ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第4話 出会い

 いったいなにが起こったの?まぶたを恐る恐る開くと目の前にサル型のポケモンの後ろ姿が見えた。しっぽがあるべきところには炎がゆらめいている。小猿ポケモンヒコザルだ。アキラが持っているポケモンと同じ……。

「アキラ!?」

 ヒコザルが出てきた方向を見た。そこにいたのはショートヘアーの黒髪の男の子……でもヒコザルの持ち主はアキラではなかった。私と同い年くらいの知らない男の子。

 現状を確認するためヒコザルに目を向けた。ヒコザルは青いポケモンをにらんでいた。青いポケモンヒコザルの火の粉をくらって警戒している。

「グルルル…」
ヒコザル、『ひっかく』!」
「キキッー!」

 ヒコザルは爪を出して青いポケモンをひっかき始めた。相手も同じ技を繰り出してきた。2匹のひっかきあいが続く。でも見たところ体格も攻撃力も青いポケモンのほうが有利。ヒコザルは段々押されていく。このままじゃ負けちゃう…!

―ボォッ。

 そう思ったとき、ヒコザルのおしりの炎が勢いよく燃え上がった。

「今だ!もう一度『火の粉』!」

―ゴォッ。

 ヒコザルは思いっきり息を吸ったかと思うと火の玉を敵に向かって吐き出した。さっきの火の粉よりあきらかに威力が高い。

「ガアアアァッ」

 青いポケモンは苦しそうにもがいた。きっとやけどしたんだわ!青いポケモンは顔をひきつらせた。ヒコザルが『火の粉』を喰らわせたところからけむりがでている。青いポケモンヒコザルをにらんでいたけれど、予想以上の戦いに疲れたのか逃げてしまった。…………ふぅ。よかった。私、まだ生きてる。助かった…。

「ヒカリ!大丈夫か!?」

 ジュンが私に駆け寄ってきた。ジュンも無事みたい。よかった。本当によかった……。

―パンッ。

 私がほっと息をついたそのとき、ジュンのほっぺたがたたかれるのが見えた。

「なんだってんだよー!」

 ジュンをたたいたのは私を助けてくれた男の子だった。男の子は静かにジュンを見ている。

ポケモンを連れずに草むらを走ったの?……なに考えてたの?」

 男の子は怒っていた。当然よね。私たちはやってはいけないことをやってしまったんだもの。おとなしくしていればいいのにジュンは逆ギレしてしまった。

「なんだよ!助けてもらったのをかんしゃしてたのに。ビンタすることねーじゃないか!」
ルクシオの爪には強い電気が流れているんだぞ!ひっかかれていたら死んでいたかもしれない。君は自分がどれほど危ないことをしたのかわからないのか!」
「うっ……」

 男の子の言ったことは正しい。ジュンは言い返す言葉も見つからない。あの青いポケモンルクシオって言うんだ……。

「君1人ならともかくレディーまで巻き込むなんて…君は紳士失格だね」
「ぐっ」

 男の子はクルッと私のほうに振り向いた。

「お怪我はありませんか、お嬢さん」

 お礼を言わなきゃ。怒られるのも覚悟の上で。

「ええ。助けてありがとう」

 私はにっこり笑った。感謝の気持ちを込めて。

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―ポロッ。

 男の子の手から赤白のボールが落ちた。恐らくヒコザルを入れていたモンスターボールだ。あのボールでポケモンを捕まえたり、捕まえたポケモンを自由に出し入れしたりできる。

「ウキッ?」

 ヒコザルはキョトンとしていた。だって男の子は口をポカーンと開けたまま私を見ているんだもの。どうしたのかしら?

―ボカッ。

「いってー!!」

 男の子は私をぼーっと見ていたかと思うと今度はジュンの頭をなぐった。

「今度はなんなんだよ!?」
「君はこんなにかわいい女の子を危険な目に合わせたのか?!この疫病神め!!」
「はあ?」

 男の子はジュンを無視して私の手を取った。

「はじめまして。ヒカリさんというのですか?ステキな名前ですね。ぼくはポケモントレーナーのコウキと申します。ナナカマド博士の研究のお手伝いをしています。以後、お見知りを…」
「は、はぁ…」

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 ポケモントレーナー………ポケモンを扱う者。ポケモンを持つ人は誰であれそう呼ばれている。私にとってアキラが初めて見たポケモントレーナーだった。3年前以来、私は今日までポケモンを見たことがなかった………ってそうじゃなくて!

 う~ん。コウキと名乗った男の子はさっきから私を熱い視線で見つめている。……少しドキドキする。都会の男の子って女の子に積極的なのかしら?

「ちょっと待てっ!ヒカリに気安く触るなー!」

 ジュンは私の手を握るコウキくんの手に向かってチョップをかました。コウキくんは間一髪で手を放した。……ちょっとジュン!私にも当たるじゃない!

「オレのヒカリにさわるなー!」

―ドキッ。

 心臓が一瞬大きく鼓動した。ジュン……それって……どういう意味…?

「君はヒカリさんのなに?」

 コウキくんは不機嫌そうに言った。私には優しい眼差しを向けるのにジュンには厳しい

「オレとヒカリは赤ん坊のときからずーっと一緒なんだぞ!あいつはオレにとっていわば妹のような幼なじみ。いきなりどこの馬の骨ともわからねー奴にヒカリをやれるか!」

 ガクッ。私は肩を落とした。期待して損した。そうよね。私たち幼なじみだもんね。それ以上でもそれ以下でもない。バカよね、私。ジュン相手に一瞬でもときめいたなんて……。

「わかったらヒカリから離れろ!」

 ジュンは今にもグルルとうなりそう。まるでさっきのルクシオみたい。

「見たところ君はずいぶんせっかちですね。それに賢く見えません。どうせいつも彼女に迷惑をかけてるんじゃないですか?」
「うっ……」

 残念だけど大当たり。ジュンは昔から私を助けているつもりだけど迷惑をかけている。私のために本を取ろうとして本棚ごと倒したり、私の絵に余計なものを描き加えたり、伸びてきた髪を切ろうとしたり……数えあげたらキリがない。

「なんだとーっ!」

 ジュンがコウキくんを殴ろうとしたら、遠くからしぶい声が聞こえた。

「待ていっ!!」

 ガンコで怖そうなおじいさんが私たちに向かって走ってきた。手にはトランクを持っている。どこかで見たことのある顔。茶色いスーツに青のベストを着ている。

ルクシオに襲われていたみたいだが大丈夫か?」

 おじいさんは息を切らしていた。さすがに急な運動は老体に響いたみたい。

「はい」

 私はていねいに答えた。

「君たちポケモンを持っておらんようだな?」
「「……」」

 ジュンと私は黙り込んだ。返す言葉もない。

「それなのに草むらに入るとは一体どういうことだ!?」
「………」

 重苦しい空気が私たちをつつんだ。こういうときは、なんて言えばいいんだろう。ジュンはそわそわしながら、声をひそめて私にささやいた。

「……なあ、ヒカリ。この人って……ナナカマド博士だよな?なんでここにいるんだよ……?」
「私に訊かれても……。」

 やっぱり。ジュンも気づいていた。このおじいさんが、ナナカマド博士だということを博士はコウキくんのほうを向いた。

「……彼らはポケモンが欲しくて草むらに入ろうとしたのか…。」
「どうやらそのようです。」
「うむぅ……どうしたものか……。」

 博士は腕を組んでなにか考えこんでいる。説教の内容を考えているのかしら。

ポケモンと出会うことで彼らの世界は変わるだろう。私がそのきっかけを与えてもいいのか?」

 えっ?

「ボクは博士からきっかけをもらいました。彼らにもきっかけを与えては?」

 博士は真剣な表情で考えている。なかなか謝るタイミングがつかめない。

「君たち、本当にポケモンが好きなんだな?」

 私はアキラとヒコザルを思い浮かべた。ヒコザルを連れたアキラがうらやましかった……。

「はい」

 迷わず答えた。アキラのようなポケモントレーナーになりたい…!

「オレも!オレもポケモン大好きだぜ!」

 ジュンもアキラのこと思い出したのかしら。

「もう一度訊く!君たちは本当にポケモンが好きなんだな?」

 同じ問いにジュンはムスッとした。

「なんだってんだよー!100回きかれたって同じだぜ。オレもこいつも100回答えるよ!ポケモンが大好きだって!な、ヒカリ?」
「うん」

 いったい博士はなにを考えてるの?

「……ポケモンも持たずに草むらに入るという危ないことをした人間がポケモンを持ったらなにをしでかすか心配だがな」

―ギクッ。

「……うぅ。それは…その……」

 ジュンは口ごもった。……ごめん、ジュン。フォローできないわ。

「じゃあオレはいいからヒカリにはポケモンをあげてくれよ!」
「ジュン!」

 全ての責任を取るつもり?!

「ヒカリはオレを止めたんだ。でもオレがむりやりヒカリを草むらに引っぱって…」
「!?生意気を……」

 私はジュンに同意したうえで草むらに入った。私だって同罪よ!けれど私がジュンを弁護する前に、博士の口が開いた。

「なるほど。わかった!ポケモンは君たちに託そう!」
「「!?」」

 さっきからなにが起こっているの?!展開速すぎない?

「こちらこそ君たちを試すような真似をして悪かった。」
「よっしゃー!」

 ジュンは嬉しそう。単純ね。

「ただし!もう二度と無茶をしないと約束してもらうぞ!」
「はい!」
「おう!」

 ……ジュンは信用できないな。いつも無茶ばっかりしてるし。

「私たちはポケモンと共に生きておる。人にはそれぞれポケモンと出会うべきときがある。共に歩むべき世界がある。」

 歩むべき道…?

「君たちにとって今日がそのとき!ここがその場所なのだ!」

 そう言うと博士は持っていたトランクを開けた。書類の他にモンスターボールが2個入っている。

「さあ、ボールを開けて好きなポケモンを選べ!」
「ほんとか!?ナナカマド博士!オレ、うれしくってうれしすぎて今すごいへんな顔だぜ……」

 驚きと困惑と興奮が混ざった顔。目はクロワッサンみたいな形になって笑ってる。……うん。変な顔ね。

「みっともないわよ、ジュン」

 一応ジュンに注意した。でもジュンに聞こえたのかどうかはわからない。

「おいヒカリ!先にえらんでいいぜ!なんたってオレは大人だからな。こんなときよゆうを見せるのさ!」

 そんな変な顔をしてどこが大人よ。余裕があるならもう少し落ち着いてよ。博士はウォッホンとせきをした。

「さあ、どのポケモンにするか選びたまえ」

 

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