ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第16話 変人

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 ようやくコトブキシティについた。お腹が空いたけど、お昼を食べるまえにポケモン塾へ寄ることにした。コウキくんのおかげで、わたしたちは確実にポケモン塾に近づいていた。

「この十字路を渡って左に曲がるとポケモン塾、こと、トレーナーズスクールがあります。右側にポケモンセンターがあるのでそれを目印にするとわかりやすいですよ」
「ふ~ん。ありがとう」

 信号が青になる。わたしたちは横断歩道を渡った。ナポレオンとアポロンはわたしとコウキくんの左右に並んで歩いている。ナポレオンは眉を吊り上げて周囲を確認していた。……わたしと同じね。初めて都会に来たんだもの。見るもの聞くものめずらしくて落ち着かないのね。

「あの木造の建物がトレーナーズスクールです……ってあれ?」

 コウキくんの足が止まった。それにならって私とポケモンたちの動きも止まる。道を間違えたわけじゃない。トレーナーズスクールの看板もちゃんとある。問題は建物の横にある街灯にあった。茶色いコートを着た30代くらいの長身の男性が街灯の後ろに隠れている。黒くて細い棒の上にランプがついているエレガントな街灯に、よ。いくら細身の男性だからって街灯に隠れるには無理があるわ。どうみても丸見え。子どものわたしでも隠れきれないのに。

「……怪しい人がいますね」
「う、うん…」

 正直どう対応するべきか迷う。通報すればいいのか無視すればいいのかわからない。コウキくんに話しかけようとしたとき、ナポレオンが鳴いた。

「ポチャ」
「ん?」

 下にいるナポレオンを見たら黒いものを持っていた。これは……手帳?

「落し物ですか?」
「そうみたい」

 私は手帳を開いてみた。

「ちょうどいいですね。警察に届けるついでに通報を……」
「あ!」

 手帳には街灯に隠れている問題のおじさんの写真が貼ってあった。黒髪で前髪が眉上。眉毛は太くてつりあがっている。口元はひらがなの「へ」みたいな形で、眉毛との相乗効果で怒っているように見える。ちょっと堅苦しいな。

「あそこにいるおじさんの写真だ!渡してくるね」
「ええ?」

 コウキくんを置いて私は走った。ナポレオンも私に続く。

「いい子ね、ナポレオン!」
「ポチャ!」

 わたしはナポレオンにウインクした。助かったわ。手帳渡したらさっさとトレーナーズスクールに行こうっと。

「ヒカリさ~ん!待ってくださ~い!」

 コウキくんが慌てて追いかけてきた。でももう遅い。

「おにいさん、落としましたよ」

 話しかけちゃった。おじさんって呼んだら失礼だからおにいさんと呼んだ。

「ナヌー!!」

 おにいさんは驚いて街灯から離れた。そっと話しかけたほうがよかったかしら?

「なぜ私が国際警察の人間だとわかってしまったのだ!?」

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 おにいさんはなぜか動揺していた。あ、これ警察手帳だったんだ。初めて見たわ。

「えー。普通に話しかけただけなのにー」

 コウキくんはいつもより低い声で答えた。呆れているのかしら?なんだかわたしに話しかけるときと違って冷たいような……。

「……へっ?普通に話しかけただけ?」

 おにいさんは目をパチクリさせた。

「いーや。私をただ者ではないと見抜いて話しかけたのだろう?その眼力恐るべし……!」
「は、はあ…」

 勘違いしてるみたいだけど…ま、いいわ。わたしは忘れないうちに手帳を差し出した。

「おにいさん、手帳落としましたよ」
「ややっ。親切なお嬢さんだ。ありがとう。君たち、名前は?」

 あれ?普通、名前を訊くとき自分から名乗るべきだと思うけど……。

「初めまして、おにいさん。わたしはヒカリと申します」
「……こんにちは、おじさん。コウキです。」

 コウキくん!言葉に棘があるよ!!確かに変な人だけど初対面の人に失礼じゃない!?

「少年!おじさんではなくおにいさんと呼びなさい!」

 あ。やっぱり気にしてるんだ。

「レディーに先に名乗らせるなんて……。紳士ならまず自分から名乗るべきですよ、おじさん
「うぐ……す、すまない」

 この2人仲がわるいなぁ…。ふと気になってナポレオンとアポロンを見た。水タイプと炎タイプのポケモンなのに2匹とも仲良く昼寝をしていた。……まさかおじさんと関わりあいたくないからって狸寝入りしてるわけじゃないよね?

「と、とにかく!正体がバレたんだ。自己紹介をさせてもらおう」

 おじさんはせきをついてごまかした。

「私は世界をまたに駆ける国際警察のメンバーである。名前は……いや、君たちにはコードネームを教えよう」

 コードネーム?

「そう。コードネームはハンサム!みんなはそう呼んでいる」
「ぷっ」

 今笑ったのはわたしじゃない。コウキくんだ。

「なにか問題あるかね?」
「いえ。別に」

 コウキくんは目をそらして答えた。ちょっといじわる。

「このシンオウ地方に近頃人のポケモンを奪ったりする悪いやつらがいるらしい。そして私は怪しいやつがいないか探していたのだよ!」
おじさんが一番怪しいですけどね」
「ぷっ」

 今笑ったのはわたしだ。だってコウキくんの言うとおりだもん。街灯のうしろに隠れるなんてまるでストーカーみたい。

「……聞かなかったことにする。君たちも怪しいやつらを見かけたら気をつけてくれ!」

 都合の悪いことは忘れるのが大人なのかしら……?

「それにしてもお嬢さん、手帳を届けてくれてありがとう。親切なお譲さんにはこれをやろう!」

 ハンサムさんはポケットから赤い腕時計みたいなものを取り出した。

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「これは?」
「ポケッチだ。時計だけでなく計算機、メモ、歩数カウンター、ポケモンリストの機能を備えている」

 うわー。便利ー♪

「キャンペーンでもらったがわたしには不要のものだからな。お嬢さんなら使いこなせるだろう」
「ありがとうございます」

 時計持ってなかったから助かるわ。

「ボクにはなにもないんですか」

 痛っ。コウキくーん。口をとがらせないでー。

「こういうときはレディー優先だろう?な~に、町のあちこちにいるピエロの出す問題に答えれば少年ももらえるさ」
「そうですか」

 コウキくんそっけないな。うーん。やっぱりコウキくんも子どもね。

「そこまでいうならかわりにこれをやろう!最近流行のバトルレコーダー!」

 ハンサムさんは反対側のポケットから青いリモコンみたいな機械を取り出した。

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「これを使えばバトルを記録・発表・鑑賞できるぞ!」
「……ありがとうございます」
「うむ!」

 話が一段落したところでハンサムさんは周囲に目を配った。

「……それでお願いだが、もし私を見かけても仕事中だから話しかけないでくれ。…いや、やっぱりさみしいから……じゃなくて怪しいやつを見かけたりなにかあったりしたら声をかけてくれ!さらば!」

 そう言ってハンサムさんは十字路まで走り、曲がり角で消えてしまった。慌ただしい人だなぁ。ジュンを思い出すわ。

「へー。国際警察って大変なんですねー」
「コ、コウキくん……?」

 ハンサムさんがいなくなったのにブラックコウキくんのままだ。

「ヒカリさん」
「はい?」

 いきなり呼ばれたからまぬけな返事をしてしまった。コウキくんはもらったばかりのバトルレコーダーを私に向けた。

「これはヒカリさんに差し上げます」
「えっ?いいの?」

 せっかくハンサムさんからもらったのに。

「ぼくは研究専門ですから。バトルは専門外です」

「そう……?ありがとう」

 わたしはおとなしくバトルレコーダーを受け取った。今のところ使うつもりはないけど。

「疲れましたね。さっさと荷物を置いてお昼にしましょうか」

 さっきまでのブラックさがうそのように、コウキくんは爽やかスマイルを浮かべた。……そうよね。きっとお腹が空いてイライラしたのね。ナポレオンのときと同じよ。お昼ご飯なににしようかなぁ……。

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