ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『白黒遊戯』第8話 誤解

f:id:mirai_kyoushi:20190531201520j:plain

「くっ……!」
「タジャ……!」」

 ツタージャは辛そうに息をあげている。ノエルのポケモン図鑑は鳴りっぱなしだ。ツタージャのHPが3分の1をきったため緊急信号を発しているからだ。

「イヤッホーーーー!番号ゲットまで目前だああああああああああ!!」

f:id:mirai_kyoushi:20190531201443j:plain

 勝利が近いポッドは喜んでいる。バオップのHPはまだ半分以上も残っている。バオップの『焼き尽くす』によりツタージャは木の実を焼かれ大ダメージを受けてしまった。おいしい水も傷薬も使い切ってしまったので回復する手立てもない。特性『新緑 』により草タイプの攻撃力は上がっているがもともとバオップには草タイプの技はあまり効かない。

「バオ~」

 バオップはニヤニヤ笑っている。距離を取り『つるのムチ』で攻撃を仕掛けたが大したダメージは与えられなかった。バオップの攻撃を避けるのに精一杯であまり反撃できなかった。直撃は 避けていたもののツタージャの体力に限界が迫りつつある。ノエルは深呼吸をした。

(こうなったらイチかバチか……!)

「『つるのムチ』!」

 ツタージャの体がほのかに光る。

「オレのポケモンにそんなの効くかよ!」

 ところがツタージャが繰り出したのはつるではなく葉だった。しっぽの鱗が何枚か剥がれ葉へと変化した。何枚もの葉は回転を加えられバオップに襲いかかる。

「なにぃっ!?」
「えっ!?」

 ノエルも3つ子もバオップも驚く。最初にこの技の正体を見抜いたのはデントだった。

「この技は……『グラスミキサー』だ!」
「ええっ!?」

 1人驚いたままのコーンを無視しポッドはバオップに指示を出す。

「こんなの焼き尽くすまでもないぜ!」
「バオッ!」

 バオップは『乱れ引っ掻き』で葉を撃ち落とした。視界が開けたときツタージャはいなくなっていった。

「なにいいいい!?どこだーーー?!」
「教えない!」

―ヒュルルルルルルル。

 岩陰から蔓が伸びる。『つるのムチ』で拘束されたバオップツタージャは思いっきり『体当たり』をした。

f:id:mirai_kyoushi:20190531200039j:plain

「タジャーー!!」
「バオッ……!?」

  不意打ちを受けたバオップは地面に転がった。立ち上がろうとしたが3秒後には力尽きた。奇跡的に『体当たり』が急所に当たったのだ。ツタージャはフラフラしながらもノエルにウインクした。

「タージャ♪」

 その場にいたトレーナーたちは唖然としていた。コーンはあわてて判定をした。

「……バオップ、戦闘不能。よって勝者はツタージャとノエル・ピースメーカーとします!」
「なあにいいいいいいいいいいいい!!」

f:id:mirai_kyoushi:20190531200438j:plain

ツタージャ!」

 ノエルは倒れそうになるツタージャを受け止めた。

「ツタ……タ……」
ツタージャ、ありがとう……!」

 ノエルはツタージャをぎゅっと抱きしめる。ジム戦に勝ったことよりも、ポッドに番号を教えずにすんだことよりも、ツタージャが自分のためにがんばってくれたことが嬉しかったのだ。

 

***

 

「いや~ごめんね。こんなことになって」

 デントは空のコップに水をそそぐ。奥の間にはデントとノエルとツタージャしかいない。バトルで負けノエルの番号をもらいそこねたポッドは落ち込んでしまったのだ。最後のセリフは「燃 え 尽 き た !」だった。コーンは別室でポッドを落ち着かせるため付き添っている。デントはノエルと接しているうちに打ち解けたのかタメ口になっている。

「別にいいけど……」

 ノエルとツタージャはサービスでもらったショートケーキを頬張る。1人と1匹は早めのデザートにありついていた。ツタージャはデントが持ってきたおいしい水で回復済みだ。

「いつもはそんなに興奮してないんだけど……。初めて恋したからどう接すればいいかわからなかったみたい」
「へえ~」

 ノエルは興味なさそうにイチゴを食べた。

「タジャ!」

 ツタージャはそっぽをむいた。どんな理由であれノエルに迫ったポッドが許せないのだろう。デントは頭を下げた。

「……と、いうわけで 不束者ですがポッドをよろしくおねがいします」
「却下」
「タジャー!」

 ツタージャは手をクロスさせて× ( バツ ) を表した。ノエルは気だるげにデントに訊ねた。

「ところでなんであんたたち3人ともジムリーダーなの?」

「ぼくたちはですね、どうして3人いるかと言いますと……」

f:id:mirai_kyoushi:20190531201618j:plain

「それはああああああああああ!オレたち3人はあああああああああああ!相手があああああ最初に選んだああああああああ!ポケモンのタイプに合わせてええええええええ!誰が戦うかあああああああああ!決めるからだああああああああっ!」

「ひっ!?」

 勢いよく扉が開いた。バトルには負けたものの恋は諦めていないポッドが雄叫びをあげた。ノエルは驚いて椅子から転げ落ちそうになった。そこへモンブランならぬコーンがポッドを抑えながら説明した。

 「あなたが最初に選んだパートナーはツタージャ。そしてポッドが選んだ最初の恋のお相手があなた。ポッドの人生のパートナーとしてこれからよろしくお願いします。」

「却下」
「タジャー!」

 ツタージャは手をクロスさせて× ( バツ ) を表した。

 

***

 

 ノエルはサンヨウジムを出て早々目立つはめになってしまった。原因は3つ子がそろって見送りに来たせいだ。

「うおおおおおおおおおおおおお!女あああああああああああああ!いつでも来てくれええええええええええ!!待ってるからなあああああああああ!!」
「うざっ」
「……タジャッ」

 ノエルとツタージャは嫌悪感すら隠そうとしなかった。隠そうが隠すまいがどうせポッドの反応は変わらない。

「またなあああああああああああ!プリケツーーーーーーーーーー!!」

f:id:mirai_kyoushi:20190603015419j:plain

「プリケツ言うな!」
「タジャー!」

 通りすがりの人たちがなんだなんだとノエルたちを見る。 羞恥プレイもいいところだ。デントとコーンはさわやかに手を振りながらも不謹慎な話をした。

「プリケツのプリってプリティのプリかな?」
「いえ、ぷりぷりのプリでしょう」
「セクハラで 訴えるわよ!!」

 ノエルは顔を赤くして怒鳴るが効果はない。ツタージャは『つるのムチ』で2人を攻撃するがあっさ 避けられてしまった。

(あ~んもういや!恥ずかしい!)

 サンヨウジムの階段を下りながらノエルはうつむいていた。せめて知り合いがいないのが救いだった。だがそんな考えは5秒と経たないうちに消えてしまう。

(げっ……!)

 通りすがりの中に見覚えのある人物を見つけてしまった。緑色の長髪に白黒キャップ。ゲーチスという男の演説のあとにバトルをふっかけてきた青年だ。

(ジム戦前に戦った電波じゃん!名前は………… S ( エス ) だっけ?それとも M ( エム ) ?…… L ( エル ) だったけなぁ……)

「…………」

 キャップでよく見えないが青年はおそらく無表情でノエルを見ている。ノエルは気味が悪いと思ったが熱血漢と電波を天秤にかけた。

(うるさい男より静かな男のほうがマシ!)

 ノエルは青年に大げさに話しかけた。

「いや~ん♡ダーリン迎えに来てくれたの~?嬉し~い♪」

f:id:mirai_kyoushi:20190531200127j:plain

「タッ……!?」

 ノエルは階段をそそくさと下りると青年にピッタリと寄り付いた。ツタージャとポッドとデントとコーンは口をあんぐり開けていた。ポッドは口をパクパク開閉したあげく叫んだ。

「な、な、な、……ぬあああああああああああにいいいいいいいいいいいいいい!?」

 彼氏がいるとわかれば諦めてくれる……ノエルはそう思い青年の腕を組んだ。チェレンの名前を言ってもよかったが迷惑をかけたくなかった。逆に言うとよく知らない青年になら迷惑をかけてもいいと判断したことになる。

「…………?」

 青年は状況がわからずノエルをじっと見る。黙っている青年を見てノエルは都合がいいと思った。サンヨウジムに振り返るとポッドに降伏を呼びかけた。

「見ればわかると思うけどあたしたち、こういう関係なの。だから悪いけどあたしのことは諦めてちょうだい♡」
「タッタタタタタージャ?!」

 ツタージャとポッドのショックは同じくらい大きかった。デントとコーンは目をパチクリしていた。

「さ、行きましょ♪」

 ノエルは青年の腕を引っぱった。サンヨウシティに長居する気はさらさらなかった。数歩歩いたところでポッドの低い唸り声が聞こえてきた。

「み、認めねえ……」
「……?」

 青年は振り向くがノエルは無視して歩き続けた。

「うおおおおおおおおおおお!そいつと別れてオレと付き合えええええええええええええええ!!」
「ええーーーーーーーーーっ!?」

 ノエルは立ちすくんでしまった。ポッドが猛スピードで追いかけてきた。予想外の反応を脳が拒絶したためノエルは逃げるのが遅れてしまった。

「きゃ……きゃあああああああああああああ!!」

 全身に力が入る前に体が動いた。なにかに引っぱられるようにノエルの体は前へと進む。彼女が左手を青年に引っぱられたと気づいたのは2人が走り始めたあとだった。

「……行こう」
「えっ……」
「ツタタ!」

 ツタージャはおいてかれないようにノエルのバッグにしがみついた。

「待てえええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

 鬼が2人を追いかける。鬼ごっこの始まりだ。

にほんブログ村 ゲームブログ ポケモンGO・ポケモン(ゲーム)へ
にほんブログ村