ミライ先生の日直日誌

~Ms.Mirai's Day Duty Journal~

ポケモン小説『白黒遊戯』 純天使ベル

「よ~くお聞き。ベル。世界は……いや、宇宙はおまえを中心に回っているんだ!だから無茶をしちゃ駄目だぞ」

 中学生になったとき、ベルは理科の授業でお父さんが間違っていることに気がついた。

 

『純天使ベル』

 

 とある土曜日の午後。3人のティーネイジャーがアラブ宮殿みたいな屋敷に集まった。現在3人がいるのは寝室にしては広すぎる部屋。部屋はかわいいぬいぐるみで埋めつくされている。ところどころにお花グッズが置かれてあり、壁にはファンシーなポスターや手書きイラストなどが飾られてある。

 仲良しトリオはクッションの上に座っていた。金髪のショートボブの女の子と茶髪のポニーテールの女の子は隣合わせで座っている。低いテーブルをはさんで向かい側に座っているのは黒髪で眼鏡をかけた男の子だ。 

 金髪の女の子は分厚い教科書をジャーンと言いながら出した。アメリカの教科書は日本の教科書と違って厚くて重い。しかも百科事典と同じくらいの大きさだ。

「今日はお勉強会だよ!まずはチェレンの得意な数学からやろうね」

 彼女は元気にニコニコ笑っていた。輝くような笑顔は天使そのもの。幼い顔つきとパッチリおめめは生まれたての天使を彷彿させた。ところがチェレンと呼ばれた男の子は彼女の笑顔に見とれることなく目を閉じた。 

「……ベル。僕が1番得意としているのはインフォーメーション・テクノロジー情報科学)だ。2番目は理科。数学は3番目だ」 

 そう言いつつもチェレンは数学の教科書とノートを取り出した。金髪の天使はベルという名前らしい。 

「と言っても僕はもうほとんどの宿題を終わらせたからね。答え合わせだけするよ」
 チェレンはベルのペースに合わせて数学からやることにした。
「ええ~。ヤダ~」
 茶髪の女の子が口をとがらせた。ゴージャスなポニーテール姿が示すように勉強は苦手らしい。

「数学嫌~い。宿題全然やってな~い。チェレ~ン、写させて~♡」
「断る!」

 女の子の両手を組んだお願いポーズの効き目はなかった。彼女のお願いは一瞬で却下された。

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「ベルはちゃんとやったよー♪」

 ベルは自信満々でノートと教科書を開いた。茶髪の女の子はどれどれとノートを覗きこんだ。

「ホント?写させて♡」
「うん!いいよー!」
「良くない!」 

 チェレンはベルからノートを奪い取った。しばらく目を右へ左へと動かしたあと彼は勢いよくまくしたてた。 

「それ違うページ!しかも答え半分くらい間違ってる!」
「えー?」

 ベルは小首をかしげた。自分が犯した過ちを理解できずにキョトンとしている。

「『えー?』じゃない!257ページからだ。わからないところがあったら訊いてくれ。ほら、ノエルもやる!」
「はーい!」
「は~い」

 ベルは元気に、ノエルは面倒くさそうに答えた。2人はノートをめくりまだ使っていないページを開く。 

「それじゃあ僕は国語の宿題をやろう。確かソネット(十四行詩)を書くんだっけ?メンドーだな……」

 日本の国語が日本語ならアメリカの国語は英語だ。彼の独り言にベルは顔を上げた。

チェレンはそーゆーの苦手そうだもんね」
「全く……。シェイクスピアはよくこんなメンドーなものをホイホイ書けたな」 

 そこへ先ほどから1問も解いていないノエルが思いがけない言葉を発した。 

「あ。あたし3時からジョニーとデートだから途中で抜けるね」
「「え?」」 

 ベルはのんびりと、チェレンはきつい口調で言った。チェレンは気に障ったようだった。 

「まったく……。またデートか」
「まあね」

 そう言うとノエルは黒ベースでピンクの模様がある手帳をバッグから取り出した。

「今日はジョニーで~……明日の放課後はアダムで~、月曜日はニックで~、火曜日はクリスで~、水曜日は4限と5限サボってケビンとデートで~……」
「勉強しろ!あと授業サボるな!」 

 チェレンは鋭いツッコミを入れた。先週の日曜日にマイケルとのデートをチェレンに中断されたばかりなのにノエルは懲りていないらしい。 

「だいたい君は肌を見せすぎだ!今日だってノースリーブじゃないか。先週の日曜日はミニワンピにガーターベルトを履くなんて何を考えているんだ?まるで娼婦じゃないか!?男がその気になったらどうする!ベルのようにもうちょっと露出を押さえて……」
「残念だなぁ……。今日は宿題が半分終わったら3人でピクニックに行こうかと思っていたのに」

 ベルの一言が空気を変えた。ノエルとチェレンは思わずハッとしてベルを見た。

「先約があるなら仕方ないよね。また今度にしよっか」

 ベルはいつものように笑った。だがその表情はどこか曇っており、寂しそうだった。

「ベル……」

 特に意味もなくノエルはベルの名前を呼んだ。しばしの沈黙が流れた。ノエルは少し悩んだあと口を開いた。 

「…………や~めた」
「えっ?」

 ベルの目が見開いた。チェレンもベルと同じ顔をしていた。

「ジョニーとのデートは取り消し。ベルとチェレンとピクニックに行ったほうが楽しそうだもん」
「ノエル……!」

 チェレンは驚きと喜びが混じった声を出した。ベルは座ったままノエルに抱きついた。

「わーい!ありがとう!ノエルだーい好き!」
「きゃっ」

 2人は勢いで床に倒れ込んだ。カーペットが敷かれているおかげであまり痛くない。

「あたしもベルのこと大好き♡」
「両想いだね!」

 床でじゃれあう女の子たちを見てチェレンはやれやれと笑った。ノエルもチェレンもベルの無邪気さには敵わないようだ。そしたらベルはなにかを思い出したように急に起き上がった。 

「あっ!チェレンのことも大好きだからね!」
「い、言われなくてもわかってるよ!!」

 そのあとチェレンはベルとノエルに飛びつかれ、2人に押しつぶされたのは言うまでもない。

 


 

 

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