ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第13話 自立

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―カーン。カーン。

 教会の鐘が鳴り響く。そう。ここはヨスガシティの大聖堂。ずっとこの瞬間を待っていたわ。白いドレスに身を包んだ私。美しい旋律を紡ぐピアノ。ヴォージンロードを歩く中、様々な思いがこみ上がってきた。お母さん、今まで私を育ててくれてありがとう。ジュンママ、ごめんなさい。やっぱりわたし、ジュンとは結婚できません。さようなら、ワカバタウンの皆さん。わたし、結婚します♡

 祭壇ではタキシードを着たコウキくんと牧師の姿をしたナナカマド博士が待っていた。わたしの後ろには花びらをまきちらしているアキコちゃんがいる。祭壇に着き、コウキくんの隣に並んだら博士が口を開いた。

「その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
「誓います」

 トクントクン。

 私の心臓が高鳴る。いよいよだわ…!

「では誓いのキスを」

 来たーーー!!

 コウキくんは私のベールを上げた。わたしはそっと目をつぶった。コウキくん……!

―バンッ。

異議あり!」

 わたしたちは振り向いた。勢いよく開いた扉から出てきたのはジュンだった。なんのつもり?

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「ヒカリ!だまされるな!そいつは女たらしだ!きっと愛人が何人もいるに違いない!」
「はぁ?」

 わたしはジト目になった。コウキくんが浮気するわけないじゃない。なに言ってるの?抗議しようとしたらコウキくんが前へ出た。

「よくもボクたちの神聖な結婚式を邪魔しましたね…。あなたにはギロチン処刑ですら生ぬるい。そう簡単には死なせません。地獄の業火でじわじわ苦しみながら堕ちてください!行きなさい、ヒコザル!」

 コウキくんはボールからヒコザルを繰り出した。

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「冥界でハデスの裁きを受けてください!ヒコザル、『火の粉』!」
「ウキキーッ」

 ヒコザルは両手から炎を出してジュンに跳びかかった。えぇ!?丸腰の相手にちょっとやりすぎじゃない?

「おわっと!」

 幸いジュンは間一髪のところで避けた。

「なんだってんだよー!出て来い、ナエトル!」
「ルー」

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 何も知らないナエトルはのんきにボールから出てきた。

「あいつの首を掻き切ってやれ!葉っぱカッター!」
「ルー!」

 コウキくんに向かって高速で葉っぱが飛んできた。キャーッ!私にも当たるー!腕でガードをした瞬間、体がふわっと浮いた気がした。

―カカカカカカッ。
 刃物が硬いものにぶつかる音がした。気づけばわたしはコウキくんにお姫さま抱っこされていた。葉っぱの刃は祭壇の机に刺さっていた。すごい。コウキくんわたしを抱えたまま左に避けたんだっ!

「君たち!ワタシを巻き込むなー!」

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 葉っぱだらけの机から博士が顔を出した。あ、博士いたんだっけ。

「レディーを巻き込むなんてつくづくあなたはヒカリさんにふさわしくありませんね。ヒコザル!そのバカ面の顔をひっかいてやりなさい!」
「させるか!ナエトルヒコザルに『体当たり』!」

 博士が言ったことが聞こえなかったのか、コウキくんとジュンはそれぞれのポケモンに命令した。

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「ウキッ」
「ルー!」

―ガッ。

 2匹のポケモンは取っ組みあった。ナエトルヒコザルの腕を押さえているからヒコザルは『ひっかく』ことも『火の粉』をだすこともできない。

「ヒカリさん、しばらく離れてお待ちください」

 コウキくんはわたしを床に下ろした。

勝利の女神はボクの元にいます!おとなしくやられてください!」
「やられるかよっ!」

 ジュンはコウキくんに向かってパンチした。トレーナー同士も殴りあうの!?このカオスなフィールドのなか私は腕を掴まれた。

「キャアッ!」

 誰!?

「落ち着けヒカリ!俺だ!」
「アキラっ!?」

 わたしの腕を掴んでいるのは初恋の黒髪ショートの美少年、アキラだった。最後に会ったときと同じ姿だ。

「すまない。迎えにくるのが遅れた。俺と一緒に旅に出よう!」
「えぇ!?」

 次から次へと男の子が現れてわけわかんない。ナエトルヒコザルにやられているし、コウキくんはジュンにボコボコにされているしどうすればいいの?

「ポッチャ!ポチャポチャ!」
「ナポレオン!?」

 足元で声がした。これ以上状況がひどくなるはずがないと思ったらひどくなった。私の足元にいたのは白いタキシードを着ているポッチャマだった。え?なにこれ?わたし自分のポケモンにまで求婚されてるの!?

「イヤーーーーーーー!!」

:
:
:
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:
―ピピピピピピピピピッ。

―ガチッ。

 わたしはとっさに目覚まし時計を止めて起き上がった。

「はぁ…はぁ…」

 身体には汗がベットリまとわりついていた。なんていやな夢…!でもよかった。夢で。

「おはよう、ペンちゃん」

 ペンちゃんはアキラからもらったペンギンのぬいぐるみにつけた名前だ。私はいつもペンちゃんを抱いて寝ている。朝起きたら一番最初におはようを言う相手はペンちゃんだった。だけど今回私の腕の中にいたのはペンちゃんではなかった。私が抱いていたのは規則正しく寝息をたてているナポレオンだった。

「キャーーーーーーーーッ!!」

 夢と現実がごっちゃになった私は、今度は現実世界で叫んだ。

 

***

 

[4月3日 日曜日

 今日は色んなことがあったからとても疲れた。まず朝にジュンに着替えしてるところを見られた。もう!最悪!そのあとジュンと一緒に草むらを走っていたらルクシオというポケモンに襲われた。絶対絶命!大ピンチ!だけど白馬の王子さま、コウキくんとヒコザルに助けてもらっちゃった♡しかもそのあとナナカマド博士から初めてのポケモンポッチャマをもらったの!

 午後に博士にお礼をしに行こうとしたらジュンにシンジ湖まで強制連行された。そこで幻のポケモンと思わしき不思議な光を見たけど捕まえられなかった。諦めて博士の研究所に行ったら今度はポケモン図鑑を渡された。博士のためにシンオウ地方に住む全ポケモンのデータを集めるため、わたしは旅に出ることになった。

 夕方は具合が悪くなったからコウキくんの家で休んだの。その家がまた素敵な家で思わずコウキくんとのお付き合いを真剣に考えた。しかもコウキくんの妹のアキコちゃんってすっごくかわいいの!そのあとわたしの家までコウキくんに送ってもらい、ママに旅に出ることを伝えた。明日の旅立ちが楽しみ♡]

 

―パタンッ。

 わたしは日記を閉じた。そうだった。今日は故郷から旅立つ記念すべき日だった。きっと昨日色々あって疲れたからあんな夢見たのね。まったく。2日連続で朝に叫んじゃったじゃない。

 ふぅ。気持ちを切り替えて自分のファッションチェックをした。首元には桃色のスカーフ。胸元に白い当て布がついた黒いノースリーブのギザギザタンクトップ。プリーツのついたピンク色のミニスカートと黒いオーバーニーソックスから生まれる絶対領域

 ………だいじょうぶ。イケてるわ、わたし!これなら絶対田舎の人に見えない。あとは髪型だけ。わたしは上の髪をつかんでバレッタで止めた。下の髪の一部を取り真ん中で分けて前へ持っていき、左右を黄色いバレッタで留めた。そして最後の仕上げに白いニット帽を被る。よし!完璧♪

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「あら。おはようヒカリ。悲鳴が聞こえたけどどうしたの?」

 うう……。いいよね、ママは。ママにはバカな幼なじみもいじっぱりのポケモンもいないもん。

「聞いてよママ!ナポレオンったらわたしのペンちゃんをゴミ箱に入れたのよ!」
「まあ。きっとペンちゃんに焼きもち焼いたのね」

 え?

「でもナポレオンを抱っこしようとしたら暴れるんだもん」
「素直になれないだけよ。ねえ、ナポレオン」

 ナポレオンはぷいっと横を向いた。

「ほら、照れてるじゃない」
「ポチャァ?」

 ナポレオンは「あぁん?」とでも言いたそうにママを睨みつけた。まるで不良みたい。

「まあまあ、朝ごはん食べましょう。今日は特別な日なんだから」

 

***

 

―ガラガラガラ。

 私はキャリーバッグをひいていた。ママは町の入り口まで送ると言って私のスポーツバッグを持っていた。これからは野宿だってありえる。念のためにテントやら寝袋やら詰め込んだら荷物が多くなってしまった。

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 ポッチャマはボールに収めた。だってポケモンはめずらしいからボールから出しておくと町中の子どもにもみくちゃにされそうだもん。

「ん?」

 ワカバタウンの入り口には人だかりができていた。どうしたのかしら。

「ヒカリー!見送りに来たよー!」
「旅に出るってほんとー?」
「行かないでくれ~ヒカリちゃ~ん」

 わあ!?村中の人たちが集まってる!わたしはママを見た。

「うふふ。昨夜みんなに知らせておいたの。驚いた?」

 うわ~。月曜日なのに私を見送りに来てくれるなんてみんなひまなんだな~。

「おはよう、みんな。見送りに来てくれてありがとう!」

 わたしの一言でみんなはどよめいた。

「やっぱり本当に行っちゃうの!?」
「さみしいー」
「いつ帰ってくるのー?」
「彼氏できたら紹介して~♪」

 女の子から友好的な言葉が聞こえる一方男の子からは悲痛な叫びも聞こえてきた。

「村一番のかわいこちゃんがー!」
「都会の男に騙されるなー!」
「ジュンとだけは結ばれるなよー!」

 なっ…!最後の一言にはカチンときた。

「誰がジュンと結婚するもんですかー!!」

 みんなの間にどっと笑いが広がった。からかわないでよ!確かに昔ジュンと恋のおまじないしちゃったけどその呪いから逃れるために旅に出るんだから!

「いや~。ヒカリも大きくなったな~」
「ジュンもまだいたら祝ってやったのに」
「町がさみしくなるね~」

 子どもたちと比べて大人たちは余裕がった。これが年季の差かしら。ママはまだクスクス笑っていた。

「あなたがいないときはね、ジュンくんのママと色々お話してるのよ」

 昔からわたしがジュンと遊ぶたびにお話してたんだ。どんなこと話してるんだろう。

「といってもいつもあなたたちのことなんだけど」

 わたしたちのこと話してなにが楽しいかしら?もっと別のこと話せばいいのに。テレビとかお料理とか。

「他に話すことないの?」
「共通の話題だもの。……ヒカリ。いい?ポケモンには優しく、どこまでも優しくしてあげてね。あなたのポケモンはあなたのためにがんばるんだから!」
「うん!」

 愛情たっぷり育てるわ。

「ヒカリ行ってらっしゃい!冒険の旅楽しんできて!」

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