ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第15話 知る

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―ガララララララッ。

 キャリーカートの音が林道に響く。わたしはあいかわらず202番道路にいる。気絶するまえと違うのはコウキがいるところ。わたしは今、コウキくんの好意に甘えてカートをひいてもらっている。それにしても誰かに見られているような………気のせいかしら?

 まあ、なにかあってもコウキくんが守ってくれるから大丈夫かな。実際に戦うのはヒコザルかもしれないけど。ナポレオンもいるし大丈夫よね。ヒコザルは私たちを守るため手前を歩いている。なのにナポレオンときたらちゃっかりカートの上に座ってる。いくら歩くのが苦手だからって……。あっ!今あくびした!もう……。

ムックルの愛称は決まりましたか?」

 カートをひきながらコウキくんは訊ねてきた。えらいなぁ、コウキくん。ナポレオンも乗ってるから重いはずなのに嫌な顔を一つもしないで。

「ええ」

 わたしはバッグからムックルの入ったボールを取り出した。ムックルをボールから出すため、真ん中にある開閉スイッチを押した。

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「出ておいで」

―ボムッ。

「クルー!」

 ムックルは翼をバサバサ羽ばたかせながら私の肩にとまった。

「こんにちは、ムックル
「クルックー」

 ムックルは元気な声で挨拶を返した。わたしが捕まえたムックルはオス。性格は陽気。さっき図鑑で調べたから間違いない。

「わたしはヒカリ。あなたのことクルルって呼んでいい?」
「クルッ!」

 クルルは右翼を挙げた。OKって言ってるみたい。

「さっきは攻撃してごめんね。この子はポッチャマのナポレオン」
「ポチャッ?」

 寝ぼけ眼でナポレオンは私の肩にとまっているクルル♪を見た。さっきまで寝てたわね……。

「クルルですか。かわいらしいお名前ですね。さすがヒカリさん!」
「クルー♪」
「アハハ。ありがとう。クルルも気に入ったみたい」

 クルルは私の肩から離れた。喜んでいるのか辺りを飛び回っている。

「あ、そういえばボクもヒカリさんを見習ってヒコザルに名前を付けました」
「本当!?」

 ちょっと意外。コウキくん真面目だから愛称付けないと思った。

「はい。アポロンと名付けました」
「ウキッ」

 わたしはクスッと笑った。きっとギリシャ神話の太陽神アポロンから取ったんだ。さすがロマンチスト。

ギリシャ神話から名付けるなんてコウキくんらしいね」
「恐縮です」

 そんなこんなで話しているうちに町が見えてきた。景色は緑から灰色へ移り変わった。自然の静けさは都会の騒音でかき消された。まもなくコトブキシティ。ちょっとドキドキしてきた。わたし、華麗に都会デビューできるかしら?

 

***

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 コトブキシティは一言でいうとコンクリートジャングルだった。ビルはあるしマンションもあるし高い建物がたくさんある。それ以外のお店はカラフルで看板を見ただけで目がチカチカする。人工的な色。不自然な色。建物にやさしい色を使うフタバタウンとは大違いだ。あちこちから足音が、人の声が、音楽が、聞こえる。不安だけどワクワクする。初めて見る世界。

「すっご~い!大きい建物がたくさんある!」

 思わず辺りをキョロキョロ見渡した。田舎者丸出しなのがバレちゃうかもしれないけど体が勝手に動く。周りにあるものは全てこの目で刻みたい。そんな気分だった。

「ハハハハ。コトブキシティは近代的な町ですからね。ITが発達してるんです。もっとも、トバリシティのほうがビルは多いみたいですけど」

 うそ!じゃあこれはまだ序の口なの!?

「この町以上に都会なところが他にもあるの!?」
「はい。東のほうに」

 えっ~と東ってどっちだったかしら?北と南ならわかるんだけど……。

「ただでさえこの町で迷いそうなのに……」

 わたしはため息をついた。これじゃあジュンを見つけられるかどうかもわからない。ジュンもわたしと同じように初めての都会にワクワクしてるはず。きっとこの町の隅々まで回ったあと次の町へ行きそうだけど……。

「安心してください。そのためにボクがいるんですから。つい最近までこの町に住んでいたので道案内はお任せください」
「えぇっ!?」

 じゃあやっぱりコウキくんは都会の男の子だったんだ!マサゴタウン出身じゃなかったんだ。

「あれ?言ってませんでしたか?ボクはコトブキシティ出身なんです。ナナカマド博士マサゴタウンに戻ってきたので引っ越したんです」
「は、初耳だわ…」

 うぅ……コウキくんと会ってからペースが乱されっぱなし。これはポケモンと出会ったせい?それとも都会のせい?まるで急に運命の歯車が動き出したみたい。

「言い忘れてすみません。お詫びはランチで後ほど…。ヒカリさんにボクのこと知ってもらいたいですし、ボクもヒカリさんのこともっと知りたいです」

―ドキン。

 胸がきゅんとした。嬉しい。フタバタウンでは町中の人が知り合いだったからそんなこと言われたことなかった。

「ポチャポチャーッ!」

 私はぎょっとして振り返った。ナポレオンがカートの上でバタバタしていた。せっかくのムードが台無し。もしかしてわざと邪魔したのかしら?

「ああ、すみません。お腹が空いたんですね」
「ポチャ!」

 ナポレオンは腕を組んで顔を横に向けた。ヒコザル……もとい、アポロンはコウキくんの肩に乗ったままナポレオンをなだめていた。

「ウキキキキキッツ。ウキッ」
「もうしばらく我慢してください。これからトレーナーズスクールに行きますから。そこで荷物を置いたあとご飯を食べに行きましょう」
「ポチャ~」

 ナポレオンはまだムスッとしている。わたしもお腹が減ってきたし、しかたないか。わたしは数歩下がって、ナポレオンの前でしゃがんだ。

「ごめんね、ナポレオン。もうちょっとだけ我慢して、ね?」

 両手を合わせて謝った。ポッチャマはプライドの高いポケモンだからトレーナーが下手に出るしかない。コウキくんとアポロンの前だ。恥ずかしくないといえば嘘になる。でもわたしはまだトレーナーとして未熟だもの。これからはもっとしっかりしなきゃ。

「……」

 ナポレオンはじっとわたしを見ている。まるでわたしを試しているように。

「ポチャッ」

 ナポレオンはカートから飛び降りて歩き始めた。わたしたちより前を出たあと振り返った。

「ポチャ、ポチャポチャ?」

 もしかして「で、トレーナーズスクールってどこにあるんだ?」と、言ったのかしら。

「まっすぐ進んで曲がり角を左に行ったところにあります」

 答えを知らないわたしのかわりにコウキくんが答えた。わたしの方向音痴もいつか直さなきゃ。

「ポチャッ」

 ナポレオンは再び歩き始めた。それにわたしとコウキくんとアポロンが続く。まだ旅は始まったばっかりだ。あせらずじっくり味わおう。ジュンにもそれが理解できますように。

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