ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『白黒遊戯』第18話 3匹の事情

f:id:mirai_kyoushi:20190610013942g:plain

 ここはヒウンセントラルエリア。ヒウンシティの中央にある噴水広場は上空から見るとまさにヒウンシティの目玉だ。そんなセントラルエリアにあるタピオカドリンク店に1人の客が来た。

「やあ。注文はなんだい?」

 店員である若い男性は言った。客はポニーテールが似合う少女だった。歳は15くらいだろうか。彼女の顔は自信に溢れていてどこか色気がある。

f:id:mirai_kyoushi:20190531002947g:plain

「ミックスフルーツティーのタピオカ、Lサイズでお願い♪」

 少女はウインクで注文する。店員は元気よく返事をした。

「了解!」

 そこへ少女はすかさず店員の手に自分の手を重ねる。

「あたし……今お金少ないの。Sサイズの料金でLサイズにしてくれたら嬉しいな……♡」

 エロかわいい少女に上目遣いで頼まれたら断れない。店員は赤面しながら答えた。

「か……かしこまりましたっ!」

 1分後、ノエルはご機嫌でタピオカが増量されたLサイズのカップとおまけのお菓子を持ってスキップした。

「う~~~ん」

 ノエルはストローをくわえながら自分のポケモンを見る。ベンチにはノエルと3匹のポケモンが並んで座っている。ツタージャモグリュープラズマ団アロエ戦で共に戦ったので互いに打ち解けている。だがまだ共に戦ったことがないワシボンは2匹に対してどこか遠慮している。2匹は気をつかってワシボンに話しかけるが、ワシボンはもじもじしている。

(あたしのワシボンの性格は頑張り屋で我慢強い……か)

 大人しいわけではないが、今までひどい目に合っていたので弱気になっているのかもしれない。ちなみにツタージャの性格は素直で負けず嫌い。モグリューは能天気で少しお調子者だ。

(しばらくポケモンたちだけにしてみようかな)

 言葉が通じないとはいえ、人間である自分がいないほうがポケモンたちは話やすいかもしれない。そう思ったノエルはタピオカドリンクをちゅ~~~っと飲み干す。カップを振ると、ノエルはポケモンたちに声をかけた。

「あたしゴミ捨ててくるね~。みんなここで待ってて~」
「タ~ジャ」

 ノエルは3匹にヒラヒラと手を振る。すぐに戻るつもりはなかった。ライブキャスターでアララギ博士やベルに話して時間をつぶそうと考えていた。ノエルは自分が不在の間、ポケモンたちの親睦が深まることを願った。

 

***

f:id:mirai_kyoushi:20190610010701j:plain

 ノエルがいなくなってポケモンたちはし~~んとした。そこへワシボンがおずおずとツタージャモグリューに話しかける。

「あの……ぼくたちのご主人さまってどんな人ですか?」
「最高!」
「めんこい!」

 ツタージャモグリューは即答した。だが象徴的すぎてわからない。ワシボンは首を傾げた。鳥ポケモンらしく自然で愛らしい仕草だ。

「あの……あなたがたはどのようにご主人さまと出会ったのですか?」

 ツタージャは目をつぶり、ふふんと鼻を高くした。

「じゃあ特別に教えてあげる!ノエルとボクは出会う前から運命の糸で結ばれていたってことを!」

 

***

f:id:mirai_kyoushi:20190610010808g:plain f:id:mirai_kyoushi:20190607124521g:plain f:id:mirai_kyoushi:20190602141402g:plain f:id:mirai_kyoushi:20190610010930g:plain

 あのね。ボクはね、ノエルと会う前からノエルのことを知ってたんだ。ノエルと会う前日、アララギ博士はボクとミジュマルポカブをボールから出した。大事なお話があるってね。アララギ博士はにこにこ語り始めた。

ツタージャミジュマルポカブ。あなたたちは明日からトレーナーと一緒に旅をすることになるわ」

 うん。知ってるよー!ボクたちは返事をしたけどアララギ博士にはただの鳴き声にしか聞こえない。

「どんなトレーナーか気になるでしょ?今から3人のトレーナーについて教えてあげるわね」

 わ~。どんな人たちだろう?

「そうね。誰から話そうかしら。1人目は……チェレンっていう男の子。とっても真面目でしっかり者よ。彼さえいればどんな問題も解決できるわ。彼と一緒なら確実に強くなれる。あなたたちポケモンの世話もきっちりしてくれるわ。ただ頭が固いから、ときどきリラックスさせてあげてね」

f:id:mirai_kyoushi:20190608171038g:plain

 へえ~。そうなんだ~。めんどくさそうだね~。

「2人目は……ベル。とっても明るくて優しい女の子よ。彼女がいればどこへ言っても癒しの空間よ。世間知らずで甘えんぼ。そして泣き虫。少しワガママを言うけど、その気になれば我慢できるわ。だから、しっかりフォローしてあげてね」

f:id:mirai_kyoushi:20190602141333g:plain

 ふ~ん。そうなんだ~。いい子なんだね~。最後の人は~?

「3人目はね……ノエルって言うの」

 ノエ……ル?なぜかノエルを話すときだけ、間が合った。そのとき、アララギ博士はとってもとっても優しい目をしていたんだ。愛おしくて愛おしくてしかたがないって顔だった。 

f:id:mirai_kyoushi:20190531002947g:plain

「わたしの……大切な娘。誰よりも明るくて誰よりも元気な女の子。気まぐれでイタズラッ子。何をするかわからない。だけど……彼女がいればどんな困難にも打ち勝てる。彼女と一緒ならなんでもできる。そんな気持ちにさせてくれる女の子よ。なんでもかんでも思いつきや力ずくで解決しようとするのがたまにきずだけどね」

 アララギ博士はウインクと同時に舌を出す。ボクもミジュマルポカブも気づいていた。博士はノエルのことを話すときが一番楽しそうだった。

「で、トレーナーにするなら誰がいい?」

 博士がいなくなったあと、ミジュマルが訊いてきた。もっとも、ボクたちがトレーナーを選ぶのではなく、トレーナーがボクたちを選ぶのだけれど。ポカブはちょっと考えてから答えた。

「オイラは誰でもいいな~。きっと誰と旅しても楽しいはずだよ!」

 ポカブは大人しいオスだ。好奇心が強い。ポカブなら誰がトレーナーになっても合わせられると思う。

「そう。わたしは旅をするなら女の子がいいわ」

 冷静なミジュマルは答えた。とても几帳面なメスだ。アララギ博士ミジュマルのことを「まるでお高くとまったお嬢様みたい」と言っていた。どういう意味かわからないけど。

「ノエルは大変そうだから、ベルがいいかしら?わたしが責任を取って立派なレディーにしてみせるわ」
「あれ?それなんかおかしくない?」

 ボクより先にポカブがツッコんでくれた。ミジュマルは目をつむって「なにもおかしくないわ」と言った。

「男の子だけど、しっかり者のチェレンも悪くないわね。紳士かもしれないし。ツタージャ。あなたは誰がいい?」

 待ってましたっ!よくぞ聞いてくれたって感じ。アララギ博士の話を聞いたときから、あの人しかいないって思ってたんだ。

「ボク、ノエルがいい!!」
「ええっ!?」

 ミジュマルは目を丸くした。ポカブはきょとんとした。ミジュマルはボクの肩をつかみ揺さぶった。

「あんなメチャクチャな子のどこがいいのよ!きっといい加減な生活を送っているに違いないわ!」

 ボクは肩からツルを伸ばしてミジュマルを引き離す。 

「もう決めたんだ。ボク、ノエルがいい!きっとボクを知らない世界に連れて行ってくれるよ!ノエルはきっとボクを幸せにしてくれる。だからボクもノエルを幸せにするんだ!」

 ミジュマルは口をパクパクしたけど、諦めた。

「……そう。好きにしたら?ノエルに選ばれるかどうかわからないけど」

 そう言ってミジュマルはボールに引っ込んだ。「なにがあっても知らないんだから」とつぶやいているのが聞こえた。ポカブはボクに駆け寄った。

「ノエルといっしょに旅できるといいね!」

 そしてボールに戻った。ボクはツルで窓まで登った。きっとノエルならボクのツルでは届かない場所にも連れて行ってくれる。そんな気がした。ボクはお星さまに祈ってからボールに入った。「ノエルがボクを選んでくれますように」って。


***

 

f:id:mirai_kyoushi:20190610010701j:plain

「そしてボクはノエルと目が合った瞬間ノエルだとわかり、彼女に抱きついたのさ!ノエルはボクを見たとき目を輝かせていた。お互い一目惚れだったってわけ!ボクとノエルは運命共同体なのさ♪」

 ツタージャは自信満々に言った。こうして偉そうに語ることができるのも、ノエルの最初のポケモンという特権のおかげだ。ワシボンツタージャの話に感動した。

「わあ~。ステキな出会いですね~。ロマンチックです」
「でしょ~?」

 ツタージャは一般的にプライドが高いポケモンと言われているが、ノエルのツタージャは素直だった。……ちょっぴり見栄っ張りなところはあるが。今度はワシボンモグリューを見た。

モグリューさんはどんなふうにご主人さまと出会ったのですか?」

 ツタージャワシボンモグリューの3匹はベンチで座ったままだ。モグリューはにこにこ笑いながら足をぶらぶらさせていた。

 

***

f:id:mirai_kyoushi:20190605143017p:plain

 オラ、モグリューっていうだ。地下水脈の穴に住んでたんだべ~。ある日、いつものように地面を掘り進んでたら振動を感じただ~。頭上を人間たちが走ってるってわかったべ。こんなに多くの人間が来るなんてめずらしいと思ってオラ、顔出しただ!

「なんだなんだ!?」
「うえっ」

 オラが出た拍子で砂煙が出ちまっただ。左から2人の男の声が聞こえたべ~。

「ゲホッゲホッ……なによこれ!?」
「砂煙だ!……ゴホッ。入口の看板に書いてあった」

 右には男女がいたべ。ポケモンが「しっしっ」と砂煙を払ったら、人間4人とポケモン4匹がいただ~。そのときいた人間の1人がノエルだったんよ。あのときはめんこい女子(おなご)がいるな~と思ったべ。ノエルと一緒にいた男はチェレン。ツタ坊が言ってたとおり、ノエルの真面目な幼なじみだ~。あんたもいずれ会うことになるべ、ワシ坊。そのときは失礼のないようにするだ。わかったか?ちなみに左にいた男たちはプラズマ団。悪いやつだべ。

「はじめますて~♪」

 オラは元気よく挨拶しただ。第一印象は大事だべっ!そしてオラは歓迎のダンスをした。

「みなさん」

 左腕を上げて、左腕を下げる。

「よくぞ」

 右腕を上げて、左腕は垂直に。 

「おこし」 

 右上げて、左上げて、右上げないで、左下げる。 

「くださった!」

 自分としては最大限の歓迎をしたつもりだっただ。だけどオラのダンスが気に入らなかったのか、左側にいた連中が怒りだしただ~。

「てめえ!煙に乗じてポケモン出しやがって!」 

 ……はあ?オラは野生のポケモンだべ?

「……は?あたしのポケモンじゃないし!野生のポケモンでしょ?」
「うそこけ!ミネズミ、『体当たり』!」

f:id:mirai_kyoushi:20190610011851p:plain

 オラがノエルに同意するまえに、ミネズミが「おらっ!」と言いながら近づいてきた~。そすたらノエルが言っただ。

「避けて!」

よくわからないけどノエルの指示に従った。上にジャンプしただ。

「『噛みつく』だ!」

 ミネズミは「くらえっ!」と声を荒げた。どうすたもんかな~とぼ~~っとしてたらノエルが指示を出した。

「左へ避けて!次、後ろ!右!左!」

 痛いのはなんかやだったから、オラは指示に従った。

「あいよ~」

 オラはひょいっひょいっと避けながらミネズミを見てただ。「こいつなんでオラを攻撃してくるんだろ?」と。でもそれと同時に感じた。こんなふうに動くのは、なんて気持ちいいんだろう。

 ぜえぜえ息をするミネズミプラズマ団は怒鳴った。
「やっぱりてめえのポケモンじゃないか!!」
「だから違うってば!」
「じゃあなんで命令してんだよ?てめえの言うことを聞いてるじゃねえか!」
「だってあんたが攻撃してくるからとっさに……」

 そう話している間にチェレンポカブがもう1匹のミネズミを倒しちまったべ。

f:id:mirai_kyoushi:20190610010930g:plain

「どうだ!」

 ポカブは得意げに言った。チェレンはノエルに話しかけた。

「急所に当たってよかったよ。次はノエル、君が倒す番だ」
「オ、オッケー!」

 そしてノエルはオラにさっきより具体的な指示を出しただ。

「行くわよモグリュー!『体当たり』!」

「す、『砂かけ』!」

「じゃあ『ひっかく』!」 

 オラはその場の勢いとノリで技を出したべ。ただ『体当たり』と言われて出たのが『高速スピン』、『砂かけ』と言われてやったのは『泥かけ』だっただども。そして見事にプラズマ団をやっつけただー!

 そのあとプラズマ団の仲間がふいうちしたり、ノエルがプラズマ団を脅したり、ミネズミたちを解放したりといろいろあったべ~。で、ノエルといたらまたあのときみたいに踊れる。ノエルと旅をしたら面白そうと思ってオラ、ノエルとツタ坊のあととついていっただ!橋のところでノエルは足を止めた。
「で、いつまでついてくるつもり?」 

 オラは笑顔で答えた。 

「オラも行くべ~♪」 

 こうしてオラはノエルの仲間になっただ!

 

***

f:id:mirai_kyoushi:20190610010701j:plain

「だからオラはノエルとツタ坊についてくことにしたんだべ!」
「へえ~。そうだったのですか~。」

 ワシボンは2匹の先輩の話を聞いて納得した。ノエルの人柄に人もポケモンも惹きつけられるみたいだ。ツタージャは素直に感想を述べた。

「まあ、悪いやつじゃないみたいだし、同行するのを認めてあげたのさ。メスだからノエルが盗られる心配もないし。」
ツタージャ先輩はご主人さまを異性として慕っているのですね。」
「もちろん!結婚したいくらい好き♡」

 どこまでも素直なツタージャワシボンは感心した。しかしツタージャは表情を変え、じろりとワシボンを見る。

「ノエルが美人で強くて優しいからって恋しないでね。きみはあまりにもひどいケガをしていたから仲間になることを許可したけど……なにがあったの?」

  ワシボンの顔が暗くなる。初めて見る暗い表情にツタージャモグリューは困惑する。

「べ、べつに話したくなかったら話さなくてもいいべよ?」
「そ……そうだね!誰だって一つや二つヒミツをもっているものだよね!」
「いえ。いいんです。話させてください。」

 ワシボンは二匹を見る。

「ぼく自身、過去とけじめをつけたいので……。」

 

***

f:id:mirai_kyoushi:20190609112734p:plain

 ぼくは険しい山で育ちました。ワシボンウォーグルとその他のメスの鳥ポケモンの群れとともに生活していました。ウォーグル一族は誇りが高く、そこでは強さが全てでした。いずれウォーグルへ進化するワシボンたちは立派な戦士になるため、毎日修行をしていました。

 ある日のことです。巣を作るため木の枝を集めていたら3匹のバルチャイと遭遇しました。バルチャイワシボンと反対でメスしかおらず、ずる賢い性格なのでぼくたち一族とは対立していました。3匹のバルチャイはぼくを見るなり攻撃してきました。

「痛い!痛い!やめてください!」

 繰り返される『乱れ突き』『ついばむ』。ぼくは抵抗せずバルチャイたちに話しかけました。

「なぜあなたたちはぼくを攻撃するのですか?理由を教えてください!もし縄張りに入ってしまったのなら謝ります。今すぐここを立ち去るので攻撃をやめてください!」

 バルチャイたちの攻撃は一旦止まりました。3匹は顔を見合わせ、げらげら笑い出しました。

f:id:mirai_kyoushi:20190610011624p:plain f:id:mirai_kyoushi:20190610011624p:plain f:id:mirai_kyoushi:20190610011624p:plain

「別にここはあちきたちの縄張りじゃないわよ。」
「理由?そんなものないわ。」
「あたいらはただ単に楽しいからおまえをいじめているのさ!」

 そう言ってバルチャイたちは再びぼくを攻撃し始めました。なんて理不尽な理由なんでしょう。それでも暴力を暴力で返すわけにはいきません。なぜならそんなことをしたら彼女たちと同じ乱暴者になってしまう。それに女の子を殴るわけにもいかず、ぼくはひたすら彼女たちの攻撃に耐えました。するとぼくの仲間の声が聞こえてきました。

「おい!だいじょうぶかい?」
「おまえらなにやってんだよ!」
「仲間をいじめるな!」

f:id:mirai_kyoushi:20190609112734p:plain f:id:mirai_kyoushi:20190609112734p:plain f:id:mirai_kyoushi:20190609112734p:plain f:id:mirai_kyoushi:20190609112734p:plain

 運がいいことに、ぼくとよくいっしょにいる3匹のワシボンが助けに来てくれました。4対3だとさすがに分が悪いと思ったのか、バルチャイたちは逃げて行きました。ぼくはふらふらしながらも立ちあがった。

「みんな。ありがとう。」
「しっかりしろよ。男だろう?」
「オレたちウォーグル一族の名に傷がつくじゃないか。」
「やられたらやり返せ!」

 好戦的な仲間にぼくは愛想笑いをした。

 ぼくのケガが治った数日後。ぼくはいつもの3匹の仲間と話をしました。と言ってもぼくは基本聞き役のため、質問されたときだけ発言していました。そのとき話していたことはどんなウォーグルに進化したいか、でした。

「大きくなったらどんな戦士になりたい?」 

 ぼくの次におとなしいワシボンの質問が話の発端でした。 

「オレは一族のリーダーになる!」

 ぼくたちの中で一番強気な子が答えました。あの子は同い年のワシボンの間では強いから、リーダーになれるかもしれないと思いました。

「おれは一番早いウォーグルになりたいな。」

 せっかちな子は言いました。この子の夢も叶うんじゃないかと思いました。

「ボクは……やさしいお嫁さんを見つけて、お嫁さんとお嫁さんとの間にできた子どもを守れればそれで充分かな。」

 言いだしっぺの子の意見は真っ当でした。性格も強さも普通のあの子らしい意見でした。

「あはは。なんだよそれ?」
「守れるだけの強さは身に付けろよ。」

 他の2匹は笑いながらも応援しました。応援された子は照れていました。3匹はひとしきり笑うと、ぼくに目を向けました。

「おまえはどんな戦士になりたい?」

 前から思っていたけど、恥ずかしくて言えなかった夢。ぼくは自分に言い聞かせるように話しました。

「ぼくは人間と旅をして、いっしょに強くなりたい!」

 3匹は固まりました。不自然な沈黙は少しこわかったです。せっかちな子がようやく口を開けました。

「……はあ?」

 それをきっかけに次々と反対意見が飛び交いました。

「なに言ってんだよおまえ!正気か?」
「自分から人間の奴隷になるのか!?」
「人間の言いなりになるなんて!」
「人間に媚を売ることのどこが楽しいんだよ?!」
「人間は自分勝手な生き物なんだぞ!」
「昔からあいつらのせいでどれだけオレたちの仲間や棲(す)みかが奪われたか忘れたのか!?」
「そんなやつらに頼らなくたってオレたちは強くなれるだろ!」

 強気な子とせっかちな子は代わる代わるぼくを非難しました。普通の子は2匹をなだめました。

「まあ。まあ。2匹とも。木の実でも食べて落ち着こう。」

 まだかっかっする2匹が木の実を食べている間、普通の子はぼくに言った。

「きっとキミは世界を見たいんだよね?人間といっしょに旅する必要はないんじゃないかな。」
「う、うん……。」

 その場を丸くおさえようとしてくれた彼のため、ぼくはうなづきました。  

f:id:mirai_kyoushi:20190610012108g:plainf:id:mirai_kyoushi:20190610012023g:plainf:id:mirai_kyoushi:20190609113009g:plain

 翌日の夕方、ぼくはお父さんのウォーグルに呼び出されました。お母さんのケンホロウもいます。お父さんはだまっていましたが、怒っているのがなんとなくわかりました。反対にお母さんは悲しそうでした。お父さんは長い間ぼくをにらみつけたあと、話を切り出しました。 

「……お前は友達に『人間と旅をしたい』と言ったそうだな。」
「はい。」

 ぼくのお父さんは誇り高き立派な戦士です。一族のリーダーではありませんが、厳格さでは一番でした。

「この馬鹿者がっ!」

 お父さんは大きな声で怒鳴りました。 

「お前はそれでも誇り高き一族の一員か!?人間どもが我々に今までどんな仕打ちをしてきたか忘れたのか?強くなるため人間風情に頼るなど、弱者の発想だ。本当にお前は我が息子か?バルチャイに襲われたとき恐くてやり返せなかったようだな……。こんなひ弱なワシボンに育てた覚えはない!!」

 お父さんは怒ると恐い。それでもぼくには譲れない夢がある。ぼくは勇気を出して意見を伝えました。

「でも……人間にもいい人間とわるい人間がいます。ぼくはいい人間と旅に出て、色んなところへ行き、色んな人間や色んなポケモンと会ってみたいです。」
「ここでは満足できないというのか?」

 お父さんの眼がますます鋭くなる。お父さんは納得させることは難しい。

「ここはすてきなところです……。でも古里を守ることが全てではないと思います。」
「先祖代々棲んできた故郷を捨てると言うのか!?」
「そういうわけではありません。ときどき里帰りはしようと思っています。」
「……汚らわしい人間と一緒にか?見損なったぞ!!」

 全ての人間がわるい人間なわけじゃない。ぼくはときどき崖の上から見てきた。人間と生きるポケモンたちを。お互いを信じ合い、助け合い、高め合う。やっていることはウォーグル一族となんら変わりない。ぼくが初めてバッフロンとじゃれつきあう赤毛の人間を見てから思ってたんだ。人間とポケモンはわかりあえるって。

f:id:mirai_kyoushi:20190610012256p:plain f:id:mirai_kyoushi:20190610012432p:plain

 強くなる方法……生き方は一つじゃないんだって。そのことを話そうとしたら、お母さんがぼくをかばって前へ出た。

「ごめんなさいあなた!!この子は生まれつき他の子より弱いんです。だから人間と旅をしたいだなんて考えてしまったんです。この子を強い子に産めなかった私が悪いんです!どうかこの子を攻めないでください!!」

 お母さんはおんおん泣きながらぼくを抱きしめた。それを気難しい顔で見つめるお父さん。……お母さん。ちがうよ。ちがうんだ。これはぼくが自分の目で見て、自分で考えたことなんだ。ぼくが弱くても強くても、きっとぼくは人間と旅をしたいと思っていたよ。お父さんとお母さんがぼくを好きなことはわかっている。心配しているってわかっている。でもぼくは未来を自分で選びたいんだ。ぼくはお母さんの翼の中から抜け出した。

「自分勝手な息子でごめんなさい。でもぼくにも、ゆずれないものがあるんです。」

 お母さんは震えました。

「なにを言っているの……?」

 ぼくはぴょんぴょんと両親からさらに離れた。

「お父さん。お母さん。今まで育ててくれてありがとうございます。いつか強くなってここに戻ってきます。……さようなら!」

 空が暗くなっているにもかかわらず、ぼくは旅立ちました。お母さんは泣いて翼をばたつかせました。

「待って!……行かないで!!」

 そんなことを言われても、止まるわけにはいきません。お母さんを悲しませるのは辛かったですが、ぼくは飛び続けました。風でお母さんとお父さんの言葉が運ばれてきました。

「あなた!息子が行ってしまうわ……追いかけましょう!」
「放っておけ。どうせ諦めてすぐ戻ってくる。」

 お父さん。お母さん。あなたがたは間違っています。ぼくはあなたがたが思っているほど弱くありません。一対一の正式な試合であれば、ぼくはたとえ相手がメスでも戦います。もしあのときバルチャイたちがぼくの仲間を攻撃していたら、ぼくは彼女たちに容赦せず攻撃をしていました。戦う理由があれば戦いますが、戦う理由がなければぼくは戦いません。ぼくも立派なウォーグル一族です。今はまだワシボンですが、いつか立派なウォーグルになってみせます。

 

***

 

f:id:mirai_kyoushi:20190610010701j:plain

「こうしてぼくは両親と別れ、古里を出ました。ただ途中で野生のポケモンと色々ありました。バルチャイに襲われたり、コアルヒーにイタズラされたり……コロモリとエサの奪い合いになることもあれば、マメパトととぶつかったこともあります。それでも一匹で旅を続けましたが、とうとう限界で空を飛ぶ力が尽きました。」

 ツタージャモグリューは黙っている。

「意識を失う寸前、ご主人さまの声が聞こえました。」

 ワシボンは目をつぶり、昨日の出来事を思い出す。

「『新しい仲間がほしいな~。』そんな言葉が落ちる直前に聞こえてきました。『飛行タイプ……』『落ちてないかな?』その声はぼくが落ちるほどはっきり聞こえてきました。そしてぼくはご主人さまの上に落ち、ポケモンセンターまで運ばれました。」

 ワシボンは体中が痛くて目を開けられなかった。ノエルの声、すれ違う人々の声、ツタージャモグリューの鳴き声、車の音、店の音楽……暗闇の中で色んな音が聞こえたのを覚えている。

「『しっかりして!もうすぐだから!』そう言ってご主人さまはぼくを女医さんに手渡しました。自分を抱きかかえてくれた存在の体温が離れてしまいました。それが名残惜しくてぼくは目をうっすら開けました。今まで自分を包んでくれた人間は誰だろう、と……。」

 ワシボンポケモンセンターへ運ばれたときのように目を開けた。 

「それがぼくたちのご主人さま、ノエルさまです。ご主人さまは女医にぼくを助けるように必死でお願いしていました。ぼくは『ああ、この人がぼくを助けてくれたんだ。』と安心し、意識を失いました。ご主人さまは命の恩人です。この恩に報いるため……そして強くなりたいというぼく自身の願いのため、これから一生懸命がんばろうと思います!」 

 きりっとした表情でワシボンは空を見る。ふと両脇を見ると、ツタージャモグリューは泣いていた。

「きみそんなことがあったのか~~~!?」
「辛かっただべ~~~~~~?」

 ワシボンはぎょっとした。驚くワシボンを気にせず2匹は号泣しながらワシボンに抱きついた。

「ごめんよ~~~!そんなこと知らずにきつく当たっちゃって!」
「オラたちがいるべ~~~!おまえはもう1匹じゃないべ~~~!」
「は、はあ……。」

 ワシボンは目をぱちぱちした。身動きが取れず、2匹の涙と鼻水で羽毛が汚れていく。2匹の厚意を無碍(むげ)にするわけにもいかず、ワシボンはされるがままになった。

 
***

f:id:mirai_kyoushi:20190610014245j:plain f:id:mirai_kyoushi:20190610014153j:plain

「いや~。思わずベルと長電話しちゃったわ~……ってあら?」 

 ノエルが広場に戻ると、人々の視線が一つのベンチに集中していた。そこではツタージャモグリューワシボンを抱きしめてわんわん泣いていた。ポケモン3匹がベンチにぽつんと座っているので余計目立つ。

「なにがあったのかしら……?」

 ノエルが3匹に近づくと、ツタージャモグリューが我先にとノエルに駆け寄り、ワシボンの過去を語った。しかしノエルはポケモンの言葉がわからない。泣き叫ぶ2匹とおろおろするワシボンを見て、ノエルは首をかしげた。

 

にほんブログ村 ゲームブログ ポケモンGO・ポケモン(ゲーム)へ
にほんブログ村