ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第20話 思わぬ再会

[4月4日 月曜日

 今日は1日の大半をコトブキシティで過ごしたわ。途中201番道路と202番道路でビッパムックルをつかまえた。ムックルをつかまえたあとコウキくんにトレーナースクールまで案内してもらったんだけど変なおじさんと会ったの!国際警察のハンサムと名乗ってたけどちょっと頼りなさそうだったわ。

 トレーナーズスクールにジュンがいたから忘れ物を届けた。余ったタウンマップもらちゃった。ラッキー♪お昼はコウキくんと一緒にスカイビルで高級フランス料理♡でも緊張しすぎて味がわからなかった……。告白っぽいこと言われたけどどうしよう?(>///<)サロンを出たら警察がスカイビルの中を走り回ってた。ハンサムさんとまた会って怪しい人に気をつけるように注意された。

 そのあと宝石店で真珠とダイヤモンドを見ていたらジュンが割り込んできた。警察とともに。なんと!スカイビルの騒ぎの原因はジュンだったの!弁償代として一千万円も請求されたんだけど幸いコウキくんが払ってくれた。コウキくんどれだけ金持ちなんだろう?

 ジュンとコウキくんは警察とともに行動したからわたしは204番道路でスボミーを仲間にした。だけどビッパが毒になって死にかけてしまったの……トレーナー失格かも。さらに追い討ちをかけるように208番道路で迷子になっちゃった!わんわん泣いていたら釣り人に助けてもらった。ぼろい釣竿でコイキングを釣ったら元気が出てきた。

 ジュンの誕生日プレゼントを買って帰ろうとしたらストーカーに遭った。こわくて腰がぬけて逃げられなくって、もうダメだと思ったところをジュンが助けてくれたの!…マスクをつけて技名を言いながら戦って子どもっぽっかったけど。でもちょっぴりかっこよかった(笑)。ストーカーを撃退したのはいいけどマスクつけてたせいでジュンはハンサムさんに手錠をかけられちゃった。アハハ。

 その日はトレーナーズスクールに泊まった。夕食は私の大好きな甘口カレーだった。でも辛党のジュンは甘すぎるって文句言ってた。いいじゃない、たまには甘くても。あ、ジュンにプレゼント渡し損ねちゃった!明日渡さなきゃ!]

 

***

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 暗い洞窟を歩いていた。かれこれ30分歩いている。

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 ときおりコウモリポケモンが羽ばたく音が聞こえるけどもう慣れた。大丈夫。私にはポケモンがついているんだから。

「ポチャ!」

 ナポレオンが出口をさした。外から光がもれてくる。もうすぐクロガネゲートをぬけられる。

「とうちゃ~く♪」

 今まで暗いところにいたぶん、明るく言ってみたけど半時間ぶりの太陽はまぶしすぎた。サンバイザー代わりに手をおでこにそえた。

「ふぅ」

 それにしてもクロガネゲートがまっすぐ進む道でよかった。そうじゃないと私の『特性』、方向音痴が発動するところだったわ。ゲートの入り口で親切な山男さんに道を教えてもらったし『岩砕き』の秘伝マシンまでもらっちゃった。ポケモンバトル以外で『岩砕き』を使うにはクロガネジムのヒョウタさんに勝たなきゃいけないって言ってたけど。

 目がだんだん慣れてきた。岩山がくりぬかれたような場所にある炭鉱町、クロガネシティ。上が白くて下が青いマンション。黒くて斜めの屋根の家。全体的に地味な町だな。男の人たちの元気な声と機械の動く音が聞こえる。活気のある町だな。真ん中らへんにある茶色い屋根の建物がポケモンジムかしら?コトブキシティにあったフィットネスジムと形が似ているわね。

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「あそこにジムリーダーがいるのね!」
「ポチャポチャァ!」

 ポケモンジムはトレーナー育成のための公的機関。一般トレーナーの挑戦をジムリーダーが受けて実力を測るシステムだ。ジム戦で勝てばその証として特別なバッジをもらえる。バッジには秘伝技がバトル以外でも使えるようになったり、他人と交換したポケモンが言うことを聞くようになったりする効果がある。どの地方にも8人のジムリーダーがいて8つのジムを集めればポケモンリーグへの参加権が認められる。ポケモンリーグで優勝すればそのトレーナーはポケモンチャンピオンになれる。そう。つまり、ポケモンジムとはいわばポケモンチャンピオンへの入り口!

「ジム戦のまえにポケモンセンターで休もっか。ナポレオン」
「ポチャ!」

 クロガネゲートで野生ポケモンと戦ったからみんなを休ませなきゃ。

 

***

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 フレンドリィショプで道具もそろえて、ポケモンセンターポケモンを回復させた。いざジムへ挑もうとしたらジムのまえによく知っている顔を見かけた。昨日も一昨日もそれ以前から毎日顔を合わせている金髪くせっけのせっかちな男の子……。

「おっ。ヒカリか!」

 やっぱりーーー!あんなに毎日顔を合わせたんだもん。間違えるはずがない。ジムのまえにいたのは切っても切れない縁をもつわたしの幼なじみ、ジュンだった。昨日助けてもらったばかりだからちょっと照れる。目線をわざと外して挨拶した。

「ジュ、ジュンじゃない。おはよう」
「今ごろクロガネに到着か?あいかわらず遅いぞ」

 むっ。なによその言い草!大体ジュンが早起きすぎるのよ!プレゼント渡そうとしたのにいつのまにかトレーナーズスクールからいなくなってたんだから。昨日こんなやつをちょっとでもかっこいいと思ったわたしがバカだった。

「それにしてもジムリーダーの強さって半端ないよな!もちろんオレは勝ったけど。ジムリーダーであれだけ強いならそいつの親父ってどれだけ……」
「ここのジムリーダーのお父さんもジムリーダーなの?」

 へ~、すごいなぁ。親子でジムリーダーなんてめずらしいわね。そんなこともあるんだ。

「ああ。そうらしいぜ。ま、オレのダディのほうが強いと思うけどな」
「ふーん」

 どんな親子なんだろう。使うポケモンのタイプも似てるのかな?

「それよりもさ、ジムリーダーなら炭鉱に行っちゃったぜ!ポケモン勝負するならまず炭鉱に行かないとな!」
「えー!」

 ジュンとバトルしたあと早々炭鉱に行っちゃったの?その人どんだけ元気なのよ!いや、それとも負けてヤケになって単純労働でもしたくなったとか?……あ、炭鉱は重労働か。

「おまえ思ってたより遅かったな。オレずーっとここでおまえのこと待ってたんだぜ」
「え?なんで?」

 わたしなんか待たず次のジムのある町に行けばよかったのに。

「だっておまえが来たときにジムに誰もいなかったら困るだろ?だからジムリーダーがいないことおまえに伝えようと思って待ってたんだ!」

―トクン。

 小さいけれどはっきりとした鼓動。ジュンの小さな気遣いに胸が温かくなった。不器用な優しさだな。もっといい言葉使いをすれば相手を怒らせることなんてないのに。

「ありがとう。ジュン」

 ジュンは太陽みたいな存在。いつもそばにいるからたまにまぶしすぎてうっとおしいくらい。あ、そうだ。プレゼント渡さなきゃ。わたしはバッグのポケットから小包を取り出した。

「お礼に……」というかもともとジュンに渡すつもりだったんだけど……これあげる」
「んあ?なんだこれ?」

 ジュンは包みからプレゼントをつまんで目の前にぶらさげた。太陽の光を受けてキーホルダーはまぶしく輝いた。

「キーホルダーよ。昨日誕生日だったでしょ?誕生日おめでとう!」

 太陽をかたどったキーホルダーはジュンをイメージしたものだ。ジュンの美的センスはどこか外れている。ジュンの好みそうなドクロの指輪やトゲつきのブレスレットよりこっちのほうが似合うと判断して買ったのがこの太陽のキーホルダーだ。コンパスに描かれているような太陽のキーホルダー。指輪だと失くしそうだしブレスレットだと汚れそう。でもキーホルダーなら大丈夫。それにいざとなったら道しるべになってくれそう。

「お、おお!そうだった!完全に忘れてたぜ!」
「だと思った!だって昨日色々あったもん」

 うんうん。ポケモンをもらった日から色んなことがおきてるもんね。トレーナーズスクールでコウキくんとケンカしたり、レストランを襲撃したり、警察に追われたり、宝石店でまたコウキくんとケンカしたり、逮捕されそうになったり、弁償金要求されたり、マスクつけてたからまた逮捕されそうになったり……ってあれ?ジュンってだんだん犯罪予備軍になってる?

「サンキュー!ヒカリ!大好きだーーっ!!」
「キャーー!!」

 幼なじみの将来を心配してたらその幼なじみに抱きしめられた。ジュンったら昔から嬉しいと抱きしめるクセがあるけど今回はなんか痛い。10歳になってからはずかしくなって避けるようになったんだけど不意をつかれちゃった。久しぶりのハグは温かいけど痛い。っていうか変に意識しちゃってドキドキする!?

「ポチャー!?ポチャチャチャー!!」

 ナポレオンが騒いでる。嫉妬してるのかしら?

「ジュ、ジュン。そんなに力いっぱい抱きしめないで。痛いから…」

―ドクンドクンドクンドクン。

 大変。わたしの心臓ドキドキしまくってる!ジュンには聞こえてないよね?

「あ、わりぃ」

 ジュンはあっさりわたしを放した。力を加減してくれるだけでいいのに。急に肌寒くなっちゃった。抱きしめられるまえはこれが普通だったのに。

「それにしてもこれけっこういいな!真ん中にドクロがあったらかっこいいよな!」
「いや、そのままがいいと思う」
「そうか?まあいいや。大事にするからな!」

 言うが早いがジュンはキーホルダーをバッグにセットした。

「これで完璧だな!ぜったい失くさないからな!」
「うん」

 プレゼント気に入ってくれたみたい。よかった。軽く息をついて私は考えた。さ~て、これからどうしよっかな?炭鉱に行ってもいいけどジムリーダーの邪魔になるかもしれない。どうせならどこかで暇つぶしをしたい。ポケモンセンターの裏の通りにある美術館っぽい建物が気になるなぁ……。

「じゃあ私こっちにいくね」

 炭鉱とは反対方向を指した。なんたってわたしは女の子。炭鉱より美術館のほうが興味ある。

「なんだってんだよー!そっちは炭鉱博物館だぜ。ジムリーダーのいる炭鉱はあっちだぜ」

 ジュンは親指でうしろにある炭鉱を指した。重機の動く音と男性のかけ声が聞こえる。な~んだ。美術館じゃないんだ。でも博物館のほうが炭鉱より居心地よさそうね。

「炭鉱に行くならまず博物館に行って炭鉱のこと学ばなくっちゃ。いいでしょ?ちょっとくらい」
「あいかわらず勉強熱心だな……まあいいや。好きにすれば?オレは炭鉱へ修行しに行くぜ!」
「いってらっしゃい」

 本当はただ服が汚れるのがイヤだから炭鉱に行きたくないのよね。ジュンがいなくなるのを見送るとわたしはナポレオンにきのみをあげた。

「ナポレオン。あなたの強さをたたえてプレゼントよ♡」
「ポチャ!?」

 ナポレオンはじーーーっときのみを見つめた。うっ…。もっといいものわたすべきだったかしら?きのみの数を増やそうと思いついたところナポレオンはきのみを素早く取った。

「ポッ、ポポチャ、ポチャチャチャチャ、ポチャ、ポッッチャマ!」
「ぷっ」

 わたしは口をおさえた。はいはい。『べ、べつにこんなの好きじゃないんだからね!』って言ったのね。

「ポチャチャー!」
「笑ってないわよ。気のせいよ、ナポレオン」

 わたしは空を見ながらごまかした。空の色はポッチャマのようにまだ青い。時間もたっぷりあることだし、博物館でゆっくりしながらご飯でも食べよっかな。

 

***

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 炭鉱博物館に入ったら入り口のすぐ横にでっかい黒いかたまりが展示されていた。これがなにかわからずきょとんとしていたら、子ども連れのおじさんが「これが石炭か!」と感激の声をあげていた。うわ~、本物は初めて見るわ……。ナポレオンも口を開けたまま石炭を見ていた。展示はあとで見るとして食堂はどこにあるのかしら?

「アキラさま。黒崎アキラさま。おあずかりしていたものが復元できました。カウンターまで取りにきてください」

―ドクン。

「ポチャ?」

 カウンターでマイクによる呼び出しがあった。黒崎アキラって……3年前ヒコザルと一緒にフタバタウンに来たアキラだよね?ナポレオンも聞き覚えのある名前に反応した。私は辺りを見回した。黒い短髪で紅(くれない)の瞳をもつ人がいないか探した。

「っ!?」

―ドクン。

 心臓の音が大きく鳴った。……いた。わたしより頭一つ分高い男の子。青い半そでのYシャツの下に水色のTシャツを着ている。でも黒い髪の毛と真紅の瞳はそのままで大人っぽくなっていた。アキラ………昔よりかっこよくなってる……!

 アキラはわたしに気づかずカウンターに行った。マイクで呼んだ女の人ではなく白衣を着た眼鏡のおじさんと話しはじめた。

「遅かったねー!待ってたよー!これがカブトだよー!大事にしてあげてくださいー」
「ありがとうございます」

―ドクン。

 アキラがカウンターから離れていく。展示品には見向きもせず博物館を出ようとしている。あ……ダメ……。行っちゃう!早く話しかけなきゃ…!

「ポチャ~」

 ナポレオンがわたしの足を引っ張った。「話しかけないの?」と言っている。わ、わかってるわよ。今から話しかけるつもり……!

「ア……」

―ドクン。

 どうしよう。声が上手く出ない。裏返った声になってる…!

―ドクン。

 ……いい。変な声でもいい。話したい。3年間ずっと会いたかった。わたしの初恋の人…!

「ア、ア、ア……アキラ!」
「え?」

―ドキン。

 こっちを見た。……覚えてるかしら?わかるかしら?私がフタバタウンのヒカリだってこと。

「ヒカリ…?」

―ドキン。

 涙があふれそうになった。うれしい……わたしだってわかってくれた……!

「アキラ…」

―ドクン。

 胸の高まりが止まらない。……お願い、わたしの足。上手く動いて……!

「アキラーーー!!」

 わたしは走った。アキラの胸に向かって。周りの目なんか気にしなかった。だって、やっとアキラと会えるんだもん。他のことなんてどうでもよくなっちゃうよ……!

「ヒカリ!」

 アキラはわたしは受け止めてくれた。背中にアキラの手の感触がする。ひやっとするけどそれがアキラの手。手は冷たいけど心は温かい証。まさか旅に出てこんなに早く会えるなんて……!

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―トクン、トクン、トクン。

 やっと私の心臓が大人しくなってくれた。鳴り響くのは心地よいリズム。いつもより音が少し大きいけど慣れれば安堵の音になる。

「ヒカリじゃないか!気づかなかったぞ。女らしくなったな!」
「うん!」

 髪の毛、伸ばしたの。アキラに言われたように女らしくなるために。

「……ポケモントレーナーになったんだな」
「うん」

 ナポレオンがめずらしく大人しい。ジュンに抱きしめられたときはやかましかったのに今はなにも言わない。あこがれの人だから気を使ってくれてるのかしら?

 ああ、なにもかもがなつかしい。クールな顔に燃えるような瞳。少し青みがかった黒髪。伸びた背も凛々しくなった顔も愛おしい。男の子にしては細いけどがっしりした腕、平たいけど柔らかい胸……………………え?やわらかい胸?

「ちょっ……ええ?あれ?」
「ん?」

 わたしはアキラの胸から顔を離した。ちょっと待って。なんかおかしくない?

「アアアアアキラ、むむむむ胸になんかつめた?」
「なにって……ブラジャーつけてるけど……」

 ブ、ブ、ブ、ブラジャー??え?あ、でも最近男性用のブラジャーも販売してるってニュースになってたし普通かな?オカマじゃないけど。でも……え?

「ア、アキラ……アキラって男の子だよね?」

 精一杯笑顔を作ったけどわたしの口元、ゆがんでないかしら?さっきからいやな汗が出てくる。

「ハハハハ。やだなー、ヒカリ。なに言ってるんだ?」

 アハハハハ。そうよね。アキラがオカマなわけないよね。れっきとした男の子だもんね!

「私は女だぞ」
「え?」

 時は止まった。いや、正確に言うと崩れた。今までアキラを想っていた気持ちが崩壊していった。そ、そんな………わたし3年間も女の子に恋してたの!?

「い、い、いやーーーーーーーー!!」
「ヒカリ!?」
「ポチャチャー!」

 全身から力が抜けていった。空気をなくした風船のように。アキラとナポレオンがわたしを呼ぶ声が聞こえる。でもだんだん聞こえなくなった。キューンキュン。キューンキュン。初恋の彼は、女の子でした……。

 

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