ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第17.5話 金髪くせっけ少年 1

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 オレは机の上にあるペンケースを思いっきり投げた。ペンケースはドアにぶつかり、中に入っていた鉛筆はあたりに飛び散った。

「なんだってんだよー!」

 オレは椅子にドカッと座った。ヒカリはコウキに連れてかれちまった。たったそれだけのことなのにムカつく。今までだって似たようなことはあった。女友達と遊ぶ約束をしていたからオレと遊べなかったこともある。2人で話している最中に男友達がヒカリに勉強を教えてもらいにきたこともある。だけどあいつは…コウキだけはいやだ!

 昨日知り合ったばかりなのにヒカリに馴れ馴れしくしやがる。何様だよ、あいつ。あいつの全てが気に入らない。なにもかも気に食わない。なんだかくやしい。コウキにはなにひとつかなわない気がした。勉強も、お金の数も、ポケモンバトルも。高級フランス料理店?ふざけんな!いくらすんだよ?オレ今3,000円しか持ってねーぞ。ヒカリがあいつに取られると思うと胸がムカムカして頭がカッとなる。なんなんだよ?この気持ち。

「おい、ジュン。拾ってきてやったぞ」

 こげ茶色の角刈り頭のクラスメイトがペンケースを机の上に置いた。テストで悪い点取ったときも慰めてくれたやつだ。名前はなんだったっけ?そいつは心配そうにオレを見ていた。そいつの顔を見て、オレはペンケースを投げたことを後悔した。こんなにいいやつに迷惑かけちまうなんて……。

「サンキューな。ええっと……」
「ナオトだよ」
「サンキュー、ナオト」

 オレは口元を緩めた。ちゃんと笑えたかな、オレ?気分転換に冒険ノートを広げた。昨日取ったノートだ。コウキを見返してやりたい。そしてなにより、ヒカリにほめられたい。オレだってやればできるんだ。いつかポケモンバトルでヒカリとコウキに勝ってやる。オレは改めて鉛筆を握りノートの最初のページを開いた。まずはテストで100点取れるようにがんばるか。


モンスターボールでつかまえたポケモンは同時に6匹持ち歩ける。そうしてつかまえたポケモンを育ててたたかわせる人をポケモントレーナーと呼ぶ。トレーナーにはさまざまなしゅるいがあるが、多くのトレーナーの目ひょうはかく地のポケモンジムにいる強いトレーナーに勝つことだ!]

 

 うん。これは基本だな。これは誰でも知ってることだな。先生が口走ったことをメモったけど漢字あんま書けねーから所々ひらがなと漢字が混じって読みづらくなっちまった。次はポケモンのタイプと相性が書かれているページを開いた。ここは黒板に書かれたものを写したから漢字はバッチリだ。ここらへんももう覚えたけど復習するか。

 

[全てのポケモンにはタイプ(属性)がある。タイプは全部で17しゅるいある。炎、水、草、電気、氷、格闘、毒、岩、地面、飛行、エスパー、虫、ゴースト、悪、鋼、ノーマル。とくにこれといった属性がない場合、そのポケモンはノーマル(無属性)だ。どのタイプにも得意とするタイプと、弱点となるタイプがある。草は炎に弱い。炎は水に弱い。水は草に弱い。ノーマルに弱いタイプはいないが、そのかわりノーマルの弱点は格闘だけだ。]

 

 ……ノーマルタイプは特別なんだな。あとで一匹捕まえようかな。オレのナエトルは草タイプか。ヒカリのポッチャマには勝てるけど、コウキのヒコザルには負けちまうな。

 

[タイプはポケモンとわざの両方にある。ポケモンが自分のタイプと同じタイプの技を使うと、相手に与えるダメージが1.5倍になる。さらに相手のポケモンのタイプが自分のポケモンの技のタイプを弱点とする場合、ダメージは2倍になる。]

 

 ということはナエトルポッチャマに『葉っぱカッター』を使えばダメージが……ええっと……3倍?4倍?……1.5+1.5=3.0だから1.5+2.0は……そうだ!3.5倍になる!これであの生意気なポッチャマもイチコロだぜ☆…って違う!たしかにヒカリのポッチャマは生意気だがコウキのほうがムカつくやつだ!そのうちヒコザルが弱点とする水タイプのポケモンを捕まえなきゃいけねーな。お次はポケモンの状態異常を覚えるか。

「なあ、ジュン」

 ナオトが話しかけてきた。なんだよ、人が真面目に勉強してるときに……。でもこいつにはペンケースを拾ってもらった恩もあるし、まあいっか。

「なんだ?」
「さっきの女の子ジュンの知り合いか?」

 胸がチクッとした。さっきのコウキとのやりとりを思い出しちまったじゃねーか。

「……オレの幼なじみだよ。家が近所でさ、家族同然に育ったんだ」

 オレとヒカリの付き合いは誰よりも長い。ヒカリとオレは母親同士仲が良かったから、赤ん坊のときから一緒だった。町の他のやつらと友達になったのは幼稚園に入ってからだ。

「かわいいな~。ガールフレンドじゃないのか?」
「いや、ヒカリはオレの妹だ」
「はっきり言うなあ……」

 ヒカリはオレの幼なじみで、親友で、妹だ。血は繋がってないけど家族だ。今までそうだったし、これからだってそうだろ?オレたちはず~~っと仲良し兄妹でいるんだ。昨日ポッチャマナエトルがオレたちの仲間に加わった。これからも色んなポケモンがオレたちの仲間に加わるだろうけど、オレたちはいつまでも仲良しでいるんだ。

「じゃあヒカリはコウキとできてるのか?」

 ナオトがまた質問をしてきた。できてる?なんだそりゃ。

「できてるってなにがだよ?」
「つきあってるかってことだよ」
「コウキとは昨日会ったばかりだぞ?オレとヒカリのつきあいのほうが長いっつーの」
「そういう意味じゃなくて…」

 ナオトは肩をすくめた。オレ、なにか悪いことでも言ったか?さっきから話が通じてないような…。

「だ~か~ら~、ヒカリはコウキのガールフレンドなのか?」
「はあっ??」

 ヒカリがコウキのガールフレンドだぁ?ねーよ。……ぜっったいにありえねー!なったとしても全力で止めてやる!ポケモンを使ってでも!………ヒカリとコウキが恋人になった姿を想像してみた。ヒカリの腰に手を回すコウキ。………てめぇ、コウキ。その汚ない手どけろや。

「んなわけねーだろ!オレもヒカリもあいつとは昨日会ったばかりなんだぞ?それにヒカリがあんなヘラヘラした男の恋人になるわけねーだろ!」
「なによその言い方!

 斜め後ろでイスが動く音がした。さっきコウキにベタベタしていた女の一人だ。茶色い髪の毛を一つに縛っている。女にしては背が高い。見るからにかわいくねー顔だな。

「コウキくんはヘラヘラしてないわよ!あのヒカリって女のほうが遊んでるんじゃない?」
「なんだと!?」

 オレも立ち上がった。ヒカリのことを悪く言うやつをほっておくわけにはいかない。ヒカリは遊んでなんかいない。まじめに勉強していた。遊んでばかりいたのはオレだ!ヒカリをバカにするやつは誰であろうと許さねー!オレはあの女のところへ向かおうとした。

「やめろよ!ジュン」

 ナオトに左腕をつかまれた。なんだよ。あのブス女を殴ってやろうと思ったのに。

「はなせよ」
「暴力はダメだよ!」

 ヒカリに同じことを言われたことがある。誰かとケンカするたびにヒカリはオレを止めようとする。

「チカサ、言いすぎだよ」
「あの女の子悪い子には見えないよ」

 2人の女がブス女をなだめた。よし、いいぞ。おまえら。もっとやれ。

「どーだか。人を見た目で判断しちゃダメよ」

 こいつそっぽ向きやがった。おまえは見かけも性格も悪そうだな。

「まあまあ、2人とも落ち着いて」

 ナオトがオレとチカサの間に割って入った。本当にこいついいやつだな。まるでヒカリみたいだ。

「ヒカリだっけ?あの子。コウキくんにふさわしいとは思えないけど」

 ちげーよ、バカ。

「ヒカリがコウキにふさわしくないわけじゃねーよ。コウキのほうがヒカリにふさわしくねーんだよ」
「コウキくんをバカにするのっ!?」

 やべえ。つい心の声を外に出しちまった。

「コウキくんはかっこいいし頭もいいしスポーツもできるんだから!ポケモンの知識も豊富。おまけに優しくてお金持ちなのよ!あんたと違ってね!」

 ああん?なんだと?オレはともかくヒカリをなめるなっ!

「ヒカリなんて町一番かわいいって言われてるんだぞ!料理できるしオシャレだし頭だっていいしポケモンにも詳しいんだぞ!しかも市長の孫娘!誰にでも優しいしみんなに好かれてるんだぞ!」
「コウキくんだってオシャレでみんなに好かれてるわよっ!」
「お~ち~つ~い~て~!」

 オレはチカサとにらみあった。こんなやつの顔見ていてもうれしくないけど売られたケンカは買ってやる!ついでに勝ってやる!オレとチカサのにらみあいはどちらかが顔をそらすまで続くと信じていた。

「ヒカリちゃんとコウキくんって似てるね」
「くやしいけどお似合いだよね~」

 沈黙は2人の女によって破られた。さっきチサをなだめていた2人だ。

「お似合いじゃねーよっ!」
「お似合いじゃないわよ!」

 チサとオレの声が重なった。げっ。よりによってこいつと同時に同じこと言っちまうなんて…。

「たしかにお似合いだなー」
「2人とも黒髪だし」
「くやしいな~。コウキにはかなわね~」

 男たちも次々に口にした。な、な、な……。

「つきあってるって言われても納得しちゃうよねー」
「ヒカリちゃんにならコウキくんゆずってもいいかなぁ」

 おいおい。なに言ってんだよ?オレのヒカリがコウキとつきあうわけないだろ!?やばい。なんとかしねーと……!

「に、に、似合わねーよ!コウキは知らねーけどヒカリってけっこうドジなところあるんだぜ?足遅いし運動神経わるいし方向音痴だし恐いものが苦手で・・・」
「少しくらいどんくさいほうがかわいいぞ」
「女の子なら恐いものが苦手で普通だし……」

 男女に反論された。うう、オレはどうすればいいんだ……?

「なんだってんだよー!」

 オレは立ち上がると急いで持ち物をバッグに入れてドアに向かって走った。

「ジュン!どこに行くんだ?」

 わりぃ、ナオト。オレ急いでいるんだ!

「ヒカリとコウキを探しに行くに決まってるじゃねーか!」

 そう答えてオレは廊下を出た。……ん?ストップ!オレはクラスにUターンした。

「ナオト!コトブキシティで一番高いフランス料理店はどこだ?!」

 居場所がわからないと探せねーじゃん!

「コトブキスカイビルだと思う!たしか38階に……」
「サンキュー!」

 オレは廊下を突っ切ってトレーナーズスクールから飛び出した。待っていろよ、ヒカリ。今助けに行くからな…!

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