ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『白黒遊戯2』2人の英雄(3)

 真上に投げたボールから雄々しい赤茶色の鳥ポケモンが飛びだした。勇猛ポケモンウォーグルだ。ノエルの体が赤く光り、ウォーグルも赤く輝き始めた。

「ここで強化か……。本気を出したんだね」

「ウウウウウウォオオオオオオッ!」

 ネイティブの戦士を連想させる鷹は雄叫びをあげると歯車に爪を向けた。

「『馬鹿力』!」

「ウォオオオオオオオオオオッ!」
 
 ウォーグルギギギアルを爪でねじ伏せた。鷹が鉄の歯車を握りつぶす。ポケモンならば可能なことだ。信じられないくらいの力で鋼鉄の体は歪められていく。

「ギッ……ギギギッ……!」
 
 鋼の弱点は3つある。炎、格闘、地面。炎技が使えるレシラムはゼクロムと対戦中。地面タイプのドリュウズギギギアルにやられて戦闘不能。ノエルは残った格闘タイプの技を使えるウォーグルに賭けたのだ。

「ノーマル・飛行タイプなのに強いね……。『放電』を使う暇すらなかった」

 Nは動かなくなった歯車をボールに戻した。次の相手はカラフルな鳥ポケモンだった。

アーケオス

「ケーーーッ!」

 ノエルは身構えた。

(鳥……いや、爬虫類?)

 奇妙なポケモンだった。トカゲのような顔にクチバシはない。頭と尻尾は鱗に覆われていたがそれ以外の箇所は羽毛に包まれていた。飛ぶのはあまり上手じゃないのか地面に足がつくたびに蹴っている。

「最古鳥ポケモンだよ。全ての鳥ポケモンの祖先と言われている。キミのウォーグルアーケオスが祖先かもしれないね」

 最古ということはアバゴーラのように化石から復元されたポケモンだろう。岩・飛行タイプの可能性が高い。同じ飛行タイプでもウォーグルが不利だった。『岩なだれ』や『ストーンエッジ』を喰らったら即死だ。

「『アクロバット』」

「早いっ!」

 軽やかな動きで先手を取られた。ジムリーダーのフウロも使っていた技だ。幸い飛行タイプの技なので致命傷ではない。

「『ブレイブバード』!」

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

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「ケッ……!?」

 ウォーグルは捨て身でアーケオスの腹部に直撃した。飛行タイプ最強の物理技、『ブレイブバード』。高い威力のかわりに反動を受けるがウォーグルは反動を恐れなかった。アーケオスはそのまま地面に叩きつけた。

「『馬鹿力』!」

「『ストーンエッジ』だ」

 地面に叩きつけられた衝撃でできたコンクリートの固まりがウォーグルに投げつけられた。2匹はそのまま翼をばたつかせ片や握力、方やコンクリートで攻撃し合った。2匹の攻防はしばらく続いたが2匹は同時に力尽きてしまった。

「引き分けか……。それでこそキミだ。ボクのパートナーにふさわしい……!」

 ノエルはバッグの中に入っているボールを見た。体力が満タンなポケモンは1匹しか残っていない。

「あと1匹……!」

「最後のトモダチ……ボクに勇気をわけてくれ!」

 最後の陸戦が始まった。最後に戦うポケモンはお互いが最も信頼するポケモンだ。

ジャローダ!」

ゾロアーク!」

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「シャーーーーッ!」

「キシシシシ!」

 狐VS蛇。2匹は睨み合った。2足歩行の黒い狐は不敵に笑った。緑の蛇は怒りを剥き出しにした。普段はロイヤルポケモンと言われるくらい優雅なのに。

「『辻斬り』!」

「『リーフブレード』!」

 ゾロアークの爪がジャローダの尻尾に生えている葉っぱとぶつかった。攻撃のタイミングは同じだった。素早さは互角ということだ。

「『高速移動』!」

「『とぐろを巻く』!」

 ゾロアークは準備運動代わりに走り回り素早さを上げた。それに対しノエルは攻撃・防御・命中率を上げた。お互いゼクロムとレシラムを除いた最後のポケモンだけあって慎重だ。

「『ギガドレイン』!」

「『イカサマ』!」

 ジャローダゾロアークの体力を吸い取った…………かに見えたがそれはゾロアークが見せた幻だった。ジャローダはまんまとゾロアークに騙されひっかかれてしまう。

「幻影!?」

「キミは戦闘に特化した人間だね。だからこんな幻に騙されるんだよ」

 ゾロアークは火炎放射を吐き出した。ノエルは慌てて防御に回った。

「『光の壁』!」

  避 《 よ 》 ける暇がなかったので受け身になってしまった。攻撃を半減したものの弱点であるのともともと威力が高めの技なのでHPはかなり削られた。

「あちっ!いったいわね!『巻きつく』!」

「シャーーッ!」

 ジャローダは地面を這いゾロアークに巻き付いた。

「『 毒毒 《 どくどく 》 』!『 搾 《 しぼ 》 り取る』のよ!」

 牙から猛毒が注ぎ込まれゾロアークは毒を受けた。おまけに巻きつけられたまま体を搾り取るようにしめつけられたので苦しくて身動きができない。

「『火炎放射』だ!」

「ムダよ!」

 ゾロアークはデタラメに火炎放射を放つが当たらない。

「『怖い顔』!」

「グアアアアアッ!」

「ジャッ!?」

 ゾロアークの『怖い顔』に怯みジャローダゾロアークを離してしまった。おまけに素早さまで下げられてしまう。

「これで最後だ!『気合い玉』!!」

「グアアアアアアアアアルッ!」

「『リーフストーム』!!」

 ゾロアークの両手からエネルギー体が現れジャローダ目掛けて飛ばされた。一足先に遅れたジャローダはそれを大量の葉っぱで迎え撃つ。ピンチに草タイプの攻撃が上がる特性『深緑』。そしてノエルの持つ不思議な力。ポケモンとトレーナー、2つの力が相まって『気合い玉』を打ち消し、ゾロアークを飲み込んでいく。

「バカなっ!?」

 ゾロアークはNの足元まで吹き飛ばされた。動く気配はない。戦闘不能だ。

「あたしの勝ちよ!ポケモンだけの理想郷は諦めて!」

 Nは震える手でゾロアークを撫でた。

「まだだ……まだ終わってない……!」

 2人は空を見上げた。ゼクロムとレシラムの戦闘は継続中だ。地上でノエルとNのポケモン5匹が戦っている間も2匹の戦闘は続いていたがそろそろ限界だ。最初のときより動きが鈍っている。おそらくあと一撃で決まる。

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「うおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

「…………来い!」

 叫ぶノエル。待つN。2人は同時に命令した。

クロスサンダー!!」

クロスフレイム!!」

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 ゼクロムとレシラムの口に 雷と炎のエネルギーが集束する。全身から電気が走り、青いエネルギー体はゼクロムを包み大きくなった。ゼクロムは『クロスサンダー』ごとレシラムにぶつかった。先に攻撃してきたのはゼクロムのほうだった。

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「ブルアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 先に攻撃してきたのはゼクロムのほうだった。絶望がノエルとチェレンアデクを襲った。電気エネルギーごとぶつかってきたゼクロムは攻撃の手を緩めない。抵抗するレシラムに噛みつきそのまま放電を続ける。

「レシラム!!」

 少女は己の守護神の名を呼ぶが声が届いたかどうか定かではない。Nは黙って2頭を見守っていた。一方興奮したゲーチスゼクロムに声援を送った。

「いいですゼクロム!その調子です!」

 その場にいる全ての人間は空に注目していた。アデクチェレンもそうだ。チェレンは大きく口を開けていたがアデクは険しい顔をしていた。

「間に合わなかったか…………いや、待て!」

 最初に異変に気づいたのはアデクだった。レシラムはゼクロムに攻撃されているが炎の固まりは消えていない。それどころか今も巨大化し続けている。炎のエネルギーはついにゼクロムの『クロスサンダー』と同じ大きさになった。

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「「「「「!?」」」」」

 それはまるで太陽だった。時は満ちた。レシラムは首に噛みついているゼクロムを引っ掻き蹴り飛ばした。離れたゼクロムが異変に気づいたときにはもう遅い。灼熱の炎の玉がゼクロムに襲いかかってきた。


「ホワアアアアアアアアアアアアッ!!」

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 『クロスサンダー』と『クロスフレイム』が衝突した。雷は抵抗するがどんどん呑まれて行き…………爆発した。

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「うわあっ!?」
「むうっ!」

 爆発の衝撃が地上にも及ぶ。アデクチェレンは両腕でガードした。

ぐぬぬぬ……」

 ゲーチスはケープの下で拳を握る。

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「きゃあっ!?」
「ジャーア!」

 ジャローダは主人を守ろうと彼女に巻き付き衝撃波から庇った。

「ああ……」

 Nはガードすらせず空を見上げていた。まぶしい光りでレシラムとゼクロムの姿を視認できない。爆発の衝撃でNの帽子が飛んだ。そしてノエルの帽子も…………。


(N……。Nはポケモンの声が聞こえるんだよね。ポケモンの心を読めるんだよね?)

 

シュシュごと飛ばされた帽子。ノエルの髪はほどけていった。

 

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(あたしの心も読んでよ……。こんなに……こんなにあなたのことが好きなのに……!)


 Nの足がふらついた。Nは後ろから転び、地面をすり抜け、闇に落ちていった。


***

 

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「これでボクの……理想。ポケモンの……夢は霧散する」

 翼を持たない青年は沈んでいった。運命に抗い、もがく力すらない。

「ボクはポケモンを救えなかった……。英雄失格だ……」

 Nは上が光った気がした。落下するNを受け取るように抱きしめたのはノエルだった。

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「N……。Nのポケモンに対する思いは間違っていなかったよ……。ただ考えが極端だっただけ。Nは優しすぎたんだよ。ゲーチスに騙されちゃったの……」

「ノエル……」

「人間もポケモンも今の世界のままで幸せなの。Nはもうポケモンのために戦わなくていいの。Nはもう自由だよ……!自分のために生きていいんだよ……!」

「ボクは……」


***


 Nは目を開けた。彼は少女の膝の上にいた。

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