ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『白黒遊戯』第12話 恋の多角形

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 サンヨウシティの一角のマンションで、2人の女性がノエルの話を聞いていた。ツタージャはテーブルの上にある花瓶に水をあげていた。ノエルは行儀悪くテーブルに腰掛け、大きなポニーテールをなびかせるとため息をついた。

「カノコに住んでときはデートのはしごで大変でさ~、幼馴染のチェレンに怒られてばっか!カラクサではイケメン電波にナンパされるし、サンヨウでは熱血美少年に追いかけられてイケメン電波に助けられるしわけわかんな~い」
「ええええええええええええええっ!?カノコでは男100人斬りを達成してでも本命は幼馴染で、カラクサでは熱血美少年に痴漢されかけるもイケメン電波に助けてもらったと思ったら今度は彼に犯されるだなんて刺激的いいいいいいいいい!!」
「タジャ?」
「……え。あたしそんなこと一言も言ってないけど」

 ツタージャは首をかしげたが、ノエルはマコモの勘違いに引いた。聞き間違いだろうが妄想だろうが興奮しているマコモは異常だった。彼女の妹でもあり助手でもあるショウロは自分の眼鏡を押し上げた。

「いつもの妄想です。気にしないでください」
「きゃあああああああああ♡恋の多角形いいいいいいい♡大好物うううううう♡」 

 ショウロは姉を無視して話を変えた。 

「姉がご迷惑をかけたようですし今夜はここで泊まっていきませんか?もちろんムンナを助けてるのを手伝ってくれたベルさんも歓迎です」
「そうさせてもらおっかな。ベル呼んでくるね」

 マコモは2人の会話を聞かず妄想を垂れ流していた。

「そしたらノエルちゃんがチェレンにお仕置きされて……♡」

 出かけようとしたノエルをショウロは数秒引きとめた。

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「あとライブキャスターの友達手帳を差し上げますからベルさんとチェレンさんの友達コードでも登録してください」
「サンキュー♪」

 振り向きざまに手帳を受け取るとノエルはウインクした。

「でも実はベルちゃんはチェレンが好きで~、本性はヤンデレで……♡」 

 あいにくマコモは妄想したままだった。マコモの髪はスミレ色、ショウロの髪は茶色。マコモはストレートでショウロはツインテール。姉は妄想癖があって妹は真面目。眼鏡をかけていること以外は似ていない姉妹だった。

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***

 

 通りに出るなりノエルは辺りを見渡した。熱血美少年とイケメン電波と若い男がいないのを確認すると彼女は大あくびをした。

「あ~~、眠っ。今日は色んなことがあったから疲れた~」
「タ~~ジャ」 

 ノエルに釣られてツタージャもあくびをした。

「さっさとベルを迎えに行って……ん?」

 ふとジムがある方向を見ると、頭が堅そうな少年がジムから出てきた。そこでノエルは通るつもりのなかった道をあえて選んだ。

「チェレ~~~~~ン♡」
「ん?ノエ……うわっ!?」

 彼が気づいたときには既に遅し。小悪魔が彼にダイブしていた。ツタージャは悲鳴を上げた。

「タジャーーーー!?」
「や~ん♡チェレン勝ったの~?」
「あ、ああ……」

 抱きついてきたノエルをどうすればわからずチェレンは固まっている。ノエルはチェレンにすりすりしながら訊ねた。

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「すっご~い!誰と戦ったの~?」
「コ、コーン」
「大変だったでしょ~?」
「いや……夢の跡地にいる女の子から草ポケモンもらったからそんなに……」
「ふ~~ん?」
「……いてっ!」

 チェレンは左脚に痛みを感じた。視線を下げるとツタージャチェレンの脚をガジガジ噛むのが見えた。チェレンは足の痛みとノエルの柔らかい体に赤くなりながら、話が微妙に噛み合ってないことに気がついた。

「……ノエル。君は誰と戦った?」
「ポッド。熱血でめんどくさかった」
「まさかツタージャで戦ってないよね?」
「あたしツタージャしか持ってないわよ。苦戦したわ~」
「タジャタジャタジャ~」

 チェレンはノエルを自分からそっと引き離した。ツタージャはノエルが離れたのを見るとチェレンを噛むのをやめた。

「君は……君は炎タイプ相手に草タイプで挑んだのか?!」
「うん」
焼身自殺かっ!いくら君でもポケモンのタイプ相性くらいは把握してるだろう?!」
「もちろんよ~。確かグータイプはチョキタイプに強くって~、チョキタイプはパータイプに強くって~、パータイプはグータイプに強いのよね?」
「Rock, Paper, Scissor(ジャンケン)かよっ!」

 チェレンはビシッとツッコミを入れた。ノエルは甘ったるい声で言い訳をした。

「当たらからずも遠からずでしょ~?」
「その回答は0点じゃないがどれが草で炎で水か区別つかないだろう……」

 チェレンはこめかみをヒクヒクさせた。ノエルにチョップをかます代わりに彼はまくしたてた。

「トレーナーならポケモンが必要以上に苦しまないようにするべきだろう!!」
「オ、オッケーオッケー。今度から気をつけるわ……」

 ノエルが言葉を終えると同時にジムからバタバタと音が聞こえた。ノエルは一瞬気まずい顔をした。 

「げっ」
「タジャー!」

 ツタージャに誘われるがまま彼女は建物の隙間に入り込んだ。チェレンは茫然と立っていた。するとジムの扉が勢いよく開き、燃えるような髪の少年が現れた。

「うおおおおおおおっ!今ノエルの声がしたああああああっ!」

 やたら絆創膏が貼ってある熱血少年は獣のように吠えると階段を高速で降り、チェレンにぶつかりそうな勢いで話しかけてきた。

「そこの男!ここらへんで茶髪のポニーテールで貧乳だけどナイスプリケツなエロい女を見かけなかったか?!」

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 目を輝かせながら両手の拳を握り、ポッドはよだれを垂らした。その発言と状況からチェレンはポッドがノエルのことを探しているとすぐわかった。

「いえ……見かけませんでした」
「うおおおおおおおおおおおっ!ノエルううううううううううううううううう!どこに行ったあああああああああ?」

 ポッドとノエルの間になにがあったかだいたい察したチェレンはとっさに嘘をついた。吠えるポッドを見守るチェレンは動けずにいた。どうすればいいか悩んだがその悩みは幸い杞憂だった。

「ああ、よかった。まだ近くにいて」

 先ほどチェレンが一戦を交えたばかりのコーンがポッドを迎えにきた。

「まったく……フランべをしている最中に走り出すなんて危ないじゃないですか!コーンは兄弟として恥ずかしいです」

 コーンはポッドを押さえつけるがポッドは抵抗した。

「女あああああああああああ!あの女の声が聞こえたああああああああああ!」
「幻聴じゃないですか?換気扇(かんきせん)をつけたらこんなことになるとは思いませんでした」
「そんなことねえ!匂いがする!」
「しませんよ。……フェロモンですか?」

 コーンはポッドを羽交い絞めにするが上手くジムまで引きずれない。

「デント!聞こえますかデント!手を貸してください!」
「今デザートを運んでるから待って~」

 しばらくするとデントも来た。彼はチェレンにお辞儀をすると、コーンと一緒にポッドを退場させた。扉が閉まって10秒後、ノエルはおずおずと戻ってきた。

「あいつらもう来ないよね?……あ~、ヒヤヒヤした」
「タージャ!」

 安堵するノエルにぷりぷり怒るツタージャチェレンはじと目でノエルを見た。

「どうせ君がいつものように誘惑したんだろう」
「今回はなにもしてないってば!」
「タジャ~……!」

 ツタージャは牙を剥いてにしてジムの扉を見ていた。自分のときより怒っているツタージャを見てチェレンはノエルを信じることにした。ノエルは空気を変えようとチェレンの腕にくっついた。

「さっきは庇ってくれてありがと♡」
「君らしくないな……。あのNという青年のときと同じように僕を彼氏に見立てればよかったじゃないか」
「あー……そのことなんだけど……」

 ノエルは頬をぽりぽりかいた。

「そのNを彼氏に見たてたらポッドに追いかけられちゃって……」

 チェレンの顔色が変わった。彼はノエルの肩を掴み声を荒げた。

「あんな得体の知れない男に頼ったのか?!危ないじゃないか!あいつの目を見たか?……あれは人を見下している奴の目だ。言動もおかしい……。薬をやっていてもおかしくないんだぞ!」
「ご、ごめん。軽率だったわ……」

 今度はふざけずに素直に謝った。幼馴染の尋常でない様子にノエルは反省した。

「……チェレンは優しいわね。2番道路ではブランケットまでくれたし……」
「……ブランケット?」

 身に覚えのない話にチェレンはきょとんとした。

「隠さなくてもいいわよ。2番道路で野生のポケモンたちと昼寝しているあたしにブランケットをプレゼントしてくれたでしょ?マカロン型のケースつきだなんてチェレンにしてはセンスいいじゃない」
「だから野生ポケモンと遭遇しなかったのか!」

 2番道路での出来事を思い出す2人だがまた話が噛み合わなくなった。チェレンの疑問は解けたがノエルに疑問が生まれた。

「え?チェレンじゃないの?マカロンケースの匂いを嗅いだツタージャがぷんぷん怒ってたからチェレンからのプレゼントだと思った」

 だってチェレンってツタージャに嫌われてるっぽいしとノエルは付け加える。チェレンは複雑そうにツタージャを見る。ツタージャはノエルのバッグからマカロンケースを取り出してチェレンに見せた。

「タジャ!」

 これ、と見せたあとツタージャはマカロンケースをぎゅっと抱きしめた。プレゼントしてくれた相手は気に入らないがマカロンケース付ブランケットは気に入ったようだ。ノエルとチェレンは顔を見合わせた。

「じゃ誰がプレゼントしてくれたんだろ。ベル?」
「さあ……」

 2人は兄妹のように同時に肩をすくめた。

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