ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第9話 託される思い

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 デニムのワンピースに着替えて私とポッチャマは再びマサゴタウンを目指した。せっかくブーツも履いてるからそれに合わせてピンク色のスカーフを首にまいた。髪型はポニーテールに。だってまたコウキくんに会うかもしれないもん。少しはオシャレしなくちゃ♪

 歩いてみて思ったけどマサゴタウンは意外とフタバタウンからそんなに離れてなかった。ただ途中でビーバーとハトのポケモンと戦ったから1時間くらいかかっちゃった。

 そのかわりポッチャマは新しい技を覚えた。水タイプの攻撃技、『泡』…属性のついた技だから場合によってバトルを有利に進められる。水タイプの技だから炎タイプと岩タイプのポケモンに効果テキメン!疲れたポッチャマをボールに戻し、マサゴタウンにたどりついた。

「あっ!待っていましたよ、ヒカリさん」
「コウキくん!」

 マサゴタウンに入るなりコウキくんに出迎えられた。わたしが来るまでずっと待っててくれたんだ……。こんなことならもっと早くくればよかった。

「着替えたのですね!さっきとはまた違った魅力が出ています。」
「ありがとう、コウキくん」

 わ~♪違いに気づいてくれた♡

「くつもブーツに履き替えていますしオシャレです。ピンクがとても似合います。それにそのポニーテール……活動的なあなたも素敵です♡」

―キューーーン♡

 胸がしめつけられた。きついけど痛くはない。キャー!ほめられちゃった!コウキくんは優しいまなざしでわたしを見ている。そんなに見つめないで…………赤い実がはじけちゃう……!

「こっちに来てください。博士が待っています」

 コウキくんは優しくわたしの手を取った。ジュンとは大違いね。

「こちらが研究所です。中で……」

―どんっ!

「きゃっ!」
「うわっ!」

 いたたたた……誰よ!?

「なんだってんだよー!」

 ジュン!またなの?!

「ってヒカリか!おまえのワンピース汚れてないか?真っ白だったのに真っ黒じゃん」

 失礼ね。それに私のワンピースは黒じゃない。藍色よ!胸から腰までデニムのジャケットみたいにボタンがついてて下はプリーツになってるお気に入りのやつなのに。

「着替えたのよ!」
「そっか。それにしてもあのじいさんこわいというか無茶苦茶だぜ」
「なにやらかしたのよ?」

 どうせいきなり「ボールくれー!」っておしかけたんでしょ。

「なんだよその言い方。オレが悪いみたいじゃねーか。まぁいいや……。ヒカリ、オレ行くよ。じゃあな!」
「ちょっと!どこ行くの?」

 ジュンの腕をつかもうとしたけどそのまえに行ってしまった。わたしはいつもジュンにあっさり腕をつかまれるのに。

「なんですか彼は!マナーがなっていませんね。せっかちすぎます」
「あはは……よく言われるの」
「まあいいです。中にお入りください」

 コウキくんはドアを開けてくれた。

「レディーファーストです」

 キャッ♡

「ありがとう、コウキくん」

 

***

 

 研究所の中には機械がたくさんあった。白衣を着た大人たちが部屋の中をバタバタしている。博士は奥の部屋にいるというので、メガネをかけた女性の研究員に案内してもらった。

「おお来たのか」

 わたしたちが部屋に入ったとき、博士は机の上で書類仕事をしていた。博士は机から離れると私たちのまえに立った。堅い表情が柔らかくなる。やっぱり思ってたほどこわくない。

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「服が変わっているな。別人に見えたぞ」
「はい。転んで汚れてしまったので着替えました」
「そうか」

 話をしていくらか緊張がやわらいだ。わたしはつばをごくりと飲んだあと改めてあいさつした。

「こんにちは、ナナカマド博士。先ほどはポケモンをくださりありがとうございます」
「うむ」
「お礼にマフィンを作ったのでよかったら他の研究員たちと一緒にどうぞ」

 わたしはマフィンの入ったバスケットを差し出した。

「おお!ちょうどいい。休憩しよう。ハマナ、お茶を持ってきてくれ」
「はい」

 バスケットはテーブルの上に置かれた。ハマナと呼ばれたメガネの女性の研究員は冷蔵庫へ向かった。

「さすがヒカリさん!お菓子作りができるだなんて…!ボクも食べていいですか?」
「もちろんよ」

 コウキくんはマフィンを手に取った。私はふと冷蔵庫を見た。ハマナさんがお茶を冷蔵庫に戻していた。冷蔵庫の中には大量のあんみつが……って、え?あんみつ?

 声をひそめてコウキくんに訊いた。

「博士って甘党なの?」
「うん」

 強面おじいちゃんなのに意外……!おどろきととまどいの間でゆれていたらハマナさんがお茶を持ってきた。

アールグレイのアイスティーでよろしかったですか?」
「うむ。たまには紅茶と洋菓子もいいものだな」

 和菓子派なんだ……。博士はマフィンを食べながら話を続けた。

「ヒカリだったね。もう一度ポケモンを見せたまえ」
ポッチャマ、出ておいで!」

―ボムッ。

 閃光とともにポッチャマがボールの中から現れた。

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「ポチャ!」

 いきおいよく現れたポッチャマ。だけどどこか警戒している。少しキョロキョロしたあと私の後ろに隠れた。

「ポチャポチャ」

 どうしたのかしら?

「心配しなくとも研究所に閉じ込めたりせんよ。ふむう……なるほど……このポケモン、なんだか嬉しそうにしておる」
「ポチャッ!?」

 ポッチャマは素早く私から離れて博士の足をギューッと踏んだ。

「ギャーッ!!」
「こらっ!ポッチャマ!」

 トレーナーとして叱ったけどポッチャマは私の足元で知らん顔している。困った子ね…。

「博士、ごめんなさい」
「いや……君のせいではない。ウム!そのポッチャマは君に託して良かったようだな!」
「ありがとうございます」

 わたしはおじぎをした。

「どうだ。ニックネームをつけるかね?」

 ニックネーム……ポケモンにつける愛称ね。今までポケモンバトルのことしか勉強してなかったからポケモンにニックネームをつけられることを忘れていた。ニックネームをつければ愛着がわく。それにステキなニックネームをつければポッチャマもよろこんでくれるかもしれない。

「はい」

 わたしは後ろをふりかえってポッチャマを見た。ポッチャマ。ペンギンポケモン。動物図鑑で見たことある。ペンギンには皇帝ペンギンという種類がある。……皇帝か~。ポッチャマには強くて賢いポケモンに育ってほしいな。

「………『ナポレオン』」
「ポチャ?」
「ふむう…ナポレオン皇帝からとったのか…。なるほど……そのニックネームでいいのかね?」
「はい」

 皇帝という言葉を聞いてポッチャマはほおをかいた。まんざらイヤでもないみたい。歴史に名を残したフランスの皇帝ナポレオン。立派な皇帝ペンギンに育ってね、ポッチャマ
「……実はな、君たちがポケモンを持たずに草むらに入ったことに非常に驚いた!向こう見ずな子供たちだと」

 博士は痛いところをついてきた。うっ。しっかり覚えてるわね…。

「だが今は別の意味で驚かされたぞ!」
「え?」
「君とポケモンの間には既に絆が生まれておる!君たちに出会えて良かった。きっとポッチャマも同じように思っているだろう!」

 ポッチャマはギロリと博士をにらんだけど博士は無視した。確かに私はポッチャマに殴られたことはない。少なくとも嫌われてはないよね?

「だからそのポッチャマを大事にしてやってくれ!」
「はい!」

 話がいったん落ち着いたら後ろにいたコウキくんが私の隣りにきた。

「あぁ……ヒカリさん!やはりあなたは僕が見立てたようにポケモンに優しい方です♡初めてあなたを見かけたとき天使だと思いました!生まれたてのアテネのように流れる黒い髪、ヘラに守られた汚れのない美しい瞳、フローラからゆずられた優しい香り、アフロディーテからたくされた白いワンピースに身を包んだ可憐な乙女…。あなたこそ地上に降り立った無邪気な天使!最後の神の使い!今!3千500年のときを超えて!ギリシャ神話が蘇る!……ああ、なんて素晴らしいことなんでしょう。けれど異形の神がヒカリさんをほうっておくはずがありません。それならばさっそくテュポーンの生まれ変わり、ジュンを一刻も早く始末しなければ……!」

 なにこの長ったらしいセリフ!?ギリシャ神話?花の神話なら少しは知ってるけど聞き覚えのない神さまの名前がいっぱい出てきた。う~ん…ほめてくれるのは嬉しいけど恥ずかしいやらなにやら……。コウキくん演劇部に入ったほうがいいかも。

「ウォッホン!」

 あ、博士。

「これだから最近の若い者は…。発情するには早すぎる…!」

 博士はブツブツ文句を言っていた。発情って……わたしたち動物じゃないのに。

「とにかくポッチャマはヒカリになついているな。ナエトルがジュンになついているかはわからないが……ああ、考えるのはやめよう」
「た、たぶん大丈夫ですよ」

 わたしは博士をなぐさめた。少なくともジュンは虐待だけは絶対しないし。

「さて本題だ。君に頼みたいことがある。その前に改めて自己紹介させてもらうぞ。わたしの名前はナナカマド!ポケモンの研究をしている」

 うん。シンオウ地方で博士を知らない人はいないもんね。

「まずシンオウ地方にはどんなポケモンがいるのかその全てを知っておきたい!そのためにはポケモン図鑑に記録していく必要がある」

 ふむふむ……。大変ね。

「そこでお願いだ。このポケモン図鑑を託すから君はシンオウ地方にいる全てのポケモンを見てくれい!」

「はい……ってえぇー!?」

 ストップ!ストーップ!

「ちょっと待ってください!そんな大役務まりません!」

 なにこの急展開!?まるでママが見てるドラマみたい!

「博士とは今日会ったばかりです!ポケモンだってさっきもらったばっかりです。コウキくんのほうがふさわしいのでは?」
「コウキも旅に出る。だが人手が足りない」

 もっともな問いを言ったけど博士にあっさり答えられてしまった。

「ジュンは?」
「話を聞かずに出ていった」
「………」

 そんな……引き受けるしかないの?この歴史に残るかもしれない重大な出来事を…!?

「…………………………………………このまま何時間でも黙っていていいのだがな、わたしは。」

 半ば強制的じゃない!!

「は、はい!わたしでよければよろこんで…」
「うむ。いい返事だ!」

 自分から言わせておいてなにを……。ムスッとしていたら博士から電子辞書みたいな赤い機械を渡された。

「そのポケモン図鑑は君が出会ったポケモンを自動的に記録していくハイテクな道具だ」

 

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 これが最新機種の図鑑……!わたしはポケモン図鑑を開いて電源を入れた。中だけでなくカバーの裏にも画面がある。下の画面に触れたら光が私の顔を照らした。

「キャッ!」
「君の顔写真と指紋を登録しただけだ。おどろくことはない。悪用されないようワタシと図鑑登録者だけがその図鑑を使えるようにしてある」

 すごい……。初期の図鑑にはそんな機能なかった。時代は進んだのね。

「これで自動的にポケモン協会でもポケモントレーナーとして登録されたはずだ。一石二鳥だな。ジュンにも市役所で登録するように伝えてくれ」
「はい」

 ポケモンを持つようになった人―すなわちポケモントレーナーになったものは1週間以内に役所で自分のデータと持っている全てのポケモンを登録しなければいけない。それがポケモンの悪用をふせぐために定められた法律だ。連れて歩けるポケモンの上限は6匹までと決めたのもポケモン協会だ。手持ちが6匹いる状態でポケモンをつかまえたらパソコンの転送システムに自動的に送られるようになっている。

ポケモン図鑑は一定距離の間にいるポケモンを見るだけで名前と姿を記録してくれる。つかまえればもっとくわしいデータがわかる。つかまえたポケモンは転送システムにあずけられるようにしておいたから何匹つかまえてもかまわない。だが今はとりあえずポケモンを見るだけでいい。色んな所に行って全てのポケモンに出会ってくれ!」
「はい!」

 うじうじしていてもしかたがない。こうなったら与えられた使命をとことん果たしてやるわ!さっそく帰ったら旅のね。準備をしなきゃ。

ポケモンと一緒に201番道路を歩いたときどんな気持ちだった?」
「とても新鮮でした」

 見慣れない景色。ポケモンと一緒にいる安心感。野生ポケモンとの熱いバトル…。

「わたしは生まれて60年、未だにポケモンと一緒にいるだけでドキドキする」

 博士がそう感じるってことはそれだけポケモンは不思議な生き物ってことね。

「いいか?世界にはとてもたくさんのポケモンがいる。つまりそれだけたくさんのドキドキが待っている。さあ、行きたまえ!今、ヒカリの……そしてナポレオンの冒険が始まるのだ!」
「はい!」
「ポチャ!」

 私は元気よく答えた。ええ、ついに始まるわ…………ステキな恋の物語が♡

 

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