ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第23話 女の子

f:id:mirai_kyoushi:20190617222554g:plain

 赤白のボールはイワークの頭に当たった……というより弾かれた。モンスターボールイワークを吸い込むことなく壁に当たって壊れた。

「そんなっ!」

 もったいない。1個200円だけど何個も買ったらそれなりにお金がかかるのに!HPをもっと減らせばよかった。

「クルル!『電光石火』!ビッパー!『体当たり』!」

f:id:mirai_kyoushi:20190617223110g:plainf:id:mirai_kyoushi:20190617223214g:plain f:id:mirai_kyoushi:20190617222746g:plain

 キララとナポレオンのHPの減り具合が気になる。それまでイワークの囮(おとり)になっていたクルルとあまりダメージを受けてないビッパーに攻撃させた。わたしが攻撃指令を出すとイワークは体を光らせた。気を引き締めて自分の防御力を上げる技、『硬くなる』を使おうとしているのね。でも……。

「遅いっ!」

 ものすごい速さで動くクルル相手に『硬くなる』は間に合わずイワークはしっかりダメージを受けた。『電光石火』は必ず相手に先制攻撃をしかけられる技。それに麻痺してるイワークがクルルより早く動けるはずないわ。そのあとビッパーの『体当たり』がヒットしたけどこの攻撃はあんまり効かなかった。『硬くなる』の影響を受けたのね。イワークのHPゲージはようやく赤色になった。

「キララ、クルル、ビッパー、セニョール、戻って!」

f:id:mirai_kyoushi:20190609115943g:plainf:id:mirai_kyoushi:20190604153401g:plainf:id:mirai_kyoushi:20190609120629p:plainf:id:mirai_kyoushi:20190608154707g:plain

 イワークのHPが4分の1になったことを確認済み。わたしは4匹を順番にボールに戻した。この子たちの役目は終わったわ。

「今度こそ!」

 再び空のボールをイワークに投げた。真ん中の胴体あたりを狙ったけどボールは尾で跳ね返された。まただわ!

「もう1回!」

 あきらめずに3個目のボールを投げた。今度は上手く額(ひたい)に当たった。イワークの意思を無視してボールは光とともにイワークを吸い込んでいく。

「イワーーーッ!」

 ボールに吸い込まれつつイワークは体をくねらせて反抗した。でもムダよ。一度当たったら吸い込まれる仕組みだもの。中で暴れまくればボールから出られるけど……。イワークのシルエットがボールの中に消えた。ここからはガマン比べだ。ボールは大きく右に揺れ、次に反対方向の左に揺れた。もう一度右に揺れると思ったらボールが開いた。

「グオーーーッ!」

 うめき声とともにイワークがわたしと作業員のほうにつっこんできた。人間相手に『体当たり』を喰らわす気!?よけられない!直撃を覚悟したとき岩ではない体でわたしは突き飛ばされた。

「ナポレオン!!」

 見上げたらナポレオンは空中へふっとばされていた。わたしの代わりにイワークの『体当たり』を受けたの?!

f:id:mirai_kyoushi:20190617224016p:plain

「作業員はっ!?」

 わたしは倒れているハゲの作業員の元へ駆け寄った。作業員は無事だったけど口から泡を吹いていた。気絶したのね。作業員のボールの中身を見たらイシツブテワンリキーも瀕死だった。

f:id:mirai_kyoushi:20190616231827p:plainf:id:mirai_kyoushi:20190616232012p:plain

 やっぱりここは自分でなんとかするしかない。わたしは4個目のボールを構えた。

「お願い!入って!」

 頭に当てようとしたけどボールはずれて首あたりに当たった。ギリギリいける……!ボールが開きイワークは吸い込まれた。静かになった炭鉱にボールの音が響く。

―ガタッ。

 お願い…。

―ガタッ。

 仲間になって…。

―ガタッ。

 これ以上誰もキズつけたくないの…!

―カッ。

 ダメだった。わたしの祈りは届かずイワークは再びその姿を現した。

f:id:mirai_kyoushi:20190617222746g:plain

「イワーーーッ!」
「そんな…!」

 また失敗した。倒すしかないの?イワークはなにもわるくないのに!

「ナポレオン!『鳴き声』!」
「ポッチャア♪」

 時間稼ぎのために補助系の技を使わせた。ナポレオンはかわいく鳴いたけど漫才のツッコミのようにイワークにどつかれた。ごめん……ナポレオン……。心の中で謝罪しつつわたしはバッグの中をあさった。傷薬、麻痺治し、毒消し、……ない。今1番必要な赤白のボール見当たらない。さっきので最後だったの!?

 

そんなポケモンも捕まえられないのか?

 

 昔からよく知っているあいつの言ったことを思い出した。………バカにしないでよ。わたしはあんたのような図鑑完成をサボってるやつとは違うんだから……!いらだちと戦いながら手探りでバッグの奥をかきまわしてたら丸いものに触れた。

「これは!?」

 手にしたのはモンスターボールよりやさしい色合いのボールだった。ピンク色のボールに黄色い滑らかな模様がさりげなく入っている女の子らしいデザイン。アキラからもらったヒールボールだ。ヒールボールには捕まえたポケモンのHPと状態異常を直す効果がある。
f:id:mirai_kyoushi:20190617224559p:plain

 わたしはイワークを観察した。ナポレオンはがんばってイワークの攻撃を避けている。イワークの胴体の中心より下の岩にヒビが入っていた。あれが例のワンリキーから受けたキズね。痛みに我を忘れているイワークを落ち着かせるためにやることは一つ。ヒールボールで捕獲してイワークを回復させる……!

「ポーッチャア……」

 ナポレオンの体力も限界だ。よつんばいで起き上がろうとしているナポレオンをかばうようにわたしはイワークのまえに立った。

イワーク!今まで攻撃してごめんね!」
「イワーーッ!」

 イワークの息が吹きかかってきた。髪の毛がうしろに揺れた。土の香りが私とナポレオンを包む。

「わたしはただみんなを助けたかっただけなの!その痛そうなキズ、癒してあげる!」

 ピンク色のボールを掲げた。これが最後のボール。このボールに賭けるしかない。

「おねがい……」

 わたしは両手でボールを握った。

「わたしの……」

 ボールを左脇に寄せた。

「仲間に……」

 ボールを左脇から右耳まで移動させた。

「……なって!」

 左手を放し、右手に力を込めるとボールを投げた。ボールはイワークの角に当たり、イワークはみるみるボールの中に吸い込まれていく。


 やさしい光に包まれながらイワークはヒールボールの中へ吸い込まれた。………ここからが本番。これが最後のボール。これでつかまらなかったらイワークを倒さなければならない。そんなことしたくないのに。

―ガタッ。ガタッ。ガタッ。

 ボールが揺れはじめた。右、左、右……。気のせいかもしれないけどさっきより抵抗が少ない気がする。

―ガタッ…………ピロリロリーン♪

 ボールの揺れは短いメロディとともに幕を閉じた。魔法少女が変身するみたいな音だった。

「やったー!捕獲完了☆」

 よかった……イワークを仲間にできてよかった!もしかしてわたしの気持ちがイワークに通じたのかな?本当によかった!イワークの状態が気になって私は図鑑を見た。

 

f:id:mirai_kyoushi:20190616233751g:plain

イワーク 岩蛇ポケモン
高さ 8.8m 重さ210.0kg
大きな岩をも喰らいながら地面の中を掘り進む。そのスピードは時速80km。]

 

 わたしは図鑑の表示するデータを読むと状態を確認した。

 

イワーク
タイプ:岩・地面
特性:石頭
わんぱくな性格。気が強い。]

 

 えっ……このイワーク女の子だったの!?しかもわんぱくで気が強い女の子!?わたしはイワークをちらりと見た。イワークはニコニコしながらボールの中で揺れた。……うん。体力は全快したわね。HPのゲージ満タンだし。キズも癒えたみたい。念のためポケモンセンターで診てもらうけど。

「はぁ……」

 わたしは息をついた。そうよね。女の子なら体にキズができたら怒るのは当然よね。自信なくしちゃうわ。せっかくだからきれいなニックネームをつけなくっちゃ!

「そうね。女の子だから『ラミア』って名前はどう?」

 ラミアはギリシャ神話に出てくる人物。美しいリビアの女王だったけれどゼウスの妻ヘラに嫉妬され、上半身は人間、下半身が蛇の体にされてしまった女の人。不運な女の人の名前だけれど岩蛇ポケモンイワークにちょうどいいかもしれない。イワークがイヤだったら『イワルー』にするけど。イワークはボールごとピョンピョン飛び跳ねた。気に入ったみたい。

「ナポレオン!あなたのおかげよ。ありがとう!」
「ポ……チャ……」

 ナポレオンは弱っていたけどわたしと手を合わせた。ハイファイブね。傷薬を取り出してナポレオンに吹きかけた。

「おつかれさま、ナポレオン。さ~て、ポケモンセンターに戻……らな……きゃ」

 歩こうとしたら体がフラついた。あっ……今日はがんばりすぎたかも………このままじゃ倒れちゃう……。

「ポチャチャーッ!!」

 ごめんね、ナポレオン。わたし、ちょっと眠るね……。地面に倒れるのを覚悟したとき、誰かが私を受け止めた。

「大丈夫かい?」

 わたしは弱々しく声の持ち主のほうを向いた。わたしが倒れるのを止めてくれたのは赤いヘルメットを被った若い作業員だった。わたしを案内してくれたお兄さんより若い。黒縁メガネをかけた顔は几帳面でしっかりした印象を受ける。肩までかかった赤茶色い髪は外側に跳ねていてオシャレだった。かっこいい……!

f:id:mirai_kyoushi:20190617225131g:plain

「は、ははははい!」

 びっくりして飛び上がった。そんなつもりなかったのに。こんなかっこいいお兄さん見たら眠気がふっとんじゃった。とっさにこのかっこいいお兄さんに背を向けて身づくろいをした。暗いからあまり見えないけどラミアとの戦闘で体があちこち汚れている。軽く土埃をはらって髪の毛を手でとかした。クリップで止めていたけどボサボサになってる。クリップはいったん外そう……って帽子どこにいったの?!

「ポチャ!」

 ナポレオンがあわてて帽子をわたした。わざわざ取りに行ってくれたのね。

「ありがとう、ナポレオン」

 わたしは急いで帽子を被る。

「どうしたんだい?」

 かっこいいお兄さんが近寄ってきた。改めて見てみると他の作業員と違って作業服は上下に別れているし上着のボタンは開いている。今までみた作業員とは明らかにちがう。もしかしてこの人がヒョウタさん……?

「な、なんでもありません!帽子を探していただけです!」

 別にうそじゃないよね。なくなってたのは事実だし。

「そうかい。見つかってよかったね」

 ヒョウタさんらしき人物はわたしの動揺に気づかずニッコリと笑った。か、かっこいい……。まあ、アキラほどじゃないけど。……あ。アキラ女の子だった。

ヒョウタさ~ん、置いてかないでくださいよ~」

 イワークと戦闘中のときにいなくなったひげのおじさんがやってきた。やっぱりこの人がヒョウタさんなんだ!

「ああ、すまない。緊急事態だったから急いでいたんだ」
「その緊急事態のときに地下通路で化石を掘るのに夢中で気づかなかった人は誰ですか?!」
「はははっ。ぼくのことだね」

 え~っ!化石掘るのに夢中だったの!?だからなかなか来なかったんだ。

「やあ。ボクはクロガネジムリーダーのヒョウタ。君はヒカリくんかい?暴れるイワークを鎮めてくれてありがとう。さっきの捕獲、見事だったね」
「いえ、当然のことをしただけです!」

 きゃっ♡ほめられちゃった♪かっこいい人にほめられるとやっぱりちがうなぁ……。ヒョウタさん炭鉱で働いているのに理性的でかっこいい。思わずヒョウタさんの腕をチラ見した。メガネをかけてるから顔だけ見ると理科系っぽいけどちゃんと鍛えてある。筋肉フェチじゃないけどたくましいからドキッとしちゃう。

「それにしてもさっきの戦いのせいであちこちに岩があるね」
「あ…」

 本当だ。戦いに集中してたから気づかなかったけど辺りは岩だらけ。ラ、ラミアったらわんぱくなんだから~。アハハハハハ~……ってわんぱくの粋を超えてるわよ。

「ちょっと見ててね!ズガイドス!」

f:id:mirai_kyoushi:20190617225548p:plain

 ヒョウタさんはボールを投げた。ボールから現れたのは見たことのないポケモンだった。ナポレオンの2倍大きい。皮膚の色は灰色だけど頭と背中は青く、ギザギザ模様で区切られていた。頭のうしろにトゲみたいな角が4つある。その姿はまるで絶滅図鑑に載っている恐竜みたいだった。なんの恐竜かは忘れたけど……。

「秘伝の技『岩砕き』を使えばこんな邪魔な岩だって!」
「クォーーッ!!」

 考えるヒマも止めるヒマもなかった。ズガイドスはいきなり手短にあった適当な岩にむかって走りパンチを繰り出した。

「ポチャアッ!?」

―ガラッ。

「えっ?」

―ガララララッ。

「ええっ!?」
「ポッチャアッ!?」

 いきなり岩にパンチして無謀だと思った。でも岩はズガイドスの攻撃で見事に崩れ始めた。ナポレオンも目を丸くしている。

「こうして落ちてきた岩を砕いておかないと邪魔だからね。君もこの町のポケモンジムでジムバッジを手に入れればこれぐらいすぐにできるさ!」
「は、はぁ……」

 いくら岩にヒビが入っていたとはいえすごいわ。これがポケモンの力なのね。私たち人間よりはるかに力のある生きもの……。これだけ色々な種類がいて異なる力を持っているポケモンなら時間、空間、あるいは世界さえも操れるポケモンも中にはいるのかしら……?

「もっとも、ジムリーダーのボクに勝てないと駄目だけどね!」

 ヒョウタさんの一言で我にかえった。わたしなに考えてるんだろう…………ってあれ…?また体が……。

「おっと」

 再びヒョウタさんに受け止められた。やっぱりわたし、つかれてるんだわ。足に力が入らない。とうとう自分で立てなくなってヒョウタさんに支えられながらゆっくりと地面に腰を下ろした。

「どうやら先程の戦いで君も体力を消耗したみたいだね」
「す、すみません……」
 もう動けない。限界だわ。かっこいいヒョウタさんを見て一時的に元気が出たけど体がいうことをきかない。

「仕方ないか。それじゃあ、よいしょっと」
「キャアッ!」
「ポチャッ!?」

 体がふわっと宙に上がった。これって……これってもしかして全ての乙女が夢見る………お姫さま抱っこーーー!?うそ!わたしヒョウタさんにお姫さま抱っこされてる!!

f:id:mirai_kyoushi:20190617230528j:plain

「母さんはこの町で宿を経営しているんだ。そこまで運ぶよ。念のため医者もそこへ呼ぼうか」
「ええっ!?でもっ!」

 キャーー!!キャーー!!このまま宿まで運んでくれるのはうれしいけどやっぱりはずかしい。だって町中の人に見られちゃうじゃない。人通り少ないといいなぁ…。でもこんなにかっこいい人にお姫さま抱っこされるなんてラッキー!!

「先に宿に行って知らせてきます!」

 ひげのおじさんはこの場を立ち去った。ってことはヒョウタさん2人きりつ!?

「ポチャ!」
「クォー」

 あ、ちがったわ。ナポレオンとズガイドスがいるじゃない。2人と2匹ね。

「ははっ。気にしないで。君のおかげで炭鉱が崩れなかったんだ。恩を返したい。これだけじゃ足りないくらいだよ。宿には温泉もあるからゆっくりしてね。タダで泊まれるようにしておくよ」
「は、は、はははははい!」

 ヒョウタさんはすでに歩き始めていた。こ、ここはおとなしくもてなされたほうがいいかも。それにタダで宿に泊まれるってことは節約できるわ。旅に1番お金かかるのって食事代と宿代だし。

「今夜の食事は豪華になるね」
「あ、ありがとうございます!」
「ポチャー!」

 ナポレオンがヒョウタさんの足をぽかぽか殴っていた。ナポレオンったら!今助けてもらってるのにそんなことしちゃダメよ!

「おや、どうしたんだい?」
「ポチャ!ポチャポチャポチャー!」
「クォー?」

 ズガイドスは不思議に思いつつナポレオンをヒョウタさんの足から離した。

「ポチャチャーッ!」

 ナポレオンは意地でもズガイドスの腕から逃れようとした。もしかして………ナポレオン……妬いてる?

「安心して。君のトレーナーに危害を加えるつもりはないよ」
「ポ、ポチャア?」

 ナポレオンは「ほ、ほんとうかぁ?」という感じで目を細めた。

「それとも君がヒカリくんを抱えるかい?」
「ポ、ポチャッ!?」

 ナポレオンは急によそよそしくなった。ナポレオンの体長は40cm。わたしはたぶん140cmくらい。ナポレオンがわたしを持ち上げるなんてどう見てもムリ。引きずればなんとか運べるかもしれないけどスカーフを引っぱっている間にわたしが窒息死しちゃう。

「ポ、ポ、ポ……ポチャァ!」

 ナポレオンはぺこりとお辞儀をした。「おねがいします」ってことかしら。

「異論はないね。じゃあ行こうか」

 わたしたちは移動を再開した。ポケッチを見たら4時半を過ぎていた。

 

にほんブログ村 ゲームブログ ポケモンGO・ポケモン(ゲーム)へ
にほんブログ村