ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『白黒遊戯』第10話 親切

 (はぁ……はぁ……はぁ……)

 少女はがむしゃらに走っていた。まるで胸に爆弾を抱えているかのように。どこに向かっているのかもわからず、直感だけで動いていた。ツタージャは黙ってついてきている。ノエルは走りながら考えた。

(どうして……どうしてこんなにドキドキするの?)
 ノエル・ピースメーカーは緊張したことがない。野生のポケモンに襲われても、学校でテストがあるときも、スポーツの試合があるときも緊張しない恐いもの知らずだ。ワクワクすることはあってもドキドキすることはない。彼女が怪力に目覚めるきっかけとなった事件のときも一切恐怖を感じなかった。常に平常心を保っているが故に彼女はいつも退屈していた。数多くの男子とデートしたことはあるが恋したことは一度もない。そんな彼女が突然ドキドキすることになったらどうなるのか? 

(あたし…………病気なのかも……!)

 運動したら心拍数が上がるのは当然だ。だが今の彼女の心拍数は尋常じゃない。そこで彼女は自分の感じる異常なドキドキは病気と結論付けた。どこかに病院はないかと辺りを見回したらある人物が目に入った。髪の毛を膝まで伸ばした白衣の女性だ。医者だろうか?

「すみませ~ん!お医者さんですか~~?」
「えっ?」

 白衣の女性は振り返った。長い髪は揺れ顔が見えた。メガネをかけて花のヘアピンをつけている。

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「あの……あたし……さっきから胸がドキドキして……!」
「あら?アナタもしかしてノエルちゃん?」

 ノエルの言葉はさえぎられた。なぜ初対面の女性が彼女の名前を知っているのだろうか?ノエルがなにか言う前に白衣の女性はノエルの両手を握った。

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「アナタ、アララギ博士の娘でしょう?ヤッホー!はじめまして!アタシはマコモ。残念ながら医者じゃなくて研究家よ」
「へ、へえ~」

 両手は解放された。ノエルは自分の考えを恥じた。あせるあまりマコモを医者と間違えてしまったからだ。

「ちなみに研究しているのはトレーナーについてなの!で、アララギ博士とは大学時代からの友達でね、アナタたちの手助けを頼まれたんだ」
「そ、そうですか……」

 ノエルは苦笑した。マコモが助けてくれるとはアララギ博士から聞いてない。多忙な養母のことだから言い忘れたのだろう。

「写真を見たから一目でアナタだとわかったわ!……アララギ博士言ってたわよ。『わたしには自慢の娘がいる』って!」
「ホ、ホントですか!?」
「ええ!『若いころの自分に似てモテる』って笑ってたわ」

 マコモの言葉を聞いてノエルは嬉しくなった。血が繋がってないとはいえノエルとアララギ博士は親子だ。アララギ博士は昔まだなんの取り得もないノエルを引き取り育ててくれた。仕事で忙しくほとんどかまってもらえなかったが博士には養ってもらった恩がある。スポーツとオシャレにしか能がない自分を誇りに思っていると知り、ノエルは安心した。

「ということで!アタシからのバックアップよ」

 マコモはポケットからケース入りのディスクを取り出しノエルに渡した。

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「これは秘伝マシン01『居合い切り』ね。邪魔な木があったらとりあえずこれで切ってちょうだい。……で、手助けじゃなくてお願いしてもいいかな?」
「あ……はい!もちろんです!」

 世の中はギブ&テイク。ノエルが昔アララギ博士に教わったことだ。男性が女性に貢ぐのは当たり前だけど女性同士だと等価交換が必要だと言っていた。友達なら無償になることもあるが大人になるとそうもいかないらしい。マコモはもじもじしながら言った。

「あのね、実はアタシのムンナが散歩に行って戻ってこないの。たぶん夢の跡地にいると思うんだけど……。何時間か前にベルって子を行かせたんだけどまだ帰ってこないの。心配だから迎えに行ってくれない?」
「えっ……!ベルが!?」

 予想外の名前を聞いてノエルは瞬きした。幼馴染のベルはトラブルに巻き込まれやすい。迷子になったり誘拐されかけたりと1人でいると危ない。ベルの旅に反対した父親の気持ちもわかる。ポケモンがいるから大事には至らないはずだが……。

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「わかりました!ベルとムンナを迎えに行ってきます」
「ああっ……ありがとう!アタシ、ポケモンムンナしかいなくって……。ゲームシンクという機械を動かすためにムンナの出す夢の煙がほしいんだ。いろんなトレーナーのレポートを集められるようになるためお願いね!」

 あたしは走り出した。いつのまにかドキドキは治まっていた。

「行くわよ、ツタージャ!」
「タジャ!」

 ツタージャはガッツポーズをした。後ろからマコモの声が聞こえてきた。

「夢の跡地はサンヨウシティの外れにあるからね~~~~~!右に曲がったあと左に出ると町の外れが見えるはずだから~~~!」

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