ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『海のプラチナ』第3話 禁じられた遊び

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 わたしとジュンは草むらを走り出した。今まで遠くで見ていただけの場所を走るのは新鮮だった。通り過ぎていく柵、木々、花、生きもの。周囲の景色は少しずつ変わっていく。走るのに夢中でよく見てなかったけどあちこちにいる生きものがポケモンかしら?ビーバーみたいな生きものと鳥みたいな生きものが見えたけど、普通の動物よりサイズがひとまわり大きい気がする。といっても普通の動物は本やテレビでしか見たことがないけど……。

「もう少しで草むらを出るぞ!がんばれ!ヒカリ!」

 わたしをリードするジュンが振り返って言った。3m先に草の生えていない平地が見える。そのさらに先には再び草むらが広がっていた。ひとまず休憩はできそう。

「うん!」

 わたしが握る手に力を込めたそのときだった。


―ウォォォォォン。


「「!?」」

 前方の草むらから水色のライオンのようなポケモンが出てきた。

「おわっ!」
「きゃあっ!」

 わたしたちは思わず立ち止まった。手は握ったままだ。前にいるポケモンはわたしたちをにらんでいる。

 

―グルルルル……。

 
 そのポケモンのたてがみと下半身は黒く、顔と耳と前足は青かった。ぎらつく眼は怖いけれど、それ以上にそのポケモンの爪と牙のほうが怖かった。

「ジュ、ジュン……。」

 わたしはガタガタふるえながらジュンの手を強く握る。ジュンの手も汗でびっしょりだった。青いポケモンはわたしたちをにらんでいる。急に動いたら飛びかかってきそう。だからといってじっとしていれば安全という保証はなかった。

「ヒ、ヒカリ……。」

 名前を呼ばれた。ジュンがこわがっている。どうしよう。わたしがしっかりしなきゃいけないのになにも思いつかない。青いポケモンのへビにらみで動けない。どうすればいいの…?

「……お前は逃げろ。」
「えっ?」

 今……なんて言った?

「オレがあいつをひきつけるからその間に逃げるんだ。」

 なに言っているの……?

「で、できないよ。そんなこと……」

 見捨てろっていうの?

「いいから言う通りにしろ。町に戻って助けを呼ぶんだ。オレが時間かせぎするから……。」

 ジュンはへへっと笑ってみせた。だけどわたしは知ってる。ジュンは強がってるだけ。

「オレは平気だから。」

 ……うそ。わたしと同じくらい足がふるえてるじゃない。

「まきこんでごめんな」

 わたしに謝りながらジュンは足元にある棒切れを拾った。……ふざけないで。かっこつけないでよ。バカなこと考えないで……いっしょに逃げよう?

「うおおおおおお!」

 合図もせずにジュンはポケモンに向かった。棒切れを振り回したけどポケモンは軽々とジュンの攻撃をよけていく。

「ジュン!」

 人間がポケモンにかなうはずがない。ジュンはあっという間にポケモンに取り押さえられた。おおいかぶさりながら噛みつこうとするポケモンに棒切れで必死に応戦するジュン。

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 「なにやってんだ!早く逃げろ!!」

 わたしははっとした。ジュンは命をかけて戦っている。なのにわたしはバカみたいに立ちつくしていた。ジュンの努力を無駄にするわけにはいかない。

「必ず助けに来るから!!」

 わたしは村に向かって走り出した。涙がほおをつたっていく。わたしってなんて無力なんだろう。

「はぁ……はぁ……!」

 こわがっているせいで呼吸が速い。口の中はカラカラにかわいているのに目から涙がどんどん出てくる。……バカだわたし。いつもジュンのことバカだと思っていたけどバカなのはわたしのほうじゃない。あのときちゃんとジュンを止めていればこんなことにならなかったのに。もっと早く逃げ出せばジュンをあんなに追いつめることなかったのに。

「あっ!」

 わたしはあおむけに倒れた。最悪なタイミングで石につまづいてしまった。

「ヒカリ!」

 後ろを振り返るとポケモンが私に迫ってきた。きっと私のほうが弱そうだと判断したんだ……!立ち上がろうとしたけど足に力が入らない。モタモタしている間にもポケモンが迫ってくる。

「やめろ!ヒカリーー!!」

 わたしは眼をつぶった。こんな現実、もう見たくない。

 

 

 

 いやっ。

 

 

 

 こわい。

 

 

 死にたくない。

 

 

 まだ死にたくない……!

 

 

 


 マタ死ニタクナイ。

 

 

 


 生キタイ。

 

 

 


 モット生キタイ。

 

 

 


 マダ伝エテナイ。

 

 

 


 夢モ叶エテナイ。

 

 

 

 


 モウ……死ニタクナイ!

 

 

 

 

 

 

 息ができない。そのとき一瞬、私は水の中にいるような錯覚がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒコザル、『火の粉』!」

 

 …………誰かの声がした。そのあとすぐ前方に熱気を感じた。

 

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