ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第21話 昔と今






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 今日はやることがないので庭の花に水をやっていた。わたしはヒマだった。いつもなら日曜日は3人で遊ぶ日だけどあの2人がいないんじゃなにも始まらない。あいつらいつ戻ってくるんだろう。研究所に行ってもう1時間以上経ってるのに。

「よっ。●●」

 あいつはわたしの名前を呼んだ。いつのまに背後にいたんだろう。ムカついたから問いつめてやろうと思ってふりかえった。

「遅かったじゃない!研究所でなにしてたの?」

 目の前にいる△△は茶化すように笑った。本当にムカつくやつ。○○はやさしいのに。

「オレ、ポケモンもらったんだ」
「え?」

 何の前触れもなく△△の持つなにかが光って緑色の生きものがでてきた。あいつの足元にいるネコより大きな生きものは4本足で背中になにか背負っていた。

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「すごい…」

 これが、ポケモン。動物図鑑にも載っていない、ふしぎなふしぎな生きもの……。

「オレと○○、おじいちゃんに頼まれて旅に出ることになったんだ」
「っ!?」

 胸がズキンとした。なぜだろう。ポケモンをもらった2人がうらやましかったから?それとも2人がいなくなってさみしくなるから?

「ずるい!わたしもポケモンといっしょに旅に出たい!」
「ムリムリ。ポケモン図鑑を完成させるために危ないところに行くこともあるんだぜ?」

 △△は手帳みたいな赤い機械を私に見せてニヤニヤした。

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「そんなことないわ!ポケモンがいればだいじょうぶ!」
「どうだか。ここはポケモンチャンピオンになる男、△△に任せて留守番してろよ」

 わたしは図鑑を取り上げようとしたけど△△は図鑑をズボンの尻ポケットにしまってしまった。

「じゃあわたしもチャンピオン目指す!」
女はチャンピオンになれねーよ。せいぜい大人しくここで花嫁修業でもしてな」

 わたしは顔が熱くなるのを感じた。怒りとくやしさでわたしはあいつから背を向けた。

「もう知らない!」

 わたしは玄関に向かった。今のわたしの顔をあいつに見られたくなかったから。

「この記念すべきチャンピオンになるオレのスタートを見送りに来ねーのか?」
「誰が行くもんか!」

 わざと乱暴にドアを閉めると私は一直線に私の部屋に向かった。ベッドにダイブしてまくらに顔をうずめるとわたしは泣きはじめた。

「△△のバカ!!」

 腹いせにベッドを叩いたけどぜんぜんスッキリしない。△△なんてだいっきらい!○○にはわるいけど、こんな顔じゃ2人を見送りに行けないよ……。

 

 







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「うっ…」

 ほっぺたがくすぐったい。わたし……泣いてるの?なんで?

「……」

 誰かが無言でわたしの顔をやわらかい布でふいた。少し荒っぽい。でも優しさを感じる。わたしの顔をふいてくれたのは誰?

「ん……」

 わたしはそっとまぶたを開けた。丸くて青い生き物がわたしを見つめている。わたし、まだ夢を見ているの…?

「ポチャ……」

 その生き物は私に寄り添った。この子は………ナポレオン。ポッチャマのナポレオン!

「わたしはっ!」
「ポチャッ!?」

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 ナポレオンが驚いてひっくりかえった。わたしはヒカリ。フタバタウンの花園ヒカリ。一昨日ナナカマド博士からポッチャマをもらい、旅に出た……。

「ここは……?」

 わたしはせまい部屋にいた。シングルベッド3つ分の大きさ。部屋にはベッド以外に机とイスがあった。

「起きたのか?ヒカリ」

 長身の人が話しかけてきた。短い黒髪の持ち主だ。紅い瞳はまるで炎のよう。

「アキラっ!?」

 そうだ。思い出した。わたしはクロガネ博物館でアキラと再会したんだ。でもアキラが女の子だと知ってショックで気絶して……。

「はぁ……」

 ここのところわたしは気絶しぱなっしだ。昨日今日一昨日と3日連続で気絶してしまった。わたしってこんなにかよわかったかしら?たぶんここは医務室かなんかだと思う。

「大丈夫か?いきなり倒れて驚いたぞ」

 アキラはわたしにコップを渡した。ナポレオンはなぜか普段のツンデレ発言をしない。本気で心配してるからかな。わたしはアキラの顔をチラッと見た。鋭い目。高い鼻。整った顔立ち。近くで見てみると改めてかっこいい。こんなにかっこいいのにアキラは女の子なんだ。ジャ●ーズに入れるくらいなのに……わたしの初恋は終わった。

「うん。なんとか」

 もうこれは笑うしかない。一度会っただけとはいえアキラを3年間男の子と勘違いして恋してたんだもん。あ、でもアキラって女の子なんだよね?女の子同士なら恋バナできるわ、恋バナ!買い物も一緒に行けるし2人でおいしいケーキ屋さんにも行けるじゃない!それにコウキくんのこと好きになってもいいんだ。な~んだ。そんなにわるくないじゃない。

「……ごめんね。アキラ。わたしずっとアキラのこと男の子だと勘違いしてた」

 これから女の子同士友情を深められるのはいいけど、私の勘違いを謝るのははずかしかった。だってアキラにわるいもん。わたしは仲良くなりたいけどアキラはどうだろう?

「あ……いや、いいんだ。私のせいでもあるからな。昔は一人称『俺』だったし…」

 う~ん……あんな男の子っぽい服着て自分のことを『俺』と言っていればさすがに誰でも男の子と勘違いするかも。

「………」

「………」

 どうしよう。次なんて言えばいいかわからない。ナポレオンはどこから持ってきたのかせんべいをかじっていた。せんべいの割れる音が部屋に響く。なにか話さないと……。ええーっと、話題、話題……そうだ!

「アキラって好きな男の子いるの?」
「へっ?」

 アキラの目が点になった。いきなりこんなこと訊いて失礼だけど他に話題が思いつかなかったんだもん。アキラの顔がみるみる赤くなっていく。いるんだ!

「誰?誰?」
「ちょ……いきなりそんなこと訊くな!」

 アキラはあたふたした。な~んだ。アキラにも女の子らしいところあるじゃない。

「ヒ、ヒカリはどうなんだよ?」

 ふふっ。アキラったらごまかしてる。

「まだ好きじゃないけど気になる男の子がいるの!ナナカマド博士の手伝いをしていてコウキくんっていうんだけど」
「あー。あいつか」
「知ってるの?!」

 わたしはベッドから身を乗り出した。初めての恋バナでいきなり共通の知り合い発覚かしら!?

「知ってるもなにもあいつは私の従兄弟だ」
「えーっ!?」

 意外な接点!じゃあアキコちゃんが言ってたいとこのお姉さんってアキラのことだったの?!

「言っておくけどあいつはやめといたほうがいいぞ」

 アキラはほっぺたをかいた。コウキくんと仲わるいのかしら?

「コウキくんのこときらいなの?」
「あいつのようなヘラヘラしたやつは苦手なんだ」
「ヘラヘラって……」

 ジュンと同じこと言ってる。たしかにロマンチストでたまに暴走するけど誠実でいいと思うのに。

「まあ、バカのジュンよりかはマシか」

 わたしはクスッと笑った。アキラは「それにコウキと結婚すればヒカリは遠縁の妹になるし……」と真面目な顔でつぶやいていた。ジュンっていたるころで不評だな。頭よくないしせっかちだからしかたないけど。
 そんなこんなでアキラと3年間の空白の時間を埋めるように私たちは話した。トレーナーになったきっかけ、誕生日、好きな食べ物、好きなファッション、好きなポケモンのタイプ………そんな当たり前のこと。だけど好きな人のことだけは教えてくれなかった。

 今までアキラは町を転々としていたのでわたしから手紙を送ることはできなかった。フタバタウンから出られないわたしにとってアキラの手紙は唯一の楽しみだった。三カ月に一回は短い手紙を書いてくれた。だからアキラがなにをしたかはなんとなく知ってたけどアキラはわたしがなにをしていたのかはわからなかった。

「そうか。この2日間でいろいろあったんだな」
「うん」

 最近起きた出来事は全てアキラに伝えた。旅に出てからたびたび起こるようになったデジャヴを除いて。アキラに相談するべきかしら?………ううん。まだ旅に出たばっかりなのよ。一時的なものかもしれないしすぐにおさまるわよ。今はそのときじゃない。

 それにしても変な夢。夢で見たものはなにもかもぼんやりしていてはっきり見えなかった。「女はポケモントレーナーになれねーよ」と言っていた男の子が気になる。ジュンみたいに草タイプのポケモンを持っていた。ナエトルに似てたな。

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 でもジュンがあんな嫌味ったらしく話すわけないし……。ポケモンもらったばっかりだからあんな夢見たのかな。

「ここのジムリーダーってどんな人?」
ヒョウタか?いいやつだぞ。戦ったことないからどれくらい強いかはわからないけど。2年前ジムリーダーになったばっかりなんだ」
「へ~」

 かっこいい人だといいな。かっこよくても全力で戦うけど。

ヒョウタさんって何タイプの……」

 ヒョウタさんの専門のタイプを訊こうとしたら部屋の外がバタバタしているのに気づいた。

「お客様!いけません!」
「うるせー!きんきゅーじたいなんだ!」

 ドア越しに声が聞こえてきた。どうしたんだろう?足音がどんどん近くなった。この部屋に向かっている。まさか……。

―バン!

 開いたドアが壁にぶつかった。入ってきたのはもちろん……。

「ヒカリ!倒れたって本当か?!ってなんだってんだよー!」

 ……はぁ。やっぱり。お約束のパターン。いきなり部屋に入ってきたのは金髪くせっけが特徴のせっかちボーイ、ジュンだった。

「ああっ!?その頭!血のような目!おまえアキラだろ!」

 3年ぶりの再会だというのにジュンはアキラをビシッと指差した。しかも全然歓迎していない。血の色だなんて失礼ね。もっといい言い方あるでしょ。ルビーとか薔薇とか。

「おまえは3年前から成長してないのか?」

 アキラはお茶を飲みながら訊いた。落ち着いてないジュンと違って余裕ね。さすがアキラ。

「失礼だな!3年前よりぐんと背が伸びたぜ!」
「そうか」

 アキラはジュンを華麗にスルーした。会話が成り立たないと判断したのね。

「おまえだな!ヒカリを気絶させたのは!」

 わたしはギクリとした。ジュンは間違ってはいない。アキラを女の子だと知ったショックで気絶したから間接的に気絶させたのはアキラだ。でも私が勝手に勘違いしただけだしアキラは悪くないし……うーん。ジュンになんて説明すればいいのかな?

「おまえがヒカリをおそったんだろ?!」
「いや、それはない」

 ジュン!わたしが昨日ストーカーに襲われたばかりだから警戒してるの?

「ちきしょー……女にモテそうな見た目になりやがって……」

 これってほめてるのかしら?けなしてるのかしら?ジュンの美的センスによるとアキラはかっこよくないけど女の子ならかっこいいと思うってことはわかるんだ。意外。

「あのー、お客様?」

 受け付けにいたおねえさんが罰のわるい顔をして呼びかけた。ジュンの存在感がありすぎて忘れてたわ…。

「私の知り合いですから大丈夫です。ベッドを貸していただいてありがとうございます。もうすぐここを出ますね」
「あ、いえ……はい!そうですか。わかりました」

 納得してくれたかわからないけどおねえさんは部屋を去った。そろそろこの部屋だけでなく博物館自体から出たほうがいいかも。タダで入れたとはいえいつまでも居座っていると失礼だし。

「……で、なんのようだ?」

 あ、上手く話題をそらした。

「そうだ!ヒカリ!ジムリーダーがヒカリとバトルしてくれるって!」
「えーっ!?」

 そんないきなり!ジムリーダーってヒョウタさんのことよね?まだお昼も食べてないのに。

「今昼休みだけどご飯食べ終わったらバトルしてくれてもいいってよ!よかったな!ヒカリ!」
「ええ?あ、うん……」

 ヒョウタさんもよくOKしてくれたなぁ……。アキラも「いいやつ」って言ってたしおだやかな人なのかしら?

「なんだよー。もっとよろこべよ!イェーイ♪って!」

 そんなこと言われても……。ジュンのように常にテンションマックスじゃないんだから。

「……」

 アキラはわたしをかばうように立った。

「……なんだよ?」

 ジュンの声のトーンが下がった。顔は見えないけど不機嫌そう。

「ヒカリもまだお昼を食べてない。それにジムリーダーと戦うのなら対策を練ったほうがいい」

 さすがアキラ!もし本当に男の子だったら胸が「キュン♡」となっていた。

「そっか……そうだな。オレいきなり挑戦したから苦労したもんな。ヒカリならだいじょうぶだと思うけどがんばれよ」

 ジュンはあっさり身を引いた。ずっとジュンのそばにいたから大抵のことならわかるけどたまに予測できないのよね。

ヒョウタに昼休みはバトルしないって伝えておくよ。またな、ヒカリ。バイバイ、アキラ」

 開いたままのドアからジュンは廊下へ出た。もう帰るの!?ちょっと待ってよ!

「待って!ジュン!ご飯一緒に食べようよ」

 アキラと再会できたのもなにかの縁。せっかくだから3人でご飯を食べたい。

「んー、えんりょする。久しぶりにアキラに会えたんだろ?2人で楽しめよ。コウキよりまともだし。……オレまだアキラのこと苦手だけど」

 本人の目のまえで言わないでよ。正直なところは好きだけど。ひやひやしながらアキラを見た。アキラはどう思ってるのかしら。

「……転ぶなよ」
「りょーかい!」

 さすがアキラ。やっぱりクールだわ。ジュンは右手で敬礼するとさっさと行ってしまった。

「私たちも行くか」

 アキラはコップや水筒を片付け始めた。

「……」

 ナポレオンの視線を感じた。手にはハンカチを持っている。シンジ湖で私のおでこにのせられていたハンカチだ。私は静かにハンカチを受け取った。

「このハンカチってジュンの?」
「ポチャ」

 ナポレオンは首を横に振った。じゃあこのハンカチは誰のなんだろう?

 

 

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