いいじゃない。奥の手として使えるわ!」
 う~ん。もっとすんなり受け入れてくれると思ったけど意外と抵抗するなぁ……。
「う~~~…………わかった。特別に覚えさせてやる!」
「やったー☆」
 わたしはバンザイをした。ナポレオンも理解してないけどわたしの真似をして両手を上げた。
「いいか。誰にも言うなよ。特にアキコ!」
「は~い♡」

 

***

 

「ポ~~~~~~」
 ナポレオンは胸を張って思いっきり息を吸った。
「チャーーーーーーーーーーッ!!
 次の瞬間ナポレオンのかけ声とともに大量の水が吐き出した。岩のアーチはみるみる水で満たされていく。やがて水は岩の上からもこぼれ、いくつかの岩が倒れ始めた。
「まずい!そこから出るんだ!ズガイドス!」
「もう手遅れです!ナポレオン!」
 ナポレオンは倒れた岩の1つに乗って華麗に波に乗った。岩板をサーフボート代わりにしたナポレオンはそのままズガイドスに突っ込んだ。
「ポチャァァアアア!」
チェックメイトです!」

f:id:mirai_kyoushi:20190622153608j:plain
―ザッバーン。
 ナポレオンの『波乗り』によってズガイドスのHPのゲージが面白いくらい減っていった。大量の水を浴び、さらに岩にぶつかったショックで立っていられるはずないわ!
「クエ~~~~!」
 足をフラつかせながらズガイドスは倒れた。それを見たヒョウタさんは目を丸くしながらコートに入った。
「まっ、まさか!鍛えたポケモンたちが!」
 ヒョウタさんはズガイドスの容態を確認した。苦手な水を思いっきり浴びたズガイドスは完全にのびていた。
「まいったなあ……。ジムバッジを1つも持っていないトレーナーに負けちゃったか」
 ズガイドスヒョウタさんのボールの中に戻された。試合終了!
「うん。それも仕方ない。君が強くてボクが弱かった……それだけだ」
「ポ……チャア~」
 ナポレオンがゼイゼイ言いながらわたしの元へ来た。そっか。小さい体に大量の水を必要とする『波乗り』はきつかったよね。わたしはフタバタウン名物の『おいしい水』をナポレオンにてわたした。
「ありがとう、ナポレオン。おつかれさま」
 ナポレオンは息が上がってうまくしゃべれない。ナポレオンはなんとか笑顔を見せるとおいしい水を一気飲みした。
「さ、ポケモンリーグ公認のコールバッジ。君に渡すよ!」

f:id:mirai_kyoushi:20190622212652j:plain

 わたしはヒョウタさんから宝箱を横から見たような形のバッジをもらった。茶色いバッジで銀色で縁取られている。
「これで秘伝の『岩砕き』を使えるようになるよ。あとこれも持ってきなよ!」
「え?」
 ヒョウタさんからわたされたのは技マシンだった。なんの技マシンかしら?
「その技マシン76の中身は『ステルスロック』!!交代して出てきたポケモンにダメージを与える技だよ!」

f:id:mirai_kyoushi:20190529150125j:plain
 ふ~ん。バトルのときも使ってたけど、ポケモン交代しなかったから威力は実際に使ってみないとわからないわね。
「あと約束のこれ」
 手を握られるように青い石をわたされた。両手で手を握られてついトキめいちゃった。バトルに熱中していて忘れてたけど、もらったのはジム戦まえにヒョウタさんが磨いていた『変わらずの石』だった。
「きっと役に立つよ。ヒカリくん、クロガネジム制覇おめでとう!」
「お、お……お世話になりました!」
 あわててペコリとお辞儀をした。今日はヒョウタさんにポケモンバトルについて色々教えられちゃった。わたしはトレーナーとしても人間としてもまだまだね。疲れたナポレオンをボールに戻し、バッグを持とうとしたらふと気づいた。
「あーっ!」
「どうしたんだい!?」
 いつのまにかわたしの手も足も砂埃がついていた。昨日ほどじゃないけど今のわたしはけっこう汚れてる。いちおう汚れの目立たない灰色の服を着てきたけどあとで洗わなきゃ。はぁ……。またヒョウタさんのまえで汚れた姿をさらしちゃった……。
「い、いえ……ただまた汚れちゃったな~って思って……」
 男の人はあんまり気にしないけどわたしは気にする。特にかっこいい人の前では。
「ヒカリくん」
「?」
 ヒョウタさんに顔を向けたらハンカチで顔を拭かれた。
―ドキッ。
「顔に埃がついてるよ」
 さりげない優しさ。女の子はこういうのに弱い。ヒョウタさんって無意識に女の子をたらしこんでいるのかしら……?
「あ、ありがとうございます!」
 はずかしくてつい離れてしまった。失礼だったかしら?
「化石って発掘したばかりの状態だと汚れているんだ。でも汚れを取り除くととっても神秘的で綺麗なんだよ」
 恐竜図鑑で化石の写真を見たことがある。恐竜の骨は茶色っぽくて迫力があってどっちかっていうと怖い気がした。神秘的といえば神秘的だけど……ヒョウタさんは何を言いたいの?
「君は化石のように綺麗だよ」
ヒョウタさん……」
 …………ごめんなさい。ヒョウタさん。今のセリフ、全然ときめかないです。

 

にほんブログ村 ゲームブログ ポケモンGO・ポケモン(ゲーム)へ
にほんブログ村