ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第25話 油断

 空が赤く染まる。まるでアキラの瞳の色のように。カラスが沈む太陽に向かって飛んでいた。あのカラスもきっとポケモンなんだ。虫や小動物以外の動物は野生では生きていけない。だって、ポケモンが強すぎるもの。ほとんどの動物はポケモンから守るためにどこかに保護されている。いつからそうなったのかはわからない。ただはっきりしているのはこの世界が人間とポケモンのものになったということ。

ポケモンジム……ね」

 ポケモンバトルは合法。人間もポケモンも同意したうえ行われるルールのある試合だから。ポケモンも自ら戦うことを望んでいる。『戦いたい』。『強くなりたい』。それがほとんどのポケモンの持つ本能。私の手持ちのポケモンもそう。キララという例外があるけど……。

「早く終わらせてお祝いしよっか♪」
「ポッチャア!」

 わたしが明るい声で言うとナポレオンは拳をぎゅっとして答えた。アキラに稽古をつけてもらったしわたしたちには必勝法がある。負けるはずがない。わたしたちは自信満々でポケモンジムの中に入った。

 

 クロガネジムの中は岩だらけだった。それもただの岩じゃなく四角くくりぬかれたような形。それらの岩はつり橋や階段でつながっていた。まるでジュンがよく遊んでいたゲームのダンジョンみたい。望遠鏡を使ったらトレーナーが何人か岩の上で待ちかまえているのが見えた。

「……ただでは行かせないってわけね」

 ヒョウタさんの姿は見えない。きっとジムリーダーは奥のほうにいるのね。

「いくわよ!みんな!」

 ナポレオンとともに階段を勢いよく上った。ジムのトレーナーとのバトルで経験地を稼ぐわ!

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 初めてのポケモンジムは岩だらけだった。ジムリーダーも途中で出くわしたトレーナーも岩タイプの使い手。初めてのはずなのにどこかなつかしい。

「やあ。クロガネシティ、ポケモンジムへようこそ!よくここまで来れたね」

 数々の岩山を越え、ジムの奥についたときヒョウタさんは石を磨いていた。……ずいぶん余裕があるわね。まあ、私も何人かトレーナーとバトルしたのに息切れしていないからお互いさまかな。

「と、言ってもイワークをつかまえた君のことだ。必ずボクのところまでたどりつけると信じて待っていたよ」

―ドキッ。

 つい目をそらした。ほんのわずかだけど胸が熱くなった。線香花火みたいにちっぽけだったけど。う~~……かっこいい人って反則。ちょっと褒められるだけで照れちゃう。

「その石は?」

 ヒョウタさんが磨いている石。少し青くてブツブツしているだけの、どこにでもありふれた石。なんのエネルギーも感じないけど逆に惹かれる。

「ああ。これ?『変わらずの石』っていうんだ。ポケモンがこれを持っている間そのポケモンは進化しなくなる不思議な石だよ。地下通路で発掘したんだ。めずらしいでしょ?」
「はい」

 これが変わらずの石なんだ。教科書にも載っていた。ちょっとほしいなぁ……。

「よかったらあげるよ」
「本当ですか!?」

 これからジム戦をする仲なのに私たちはバトルとは程遠い話をしていた。他の人から見たらきっと今のわたしたちはジムリーダーと挑戦者には見えないと思う。

「ポチャッ!」
「え?」

 ナポレオンは私の足をつかんだ。なに……?

「ただし…」

 ヒョウタさんはズボンのポケットからボールを3個取り出した。

「ボクに勝てたら……ね」
「っ!?」

 私もすぐさま構えた。やっぱりそうカンタンにはいかないよね!

イシツブテ!」

 3個のボールのうち1個が開き、中からイシツブテが出てきた。イシツブテは低い声で鳴いた。

「イシッ!」
「改めて自己紹介するよ。ボクはクロガネジム、ジムリーダーのヒョウタ!岩タイプのポケモンとともに歩むことを決めたトレーナーさ」

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 相手に名乗られたらこっちも名乗るのが礼儀よね。

「わたしはフタバタウンのヒカリ。新人トレーナーです」

 今のわたしはまだ名無しのトレーナーだ。この前たまたまテレビに映ったけど、誇れるような肩書きはまだ一つもない。

「ヒカリくん。君のトレーナーとしての実力、そして一緒に戦うポケモンの強さ……見せてもらうよ!」

 わたしはポケモンを選びボールを投げた。選んだポケモンは……。

ビッパー!」
「ビーーップ!」

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 ボールから出たビッパーは元気よく鳴いた。私の一番手はまるねずみポケモンビッパヒョウタさんはビッパーを見ると口を開いた。

「岩タイプにノーマルタイプのポケモン……正気かい?」

 たしかに岩タイプのイシツブテにノーマルタイプは不利。ビッパーを出した私は無知だと思われるかもしれないけど、ビッパーを出したのには理由がある。

「さあ?やってみなければわかりませんよ」

 わざとらしく笑った。わたしがビッパーを出した理由……それは経験地!ポケモンはバトルに参加することで経験地をもらえる。冒頭でちょっとだけ参加したポケモンも戦闘のほとんどを受け持ったポケモンも同じ経験地がもらえる。私はただビッパーとクルルとキララにも経験地を与えたいだけ。もちろんビッパーたちが傷つくまえにセニョールかナポレオンと入れ替えるつもり。

「行くんだ!イシツブテ!」
「イッシー!」

 ヒョウタさんの声でイシツブテビッパーに向かってきた。早くビッパーを入れ替えなきゃ。

「戻って!ビッパー!」

 イシツブテビッパーにぶつかるまえにビッパーをボールに戻した。私の二番手は……。

「クルル!」
「クルッポー!」

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 ビッパー以上に陽気な声でクルルは鳴いた。岩タイプが弱点の鳥ポケモン。さっきより不利な組み合わせ。でもたぶん大丈夫。今まで戦ったトレーナーは慎重でほとんどの場合最初に使う技は補助系の技だった。きっとイシツブテのことだから防御力を上げる『丸くなる』か素早さを上げる『ロックカット』を……。

「『岩落とし』!」

 え?

「イシーッ!」

 それは一瞬の出来事だった。イシツブテは近くにあった石をつかみ即座にクルルに投げつけた。

「クルーッ!」
「クルル!」

 よけてと言うヒマもなかった。重力に逆らって飛んでいたはずのクルルはあっけなく地べたに落ちた。飛行タイプのクルルに岩タイプの攻撃。レベルの差と弱点をつかれたのも合わさってクルルは一撃で戦闘不能になった。

「くっ……」

 苦い思いを噛みしめながらクルルを戻した。まさかいきなり攻撃してくるなんて……これじゃあクルルが経験地もらえないじゃない!

「セニョール!」
「ミーッ!」

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 いつもよりキリッとした声を出してセニョールが出てきた。赤ちゃんのセニョールでも仲間を倒されたのはわかるみたいでその顔はいつもより険しく見えた。草タイプのセニョールならこっちが有利。速攻で終わらせる……!

「やっと本気を出してくれたのかい?イシツブテ、『岩落とし』!」

 苦手なタイプだから遠距離でしとめようってわけね。させない!

「『すいとる』!」
「ミ~~~ッ!」

 石をつかもうとするイシツブテにセニョールはつぼみを向けた。セニョールの体が緑色に光り始め、その光はイシツブテに向かって伸びた。

「しまった!」
「イシッ?」

 緑色の光はイシツブテまでたどりつくとイシツブテも釣られるように光り始めた。

「イシーーーッ!」
イシツブテ!」

 イシツブテのHPはエネルギーとなり光を伝ってセニョールに吸収された。自分の気を相手まで伸ばし、相手のHPを奪う『すいとる』。遠距離でも栄養をたくわえるために草ポケモンが編み出した技。近距離のほうが相手に与えるダメージは大きいけど、草タイプが苦手な岩ポケモンならこの距離でも十分だった。イシツブテは目をグルグルにして気絶した。

「やったー!よくやったわ、スボミー!」
「ミー!」

 スボミーとナポレオンを重点的に鍛えたかいがあったわ!イシツブテを一発でKOできたもの。

「あっちゃ~」

ヒョウタさんは頭をかたむけた。

「弱点をつかれたから仕方がないね。戻れ!イシツブテ

 イシツブテはボールに収納された。これでヒョウタさんのポケモンはあと2匹。

「いでよ、イワーク!」
「イワーーーッ!」

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 ヒョウタさんのイワークが出たとたんコートがせまく感じた。これはまた大きいのが出てきたわね。

「ふふっ。君も昨日イワークをつかまえたばかりだね」

 ヒョウタさんはにこやかに笑った。汗で頭がかゆい。相性では勝っている。でもイワークは大きい。この巨体を相手にこのまま小さなセニョールで挑むべきかしら?

「どうだい?せっかくだからここはイワーク同士で戦ってみないかい?」

 わたしはつばを飲み込んだ。

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