ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第5話 相棒

  目の前にあるのは2つのボール。選ぶのは、わたし。冷静に振る舞っているつもりだけどわたしも緊張している。その証拠にボールを取ろうとしている手が震えている。わたしは左のボールを掴んで中央にある丸いボタンを押した。

―ボムッ。

 ボールの開閉スイッチを押して出てきたのは陸亀みたいな緑色のポケモン。黄緑色の体に茶色い甲羅を背負っている。頭から2枚の葉っぱがにょきっと生えている。……なんだかボーっとしてる子。

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「ル~」

 目が合ったらあいさつされた。おっとりしててかわいい♡

「うひょー!なんだよこいつ?変な顔!」

 ジュンは黄緑色のポケモンを指さしてケラケラ笑った。……さっきのジュンの顔ほど変じゃないわよ。

「若葉ポケモンナエトルだ。草タイプで攻撃と防御が高い。このポケモンにするのか?」

 笑うジュンを無視して博士は説明した。んー、悪くはないけど……。

「もう1匹見てから決めます」
「そうか」

 生涯を共にするパートナーなんだからしんちょうに選ばなくっちゃ!わたしはナエトルが入っていたボールをトランクに置いた。そしてもう1つのボールを開けてみた。

―ボムッ。

「ポッチャ!」

 現れたのは丸くて青いズキンをかぶったような水色のペンギン。初対面なのになぜか胸を張っている。……えらそうに見えるのは気のせいよね?

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「ペンギンポケモン、ポッチャマだ。水タイプで特殊攻撃が強いぞ。」
「ポォッチャア!」

 ポッチャマはファイティングポーズからパンチを繰り出した。……かわいいけど性格に難あり?

「なんだぁ?……やろうっていうのか?!ホワッチャア!」

 ジュンもポッチャマにつられて構えた。両手を挙げて片足だけで立っている姿はお菓子メーカーのグリ●がインチキ拳法をやっているみたい。わたしはなんとなくコウキくんをちらりと見た。わたしたちを静かに見守って……ん?コウキくんが見ているのはわたしだけ??コウキくんに話しかけようとしたら博士がコホンとせきをついた。

「こいつはいじっぱりで負けず嫌いだ。ナエトルはおとなしくてのんびりやだぞ。」

 わたしは2匹をまじまじと見つめた。よい子とわるい(?)子、どっちを選ぼうかしら?

「おいおい、ちょっと待ってくれよ!ヒコザルはくれねえのかよ?」

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 そういえばそうだ。ナエトルポッチャマに気を取られてすっかり忘れてた。

「あいつすばしっこいじゃん?スピーディーなポケモンは好きだぜ!」

 たしかにヒコザルはすばやい。攻撃力も高いのが自慢だとアキラが昔言っていた。

「うむ……残念ながらヒコザルはコウキにあげたばかりでな……今は手元にはないのだ」
「えー!?」

 ジュンは落胆した。わたしもちょっとショック。憧れのアキラがヒコザルを連れていたからか炎タイプのポケモンに愛着がわく。さむいのはキライだし温かいポケモンは歓迎するわ。

「どうしても欲しいのなら取りよせるが1週間ぐらいかかるぞ。」
「待てねーよ!今ここにいるポケモンから選ぶよ!ヒカリ!さっさと選べよ!」

 ……せかさないでよ。大人だから余裕があるんじゃなかったの?わたしはため息をついた。ヒコザルをもらおうとすればもらうことができる。ただ時間がかかる。取り寄せたとしても手に入るのは1週間後。ヘタしたらそれ以上かかるかもしれない。ふとアキラの姿が頭にちらついた。確かにアキラには昔から憧れている。アキラのような強いポケモントレーナーになりたい。ならここはアキラと同じヒコザルを選ぶべき?

「ヒカリ~まだかよ~」
「またあなたは!レディを待つのが紳士の役目です」
「その‟しんし”の役目っていくつあんだよ!おまえさっきと話し方変わってないか?」

 ジュンとコウキくんがなにか言い合ってるけど2人の会話は耳に入らない。それほど私は真剣に考えていた。

 ……………………2、3分経ったかしら。30分くらい悩んだ疲労感がする。わたしは肩の力を抜いた。…………結論が出た。わたしはわたし。アキラはアキラ。アキラのように強くなりたいけど、アキラの真似をすることが全てじゃない。わたしにはわたしの道がある。わたしは手を強くにぎった。

「……この子にします。」

 わたしはポッチャマをそっと抱き上げた。

「ポチャッ!?」

 ポッチャマはおどろいて私を見た。けれど目が合ったとたんプイッと顔をそらされてしまった。フフッ。今流行りのツンデレかしら?このポッチャマはいじっぱりだけど、きっと根はわるくないわ。負けずぎらいってところは共感できるし。

「本当にポッチャマでいいのか?」
「はい」
「ポチャポチャァ?」

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 ポッチャマは博士をにらみながらわたしの腕の中でジタバタした。「文句あんのかぁ?」とでも言いたげに。

「ヒカリくん……悪いことは言わない。なんならもっと素直な性格のポッチャマを取り寄せ……」

―ベシッ。

「ぶっ」
「ポッチャア!」

 ポッチャマはわたしの腕から抜け出し博士の顔をはたいた。博士の言ったことが気に入らなかったみたい。なんて大胆なの!シンオウ一えらい博士をはたくだなんて…!

「じゃあオレはこいつ……ナエトルにするぜ!!」
「ル~」

 ジュンは博士とポッチャマを無視してナエトルが入っていたボールを手に取った。ナエトルの表情は読み取りにくいけどナエトルも喜んでる……はず。

 

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「なるほど!2人ともいい……いいポケモンを選んだようだな。」

 ポッチャマは博士をにらんでいる。きっと気に食わないことを言ったらまたはたくつもりなんだ。博士はほおをさすりながら続けた。

「いいか!君たちに託したポケモンはまだ外の世界を知らない。そういう意味では君たちと似ているかもな。うむ。似た者……似た者……似た者同士……?」

 博士は複雑な表情をした。確かにナエトルはわたしに、ジュンにはポッチャマのほうがお似合いかもしれない。でも私、もう決めたんだもん!100万回訊かれたってこの子にするわ。

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「とにかく似た者同士、上手くやってくれい!なにか困ったときはマサゴタウンにある私の研究所に来るといい!では失礼するぞ」
「「ありがとうございました!!」」

 わたしとジュンはぺこりとおじぎをした。顔を上げたら博士はもうすでにわたしたちに背を向けて歩いていた。右手だけ私たちにヒラヒラと振っている。

「それじゃあまたどこかで、ヒカリさん」

 コウキくんは私の手を取った。

「あっ」

 気がついたらコウキくんのくちびるがわたしの手の甲にふれていた。

―キュン♡

 顔が熱くなった。こ、こここここれってキス?くちづけ……?突然すぎて拒むひまもなかった。

「ギャーー!?ヒカリが汚れたー!こらーー!!」

 自称わたしの兄のジュンはコウキくんに飛びかかった。だけどコウキくんはジュンをひらりとかわして走り始めた。ヒコザルもコウキくんにつられて走り出した。

「博士ー!待ってくださーい!」

 博士とコウキくんがマサゴタウンに向かうのが見える。わたしはコウキくんが見えなくなるまでぼーっと眺めていた。なんだか頭がクラクラする。でも気持ちいい。

「なんだよーあのコウキって奴!なれなれしいな。ヒカリの手、あとで湖の水で清めようぜ」

 コウキくんかぁ……。短くサッパリした黒髪。穏やかで優しそうな顔。…………悪くないかも♡

「それにしてもナナカマド博士って優しいな。テレビだとすっごくいかめしくてこわそうな雰囲気だったのに」

 ……ん?なにか言った?コウキくんのこと考えてたから聞こえなかったわ。

「そうね」

 話を聞いてなかったけど適当にあいづちをうっておいた。コウキくんのこと考えていたから聞いてなかったと知ったら怒るだろうし。……さて。ポケモンももらったことだし、わたしたちはフタバタウンに戻ることにした。ポッチャマナエトルはわたしたちの横を歩いている。ふいにジュンは立ち止まった。わたしに向けたジュンの表情は輝いている。

「へへ!ヒカリ!お互いポケモン持ってるんだ。やることは1つ!だろ?」
「ポチャ?」
「ル~?」

 どうしたの?ジュン。もったいぶっちゃって。ポッチャマナエトルはなぜわたしたちが立ち止まったかわからずわたしたちを見上げている。

「なに?ポケモン交換はしないわよ」

 私はボールを持つ手をジュンから遠ざけた。

「そうそう。ポケモンといえば交換だよな~……ってちげーよ!とにかく心の準備はオーケーか?」

 ナイスノリツッコミ。だけどジュンがなにを言いたいのかわからない。

「なんの準備よ?」
「ずっと言いたかったこのセリフ……やっと言えるときがきた!」
「え?」

―ドキッ。

 また胸の鼓動が一瞬高まった。

 ジュ、ジュン……それって………それってもしかして…………愛の告白!?

「な、なに……?」

 わたしはみがまえた。なにしろ相手はジュンだ。期待はずれのことを言うかもしれない。…………………………………………ううん。ダメ。ダメよ、わたし。ジュンにはもうなにも期待しちゃダメ。ジュンの性格を考えたら告白じゃなくて勝負を申し込む確立が高い。ジュンはいつもわたしの期待を裏切ってきたんだから。でも……でももしかして!今度こそはいい意味でわたしの期待を裏切ってくれるかも?!

「ヒカリ!ポケモン勝負だぁっ!!」

 ……………はぁ。やっぱり。

「はいはい……おいで、ポッチャマ
「ポチャ?!」

 ポッチャマは呼ばれて一瞬とまどった。けれど結局わたしの元へテクテク来た。われながら自分に腹がたつ。もう二度とジュンに恋愛関係で期待しないんだから……!

「受けてたとうじゃない、ポケモンバトル」

 ボールを持つ手が怒りでふるえた。ボロ負けしても知らないからねっ!ジュン!

 


 

 

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