ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第26話 意地

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「お断りします!」

 わたしはラミアではなくキララの入っているボールを取り出した。残念だけどヒョウタさんの挑発には乗らないわ!

「おいで!キララ!」
「コ、コリ~ン!」

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 ボールから出たと同時にキララは相手にいつもの迫力のない威嚇をした。目をつぶって威嚇したけど、イワークの巨体を見たとたんビクついた。

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「リ~ン?」

 キララは不安そうに私を見た。だからそんな悲しい目で見ないで……。

「大丈夫よ、キララ」

 ただキララにも経験地を分けたいだけ。すぐに戻してあげるからね。

「岩・地面タイプのイワークに電気タイプのポケモン……無謀じゃないか?」
「どうでしょうね」

 あくまでも私は平静なフリをした。大丈夫。私の手持ちはあと5匹。クルル♪がやられたけどまだ余裕で勝てるわ。

「そうかい。じゃあイワーク……」
「戻って!キララ」

 ヒョウタさんが指示するまえにキララを戻した。大切なキララにキズをつけるわけにいかない!

ビッパー、もう一度GO!」
「ビーーップ!」

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 ビッパーは前歯を見せた。やる気十分ね!

イワーク!『体当たり』!」

 早いっ!

「『丸くなる』!」

 イワークビッパーがぶつかった。ビッパーは回転しながら私のまえに着地した。幸い体を丸めて防御力を上げたビッパーはほとんどダメージを受けていない。相手のイワークは間合いを取った。

「ビ~……」
「イワー……」

 トレーナーの指示を待ちながらにらみあう2匹。ヒョウタさんはふと肩を下げた。

「相性のわるいポケモンを出したと思ったら相性のいいポケモンを出す…………さっきからどういうつもりだい?」

 ヒョウタさんは私をまっすぐ見た。

「内緒です」
「そうかい……『いやな音』!」
「『鳴き声』!」

 イワークの岩を削る音とビッパーの『鳴き声』で耳が痛くなった。うっ……『鳴き声』で相手の攻撃力を下げたのはいいけど『いやな音』でこっちの防御力が2段階下げられた。相性も能力も不利だしそろそろ入れ替えなきゃ。私はボールをビッパーに向けた。

ビッパー!戻っ…」
「『しめつける』!」
「なっ!?」

 ボールから出た赤い光線はイワークによってさえぎられた。ジム内でビッパーの叫びがこだました。まばたきを終えたあと、私の目に入ってきたのはイワークに捕らわれたビッパーの姿だった。
ビッパー!」

 ダメ……逃れられない!硬い石のボディにすっかりしめつけられている。こんな状態じゃ『体当たり』も使えない。せめて前歯を活かせる技を使えたら……!

「さっきみたいに交代しないようにしめつけさせてもらったよ」

 ヒョウタさんはにっこり笑う。ビッパーが捕らわれた今となってはもうチャーミングとは思えない。よくもビッパーを……!

「君は強いよ。君のポケモンを見ればわかる」

 わたしは歯を食いしばる。いったいなにを言い出すの?

「でもどうも君はポケモンバトルをなめているね。ジム内のトレーナーたちとの戦いもそうだった。直接バトルを見たわけじゃないけど音が聞こえたからわかるよ」

 わたしが、ポケモンバトルをなめている……?

「短パン小僧や山男相手に長引いていたね。君の実力ならもっと早くボクのもとへたどりつけたはずなのに」
「うっ……」

 その通りだった。ナポレオンとセニョールだけを戦わせておけば短時間でヒョウタさんのところまで行けた。そうしなかったのは今回活躍できないポケモンたちもバトルに参加させたから。クルル♪、キララ★、ラミア、ビッパーに少しでも経験地を与えるため。…………別に油断をしていたわけじゃない。ただ、勝てる自信があっただけ。

ポケモンバトルを……ジムリーダーをなめてもらったら困るな」

 ヒョウタさんは右腕を上げた。なにかの合図……?それを見たイワークはいきなり頭をビッパーに降ろした。

「ビーッ!」
ビッパー!」

 イワークは何度も頭を上げては下げ、ビッパーに『頭突き』をした。まるで釘を打つカナヅチみたいに。

「やめて!ヒョウタさん!」

 ヒョウタさんは何も言わずに攻撃するイワークを見守っていた。やめて!そんな硬い体で『頭突き』をされたらビッパーがかわいそう!

「『鳴き声』!」
「ビーッ!ビーップ!」

 相手から受けるダメージを少しでも減らすため『鳴き声』を指示した。でもそれは時間稼ぎにしかならない。こうして『頭突き』を喰らっている間にも『しめつける』のダメージを受けている。

「いくら強いからって油断大敵だよ、ヒカリくん」

 ヒョウタさんは余裕のある表情で言った。さっきまでわたしが余裕だったのに。…………本当に余裕を持っているのは、どっちだろう?
「これ以上ポケモンを傷つけたくないなら降参してもいいんだよ」
「くっ……」

 わたし、なめられてる?それとも失望された?今降参すればビッパーを助けられる。明日再戦するときナポレオンとセニョールだけ戦わせれば確実に勝てる。でもそれじゃあジュンに遅れを取っちゃう……。

―カタタタタタッ。

 床に置いたボールが小刻みに揺れた。ナポレオンが入っているボールだ。わたしはそのボールを拾った。 

「……」

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 ナポレオンは何も言わなかった。力強い目で私に訴えている。「あきらめるな」。

「降参しません!勝ちます!ビッパー!」
「ビーッ!」

 イワークから猛攻撃を受けていながらもビッパーはスキをついてイワークの『しめつける』から逃れた。

「戻って!ビッパー」
「させないよ!『体当たり』!」

 わたしはビッパーのボールをかかげた。だけど皮一枚でつながりながらも必死でわたしのもとへ戻ろうとするビッパーをイワークは容赦なくしっぽではらった。

ビッパー!」

 図鑑を見た。ダメ。もうHPが……!

「ビー……プ……」

 ビッパーは四つん這いに倒れた。またビッパーを瀕死にさせてしまった。もうこれ以上キズついたポケモンを診たくない……!わたしは目をつぶりながらビッパーをボールに戻した。

「最初から本気で挑んでいれば君のムックルビッパもやられなかったよ」
「…………」

 ……うん。ヒョウタさんの言う通りだわ。ヒョウタさんのポケモンを経験地として見ていたからクルルとビッパがやられたのよ。これはポケモンバトルを甘く見ていたわたしへの罰。でも…………罰はもう十分受けた!

「あなたを信じている!ナポレオン!」
「ポッチャー!」

 気合を入れてボールを投げた。ナポレオンは「待ってました!」とでも言わんばかりに登場した。

「ようやく本気を出し……」
「ポチャーーーッ!」

 ヒョウタさんが言葉を言い終えるまえにナポレオンは『泡』を吹き出した。私も指示してないのに。大きいシャボン玉のような泡のかたまりはイワークに直撃した。

「イワーーッ!」
イワーク!」

 ヒョウタさんのイワークは石の山が崩れるように倒れた。重たい音がジム内で反響した。数少ない手持ちが2匹もやられたのにヒョウタさんは冷静にイワークを戻した。

「う~ん……岩・地面タイプに水攻撃は反則だな」

 あと1匹しかポケモンを持っていないなのに、ヒョウタさんはあいかわらず余裕そうに振舞っていた。最後のポケモンによっぽど自信があるのね。3匹目のポケモンはもしかして……。

「出番だ!ズガイドス!」
「クオーーッ!」

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 ボールから現れたのは昨日見た恐竜みたいなポケモンだった。やっぱりズガイドスを出すつもりだったのね!

「次のポケモンも同じように倒せるかい?」
「なんとかっ!」
「ポッチャーー!」 

 さっきの戦いで勢いがついたのか、ナポレオンはズガイドスに突っ込みに行った。もうっ!慎重に行きたかったのに。これじゃあ補助系の技を指示しても言うことを聞かなさそう。

「『泡』!」

 さっきと同じようにナポレオンは口から泡を飛ばした。イワークを一撃で倒した泡攻撃。それをズガイドス紙一重で避けた。

「ずいぶん攻撃的なポッチャマだね!ズガイドス、『にらみつける』!」

 ズガイドスは無言でナポレオンをにらみつけた。……よかった。先制攻撃を仕掛けたのに避けられたからダメージ受けると思ってヒヤヒヤしちゃった……ってナポレオンなににらみかえしてるの?!

「ナポレオン!もう1回!」
「ポチャーッ!」

 ナポレオンの泡が炸裂した。ズガイドスはまた避けようとしたけど泡は左頬にヒットした。かすった!

「『頭突き』!」

 ズガイドスは一直線に走った。まずい!あんな見るからに硬そうな頭で攻撃されたらただじゃすまないわ! 

「よけて!」
「ポポポポポチャーッ!」

―ズガン!

 ズガイドスの頭が岩の壁にぶつかった。上から岩のカケラがいくつか落ちてきた。ナポレオンは手をバタつかせながらも横へ避けていた。じょ……。

「冗談じゃないわよ!あんな攻撃受けたらHPが半分は削り取られるわ!」
「だから切り札なんだよ。ズガイドス!」

「クエーーッ!!」
「ポチャ~~~!!」

 ナポレオンはコート内で駆け回り始めた。それを楽しそうに追いかけるズガイドス。こうして2匹のポケモンの追いかけっこが始まった。

 

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